第7話 暑いところで熱くさせる

 伯爵領「ブンブン」は結構魔道機関が発達している土地だったよ。

 ブンブンの一般人や商売人は、あまり亜人への嫌悪感がない感じかな? 

 血を重んじる貴族はどうだろうなあ。出会う機会無いと思うけど。 

 伯爵の名前はブンブン・ブンブン。安直……。でも貴族ってそう言う物かな。


 護衛の料金が三千ユロルと高額だったのでほくほく。死にかけたけどね。


「旧文明がくたばれヤードポンド法と一緒にくたばれ為替通貨法を作ったことによって、全世界の通貨がユロルで統一されたんですよね!」

「そうだね、でも土地によって一ユロルの価値は変わるから、そこは注意しないとね。最初の農村なら四十ユロルもあれば一ヶ月暮らせたと思うけど、ここなら一泊四十ユロルはしそうだねえ」

「むずかしいもんなんですねえ」「難しいものなんだよねえ」


 ただしこういうときに役に立つのが冒険者ギルド。あまり質の良くないベッドだけど、格安で冒険者向けの寝床を提供してくれる。

 ついでに食事とお酒を提供してくれる場所もある。個人ランクE以下はその日暮らしの貧乏冒険者が多いから、冒険者ギルドの提供するインフラは大変重要だったりする。

 僕らもこのインフラを利用して、一日十ユロルで生活できることになった。それでもやはり高い感じがするけど、場所が場所だからね……。


 依頼掲示板にインプラントをかざし、依頼一覧の情報を集める。ブルーローズの採取、レッドベリーの採取、ジャイアントドロロ魚を集めて欲しい……など。


 インプラントが使えないミクラに一つ一つ説明をする。インプラントで調べるのが前提だから、こういうところ不便だよね。


「へえー、ここら辺は採取系が多いんですねえ」


「伯爵以下の貴族もいるからね、そう言う人がお花や珍しいものを貴婦人にプレゼントして気を引きたいってところらしい」

「へぇー。ブルーローズってよく見かけるあれですか?」

「あれですね」

「護衛お願いします。バンバン採取してきます」


 ミクラは殻を破ったことによって、おきつね探索術となるスキルを手にしたらしい。

 これのおかげでブルーローズを森の中から探索することが容易みたい。

 僕が護衛しつつどっさりブルーローズを採取。常時買い取りという、いつでもいくらでも買い取ってくれる商品なので目立ちすぎないようにお金を荒稼ぎ。1万ユロルまでお金が貯まった!


 今1万ユロルは僕が持っているインプラント内部に電子マネーとして入っている。大きな街はキャッシュレスなんだよね。王都だとクレジットカード機能も使えたはずだなー。


「何に使おうかねえ」

「スキルと魔法を買いましょう。フィリス様も魔力が無いわけでは無いんです。初歩魔法の魔導防御を買いましょうよ。安いですし。後攻撃系スキルも!」

「じゃあミクラも今後に備えて魔法を買うぞ!上級のマジックコートなんかが適正じゃないかな」


 そういうわけで魔法屋さん。この世界は魔法やスキルというのはオーブを購入して覚えるのだ。


「ミクラは生活魔法と初歩魔法をランクアップさせて、ケアを購入したんだね。やっぱりあれは辛かったんだね」

「自分の無力さを痛感しました。ケアはインプラント魔法ですが、抱き付けば生命エネルギーを渡すことが出来るそうです!」

「……戦闘のさなか抱き付くの?」

「あ、えと、それは……」

 顔を真っ赤にするミクラも可愛いもんだ。


 僕は魔法屋では魔導防御を買った。

 魔で導く防御。装甲の上に魔力で張った鎧のようなものが形成され、衝撃や斬撃、魔法を緩和する極めて初歩の魔法だ。

 なんで今買ったのかって、つよつよ冒険者パーティのときはお金なくて変えなかったんだよ。取り分のほとんどをパーティ資金に回していたからね。

 魔導防御は極めて初歩だがあると無いとでは大違い。

 「使って損はしない防御効果」を発揮してくれるのだ。

 とりあえずかけておけば損はしない、それが魔導防御。

 

 ミクラはマジックコートは買わずに魔導防御を買い、残りのお金で俺のスキルを購入して欲しいとせがんできた。

 まあなあ……。戦士らしいスキル持ってないもんなあ……。


「よーしじゃあ買うぞー! まずはピアッシングポイント! 弱点を把握していれば超高速で突く! 次に強打! 単純にスキルの力を乗せてぶっ叩く! 同じく強斬り!内容は強打と同じ! 以上!」


「えっえっ、まだもうちょっとお金ありますよ!」


「それは今度のために残しておこ――」

「――だめです、私がまだ完璧じゃないんですよ。そうだ、この『狙う』という攻撃オプションはどうですか? 純粋にスキル効果で狙って命中させてくれるそうですよ!」


「いや、うーん」


「店員さん、購入します!」


「いやあ熱いカップルだねえ」


「「パーティーメンバーです!!」


 ――新スキルしたりスキルアップした奴だけ抜粋――


 ――ここだけアラビア数字を使います――

 フィクル

 ピアッシングポイント:Lv1

 強打:Lv1

 強斬り:Lv1

 狙う:Lv2(良い奴つけろって怒られたので2スキル分購入)


 ミクラ

 生活魔法:Lv4

 ファイヤアロー:Lv2 +1

 コールドアロー:Lv2 +1

 ウインドエッジ:Lv2 +1

 アースショット:Lv2 +1


 きつねの探索術:Lv1 新規取得


 ――――



「さて、スキルも上がったことだしまたブルーローズで稼ごう!」

「そうですね!」


 と思ったんだけど、我々が馬鹿売りしすぎて相場崩壊。全然儲からない。


「あれはなんでも惚れ薬の材料らしいよ。媚薬になるんだって」

(ちょっと欲しいかも)

「ん、なんか言った?次はモンスターが出るがレッドベリーの採取だねえ」


 このレッドベリー、「中和剤(赤)」というダンジョンに生息している果実で、高熱のレッドスライムが出現する結構危険なダンジョン。


「暑いわ僕の攻撃は役に立たないわで、情けないなあ」

「いつもフィルク様に頑張ってもらったんです。私だって頑張りますよ!」

「そっか、それにしても最近骨と皮だけだった奴隷時代と変わってふっくらして美しくなったね。あの当時からなにか光るものがあったけど」


「ちょちょちょちょちょ!暑いところで私を熱くさせてどうするんですかぁ! ばかぁ!」


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