つよつよ冒険者パーティから解雇された雑用戦士と、それに拾われたおきつね亜人の魔法使いが世界を克服していくお話~俺はおきつねちゃんとパーティー組むんだ、もうおまえら要らん~
きつねのなにか
羽ばたく前はじっと堪えろ、どれだけ辛くても。
第1話 初手追放からのヒロイン救出
「お前、もう要らねーわ」
つよつよ冒険者パーティから解雇された。
パレンティア王国と魔族の領土を隔てる大森林を越えようというつよつよ冒険者パーティに、うだつの上がらないよわよわ戦士は要らない、ということだった。
「今からの場所に貴方が着いてきてもアイテムの横取りだし?」
君が一番アイテムの横取りをしてきたんじゃ無い? というパティさーの姫がそういう。
「何も出来ない奴をパーティに入れるなら切って拙者が姫を守るでござる」
まじで姫しか守らねえ護衛アサシンがそうのたまう。
まぁ、理屈は分かるよ……。結構頑張ってきたんだけどな。
僕は自分が稼いだ大体のお金をパーティ資金に回していたためにたいした個人資産も無く、装備もほぼ取り上げられた。
こんな状況では敵との戦闘なんて出来やしない。サガバール王国の王都ザンシュルクに帰りたくても馬車なんてここら辺には通ってない。
おぼろげながらある道をあえて避け、森林に深く入り込んで進んでいく。
戦士だからといって戦闘しか出来ないわけでは無い。
僕は器用貧乏なところがあって、斥候の役割も果たしていたんだ。
だから森の中敵を避けて進むのにはさほど苦労しないよ。
「戻るために自分のスキルを使うなんてなぁ。はぁ……。ん、前方から人型の泣き声がする」
喚いている声ではないし、距離はそんなに遠くないか。
亡霊の可能性もあるが泣き声に霊的な感じはしないな。
とりあえず偵察してみよう。
泣き声のする方へ進む。かなり慎重に移動しているからバレないだろう、うん。
「痛い……痛い……。ち、近づいているのはどなたでしょうか」
僕の存在がバレているのは間違いなさそうだな。かなり勘が良いとみた。
隠れてないで近寄るか。
「よくわかんねーが人の言葉をしゃべる者と出会うのは久しぶりだ。……亜人さんか」
トラバサミにかかっている声の主は、雪のような白い肌、
なるほど亜人なら僕の存在がバレたのも理由が付く。
「ええ、亜人です、きつねの。私は亜人でも能力が無いんです。ですから主様から捨てられて今ここにいるんです」
亜人、それは神々が地上にいた頃に、人間と魔族の混血によって生まれた人種、とされている。
人間より能力値が高い亜人種が多いが、総じて人口は少ない。
人間の社会では地位が低く、見世物や奴隷扱いをされている者が多い。
僕はそう言う見方はしないんだが。
「主様か。トラバサミを作動させるには自ら体重をかけて罠を作動させないといけない。麻の貫頭衣だけを着せてこれをするなんて、悪趣味な主様だったね」
「そうかもしれません。そうじゃないかもしれません。私は主様の元での生活しか経験したことがないのですから」
「なるほどなあ。そういえば、名は? 僕はフィクルという名前だよ」
「ありません。性奴隷一八号とだけ呼ばれていました」
「そ、そうか。とりあえずそのトラバサミを外そう。筋肉の
がちゃがちゃっとやってトラバサミを外す。
そこまで強いトラバサミでは無いな、痛みで気絶しない程度に強さを抑えて苦しむ姿でも見ていたのだろうか。悪趣味だな。
ぱぱぱっと薬草を探してきて患部に塗り込む。かなりの痛みだったみたいだが我慢してくれ。
数刻もすると歩けるほどに傷は回復した。
「ありがとうございます、傷も良くなりました。でも私は何を恩返しすれば良いのでしょうか。この身を捧げようにも、経験はありませんし、性技も教えてもらっておりませんし……」
「ああいや、そういうのは良いって。そうだな、とりあえず付いてきてよ、一人は寂しいと思っていたところだったんだ。名前も歩きながら考えよう」
このままここに居たら死んじゃうもんな。
お人好しすぎるかなあ、僕。
僕一人じゃなくなり、戦闘経験もない子と一緒になったのでだいぶ歩みは遅くなったけど、なんとかかんとか大森林は抜け出すことに成功した。
あとは一度王都ザンシュルクに帰って装備を整えるだけだ。
「悪趣味さんはウェルドア辺境伯か。あそこは税が重いって酒場で聞いたことがあるよ」
街道を歩きながら一八号さんと話す。
「そうなんですね。外の世界は知らないものでして」
「そ、そうだよね。えーっと、年齢は? 僕は一七だよ」
「一八だと思います。性奴隷は年齢で管理されていました」
「あ、そうなんだ。近いんだね。そっか、近いんだ」
一八なのに明らかに背が低い。若干背が高めな僕なんだが、その僕の胸の下に頭が届いてない。耳は届いてるけど……。
栄養が足りてなかったんだ。
栄養も与えずに一八年放置して、そして要らないからって大森林の中にポイかよ。
さすがに虫唾が走る。
そうだ。
「えっとさ、冒険者登録すれば初期支援金が貰えて、それで色々そろえたら一人で頑張って貰おうって思っていたんだけど、僕と一緒にパーティを組まない? 僕色々と出来るから何かしらの適性は見つかると思うよ!」
「ではそうします、ありがとうございます」
まだまだ自立心がないしヒトとしての感情が薄いけど、それでも見せてくれた微笑みは僕の心を貫くのに十分な威力だった。
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