第6話 護衛依頼

 無事に初等教育を履修できたので、次の街へ行ってみることにしたよ。

 ここじゃ手に入る情報も無くなっていたしね。


 頑張ってお金を貯めて、僕の装備を革の鎧の上にチェインメイルを重ねて、武器は剣。機動力を下げないために盾はバックラー。金属製だけども。


 ミクラはシャレオツな革の鎧のまま、布の服を一枚着てその上に薄いチェインメイルを羽織った。この近辺はあまり街道の治安が良くないみたいなんだよね。


 パーティギルドランクがD+になった僕たち。D+以上の貨物馬車を護衛する依頼があったので、喜んで受注することにした。

 首都方面に向かう馬車だそうだ


 僕たちの他にも護衛する人がいて、総勢六人+馬車組四人での旅。結構大きな馬車で遅いから、次の街まで一週間、つまり十日かかるんだって。


「他の人たちはパーティギルドランクがDだし、そう簡単には壊滅しないと思う。ここで野営のやり方を覚えようか」

「はい! がんばります!」

「はーミクラは良い子だなーなでなでなでなで」

「はずかしいでしゅごしゅじんひゃま」


 可能なら安全な宿場町に泊まって道を経由していきたいけど、そうもいかないことが多々ある。

 そう言う場合は馬車を止めて野営をする必要がある。


 基本はグループごとに見張りを立てて敵襲に備える。寝ている人も半睡眠な感じですぐに飛び出せるように準備して追う。


 テントを使うグループは初心者だね。テントから飛び出す前に奇襲を受ける。寝袋なんてしていたら身動きも取れずに刺されるだろうね。


「なので購入したマントと耐水性のある毛布で寝るんだよ。これならまだすぐに行動できる」

「さ、寒いですねこれは」

「冒険を遠征するときも、ベースキャンプや山岳キャンプ以外はこうだぞ」

「ひえぇ」

「……そういえばこういうとき口調がどうしても硬くなるんだけど大丈夫?」

「ピリッとして身にしみるので大丈夫です! 隊長!」

「そっか、ならよかった」


 一日目二日目はなんともなかったんだけど、三日目に人型を感知。飛び起きてミクラに効くと、ミクラも感づいていた。

「これは数日後に来るぞ……」


 他のメンツに奇襲が来る可能性が高いと伝えて移動を続行。


 来るかな来るかなと思ってると、五日目の野営中に奇襲が来た。


「野営の火を消して! 狙われるよ!」


 バシャッと生活魔法の水がかけられ辺りは真っ暗になる。


「ギルドランクB+の力を舐めるなよ賊ども!」


 こっちは感知能力があるおかげである程度敵の位置が分かる。真っ暗になった中でも敵に対して剣を振れる。まああんまり当たらないが、びびらせて引かせることが出来る。


 しまったな。敵の人数が把握できない。多分6名だと思うが一名上手く認識できない。


「おいそこの凄いの!この娘の命が惜しくないのか! 仲間だろう!?」


 ライト魔法で照らされたそこには、首に刃物を突きつけられているミクラの姿があった。魔法使いがいたか……。


「……わかった。どうすればいい」


「リンチされて死ね!」


 僕がライト魔法で照らし出される。

 雑魚どもが集まり殴る蹴るの暴行を加え始める。

 どうにかしてミクラのピンチをしのがないと、さすがに死ぬわ。


「ミクラー!出来るかー!」


「へへへ、何をだよ糞ガキ」


 暴行は激しさを増す。同乗している冒険者達も人質を取られている以上何も出来ない。これがパーティランクCやB+とかなら別なんだろうが。


「か、からを、からを破れ! み……く……ら」


 意識が遠くなっていく。ポーション飲まないとまずいなこれは。


「うぁああああぁああぁあぁ! アースショット!!」


 意識が飛ぶ前に、全身から石の針をだして賊を串出しにする姿が見えた。

 これで一つ壁を乗り越えたね、ミクラ……。



「ん……ん……いってぇ……」

「起きましたかフィクル様! 良かった!」

「骨はなんとかなったみたいだけど、内臓をやられていたみたいなんだよね、そこら辺はどうしたの?」


「護衛対象の方から高級ポーションをいただいたんですよ!飲む気力も無かったみたいなので口うつしで飲ませました!」


「お、おう、そうか」


 人生初のしっかりとしたキスはポーションの味がしました。

 ……ミクラで良かったな。


 その後は賊も強いリーダーが消えたことによってか馬車を襲うこともなくなり、野営は俺が指示しながら俺の見張りの分をミクラが代行する形で進むことが出来た。


 おきつね亜人は睡眠や飢餓に強く、何日か寝なかったり何日か食べなくても水分取らなくても生きていけるみたい、とのこと。

 他のおきつね亜人と接触したことがないから、らしい、としかいえないみたいだけど。


「しかし、もう大丈夫なのかい、人殺しの罪悪感は」

「大丈夫じゃないですけど、フィクル様と旅をするからには遭遇することです。慣れないけど、やります」

「そうか……」

 そういってミクラを抱き寄せる。ミクラのしっぽはぶんぶん振られていた。



 次の都市「ブンブン」は伯爵領で王都の前の都市だ。ここの反応で亜人への忌諱感が分かるだろうね。どうなるかなあ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る