第18話 ブキョーへ行く途中

 ブキョーへは魔導飛行船で行く。

 魔導飛行船が発達した今だと、下道が整備されていないそうだ。

 魔導飛行船に乗るとして、騒音はどれくらいなのだろうか。


「ダイジョウブ、ワタシ、ソウオン、タエラレマス」


「我慢しないで。今回は家畜輸送船に乗るから、そこまで音はしないよ。家畜と行っても犬や鳥類なんかも積み込むそうだから」

 そうガイドブックに書いてあったからそうに違いない。


「そういえばラリラどうしようかな。もう熱砂地域を抜けたから役目は十分果たしてくれたんだよな」


 じーっとラリラを見つめる。ラリラはブヒッと鼻を鳴らすと僕たちを先導するように歩き始めた。


「ここにも、えーと、なんとか研究所があるのかな?」


 しばらく歩くと、牧場が見えてきた。あるみたいだね、なんとか研究所。


 ラリラは牧場の中に入ると勝手に厩舎に入って行ってしまった。いいんだろうか?


「いいんですよ」


 僕にささやくような声がしたので左を見るとTシャツにジーンズの男が顔と顔が合わさるような距離で立っていた。


 今回も気配がまるでしなかった!!


「どどど、どうも。ラリラを返却しに来ました」


「ありがとうございます。兄弟から込み込みで料金をいただいたと言うことで、五千ユロルほどお返しします」


 チャリーン


「どうもありがとうございます。これからブキョーへ向かうのですが、良いモン物はいますでしょうか」


「そうですね、ここじゃなくてブキョーの兄弟をあたって下さい。ここはムベヘラーンで生活するにおいて便利なモン物達がおりますので」


 ちらっと牧場の方を見ると、八本足の馬やいかにも早くて体力がありそうなブタ、二頭の体がくっついている馬らしき動物など、なかなか個性的なモン物達がいた。


「わかりました。あちらでもお世話になるかと思います。その際はご兄弟によろしく伝えておいて下さい」


 そういうとモン物牧場を後にしたのであった。


 家畜輸送船に二人と一匹分のお金を支払い乗り込む。

 エンジンが唸りを上げ、魔導上昇機が飛空艇を浮かび上がらせる。


「本当に音があまりしないね」

「そうですね。キュウがちょっと気になりますが」

「家畜じゃなくてペットや音に弱い動物用の部屋に入れてもらったから大丈夫だと思うよ」


 今回の日程も二日飛んで一日補給のために降りるという感じ。違うのは合計で十二日間かかるということだ。

 この船は貨物船と比べて速いのに十二日もかかるだなんて、ブキョーは遠いんだな。歩くのは最初から無理だったみたいだ。


「フィルク様、ブキョーで本当に治るのでしょうか」

「治らなかったらサガットの首都当たりで暮らそうか。僕は先に死んじゃうけど、あそこなら技術が凄いからミクラ一人でも暮らせそうだ」

「え、一緒に住むんですか。それってつまり……」

「あ、いや、そんな、えと……」


 顔を真っ赤にする僕たちがそこにはいた。


 僕とミクラの関係っていったいどういうものなんだろう。

 僕はミクラが好きだ。命を守るために体を投げ出す行為も平気で行うだろう。

 でもそれはパーティーメンバーとしてのことだし、恋愛としてみているわけではない。


 じゃあ恋愛で見てみると、嫌いではない、絶対にない。

 好きかというと、分からないというのが正直なところだ。

 恋心を餌にパティさーの姫にかなりこき使われて、結局は捨てられたのが心の傷となって臆病になっているのかもしれない。

 一番心から恋愛対象として遠ざけているのは、やはりインプラントのことかもしれない。肩代わりするのには限界がある。

 亜人と言うことも気になっているかもしれない。亜人がどうこうではなくて、寿命の関係だ。彼女を残して先に死ぬという事実は、やっぱり重い。死んでも元気に生きてくれれば良いんだが、インプラントが上手くいかなかったら……

 ああもう、心が混乱する。やはり今は目の前のことに集中してこのことは考えないようにしよう。


 もうすぐブキョーだ。ここでインプラントが治りますように……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る