羽ばたき始めて、他の国へ。いざ行かん、錬金の国!

第13話 あつい、あつい、あつい!

 サガバール王国は結構北の国だったらしく涼しい気候だったんだけど、サガットは南の国の方でかなり暑い国。

 太陽からの日差しも熱く、チェインメイルなんてつけていたら大やけどしてしまいそう。

 情報収集しつつここでの装備を調えねば。


 まずは冒険者ギルドで情報収集。ここは熱いだけではなく熱砂も吹き込んでくる土地だそうで、口元を覆る装備を身につけないとまともに行動できないみたい。


 情報をもらったついでに酒場でいっぱいやる。冒険者ギルドで騒いでる人は熟練の冒険者が多い。そう言う人に交じってお話を聞く。


「服装かあ。通気性の良い木綿の上下が必須だと思うぜえ。あと、ここら辺じゃ革の鎧ですら熱くて着られないぜえ。錬金術で耐熱エンチャントが掛かっている防具か、錬金糸で編まれた通気性の良い服を着るしかないと思うぜえ」


 なんか恰幅の良いおじさんに絡まれたので探ってみたら、よくしゃべってくれるおじさんだった! 幸運だ!


「なるほどぉ、もういっぱいどうぞぉ。しかしエールとは違ってこのビールっておいしいですねぇ」


「こりゃ気前の良い! まあビールはこの国の特産品だ、このあともたらふく飲むと思うぜえ。ここじゃ錬金は子供出来るくらいありふれたものだ、錬金糸の装備くらいならどこでも売ってると思うぜえ」


「なるほどぉ、れんきんにかんぱぁい!」


「フィルク様、このオレンジジュースも美味しいですよ」



 一晩明けて。


「飲み過ぎた……頭が痛い」


「オレンジジュース飲まないからです!」


「いやあ話が盛り上がっちゃってさ。さて、まずは一般服の木綿の洋服を買いに行こうか。一般人でも木綿を使えるだなんて、国が違うとなんでも違うんだね」


「平民は麻が主流でしたね、サガバール王国は」


 というわけで、サガット国の一般市場「バザー」へ向かった。


 バザーは通りの両脇に狭いスペースが細かく区切られていて、狭いスペースに一人の商人がいる。そして限られた空間のスペースに商品が詰め込まれている! 道幅もそこまで広くなく人々も狭い道に入り乱れていて、酔ってしまいそうだった。


「手を握ろう。はぐれちゃいそうだ」


「あ、はい!」


 なんか元気になったミクラと一緒に服飾店を探す。

 探すついでに座る屋台で取り巻きトカゲ肉の煮込みを食べた。この国はスパイスがきいていて辛い! けど上手い!

 二人ともおかわりしてしまった。


「ここかな、屋台さんがおっしゃっていた服飾店は」


 メイン通路からちょっと奥まったところに今まで見たことない、形容しがたい狭いけどおしゃれな服飾店を見つける。


「こんにちは、僕とこの子の一般服を探しているのですが」


「あらこんにちは。どんなお方のお召し物も仕立てておりますよ。お二人は冒険者さんかしら」


 対応してくれたのは、南の人の美しい顔ってこう言うのだろうなと言う、大変麗しい女性だった。


「あ、はい……」


 ちょっと見とれていたら、


「がぶー!」


 思い切りミクラに噛まれた。


「あらあら仲のよろしいカップルですわね。冒険者ランクはどれくらいなのかしら」


「いってぇ……。ええと、はい、僕がBBでこの子がCCのランクです」


「大変素晴らしいですわ。少し良いものを作成したいのですけどよろしいでしょうか。お二人ならすぐに取り戻せると思うのですけれども」


 迷う、僕はさほど服飾に強くない。


「ミクラ、どう思う?」


「お姉さんから嫌な感じがしません。信頼できます」


 きつねの感がそう言っているならそうなんだろう。僕たちは作ってもらうことをお願いした。事前に前金が必要で、1万ユロルもしたけど。二人で、だからね。


 冒険者ギルドで討伐ものを受注。それ自体はなんとかなったけど、手に入れたお金ですぐさまこの地にあう野営セットを入手することにした。昼間は暑いけど夜は凄く冷え込むのだ。毛布では寒くて無理だ。野営で作るスープにも砂が入り込んでしまった。


「んんー? 冒険者御用達の道具屋ぁ? そりゃあベベクマさんのなんでもショップしかないぜえ。ちょっとしたエンチャントがかかっているがお買い得な値段で販売してるんだぜえ」


 いつものおっちゃんありがとう。早速ベベクマさんのお店を探す。

 ベベクマさんのお店はメイン通りにあるので探しにくいと思っていたらすぐに見つかった。

 筋肉もりもりの熊亜人さんが店頭で仁王立ちしていて、店は黄金で縁取られていたのだ。

 だ、大丈夫なのかな……。


「あのー、ベベクマさんですか?」


「そうとも! その顔を見るとこの地方の地形にやられた冒険者だな! ウチの商品なら問題解決だ! がはは!」

 不安になりながらもベベクマさんに状況を話すと、


「保温エンチャントのついた毛布に砂よけの鍋だろ、魔導で動くストーブと魔法の防砂顔面シールドも必要だな。あとは見た目と重さが一リットルの水差しだけど中身は五十リットル入る水差しか」


 と、ほいほい商品を選ばれてしまった。


「す、凄いテキパキしている。水に関してはミクラの水収支がプラスなので問題ありません」


「なんだと!? 本当か!? なら水貯蔵庫で水を買い取っているから売りに行け! いくらでも買い取ってくれるぞ!」


 凄い情報と引き換えに一万二千ユロルかかってしまった。下取り込みでね。


 その水貯蔵庫で水を売る。

 水収支がプラスというのはこの地方では大変有利な地位らしく。ミクラはまるでお嬢様のごとく扱われていた。

 水が出る量も膨大なので、ここに就職して欲しいと何度も懇願されたくらいだ。

 断わったけど、ミクラはまんざらでもないような感じがしてた。

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