第12話 魔導飛行船で、次の国だ!

 国へ反乱をしよう押していた辺境伯の野望を阻止し、施設を破壊したコンビ。

 依頼じゃない故に冒険者ランクは上がらなかったが、この国においての名声はそれはもう大変に上がった。

 王家から、いや、国として報奨金を出してくれるそうだ。


「フィルク様、そういえば何ですがこの国と国の首都って名前なんですか?」


「えっ」


「あまり気にしてこなかったので首都、国、しか把握しておりません」


「えーと、「サガバール王国」と「首都ザンシュルク」だよ」


 どうでも良いコントを挟みつつも式典は行われ、五万ユロルとミススル銀製の片手半剣と短剣が贈呈された。


「うわー、ついに片手半剣を手に入れることが出来た。しかも高級鉱石であるミススル銀だなんて。これで俺も一端の戦士になれたかな?」


「武器がどうのこうのじゃなくてもフィルク様は立派な戦士です! でもおめでとうございます! 私には立派なミススル銀の短剣、だそうですよ!」


「この国での名声もかなり高まったし、言うことないね!」

「そうですね。あの、その」

「ん、何か言いたいことでもあるの? サイズ的に難しいけど剣にして欲しかった? それとも防具?」



「いえ、もうこのままここで暮らしませんか! 私のインプラントなんてどうでも良いです! 私はフィルク様と一緒ならそれで良いんです!」


 ミクラはかなり真剣な目で僕にそう訴えかけてきた。


「……確かにそれでも良いかもしれない」


「なら!」


「でもさ、亜人は長生きするだろ、だからミクラは俺より長生きする。俺が死んだらインプラントが使えない人だけが残ってしまう。インプラントなしって、社会的には死んでいる人と同然だ。それじゃダメだと思うんだ。俺はミクラのインプラントをどうしても直したい」


「フィルク様……」


「まだ世界を全て見たわけじゃない。どこかには再生してくれるところもあるかもしれない。俺はもうちょっと旅を続けて可能性を追求したいな」


「フィルク様……うわあぁぁん! そこまで考えて下さってありがとうございます! うわあぁぁん!」


 ミクラは泣きながら俺に抱き付いて、さらにワンワンと泣いた。



 僕たちはパーティメンバーなんだぜ。



 王国内に施設はついぞ見つからなかったが、錬金の国や科学の国なら望みがあるかもしれないと言うことで、この国を出て次に向かうことにした。


「王家には世話になったなあ……温和な王家で良かったよ」

「次に予定している国はサガットという錬金が得意な共和国です。共和制だからかもなく不可も無くと言ったところでしょうか」


 魔導貨物船に乗り、飛び立つのを待つ。五万ユロルもあればもっと上級客船にのれるだろうが、お金は節約しないと。


「しかし凄いですよねえ、こんな鉄の塊が空を飛ぶだなんて」

「飛ばしちまう魔道機関は凄いよな。しかしそんなにしっぽ振って。相当楽しみなんだな」

「えへへ」


 まもなく離陸しますというアナウンスとともに、プロペラにエンジンがかかる。

 この貨物飛行船「クラーフ・チェツト」は八機のプロペラ十二機の上昇魔導機によって推進するとのこと。

 速度は遅いが運べる量がかなり多いらしい。

「って、ガイドブック「愛せよ我がクラーク!」に書いてあるぞ。ガイドブックかー、冒険者ギルドのガイドブック以外見たことなかったよ」


 エンジンが本格始動する。


「……!」


「………………!!」



 うるさい! 隣にいるミクラの声が聞こえないくらいうるさい!

 二泊続けて飛行したら一度補給するために交易都市に降りるらしいが、二日間は眠れそうにないな……。


 移動に制限があるが、それでも空を眺めることは出来る。雲より上を飛んでいる。

 時折凄い発砲音とともに魔導弾が発射される。空のモンスターが近づいてきたのだろう。

 とてつもなくうるさい中、ジェスチャーを使って興奮した会話をする僕とミクラだった。


「あーうるさかった。ここが一つ目の交易都市か! 凄い栄えてるね」

「交易、貿易は富をもたらすんですねー」


「見て回りたいけど、まずは」


「「寝よう」」


 ここには安宿があって少ない料金で止まれるんだけど、ほぼ常に満室。

 みんな欲することは同じらしい。睡眠だ。

 なんとか宿を取って爆睡し、次の二泊へ立ち向かう準備をする。

 魔導耳栓というものを買ってみたのである。

 これで少しは音が減るだろう。


「騙されたー! 全然音が小さくならないよー!」


 爆音で二日過ごし、一日補給してさらに飛ぶ。

 空の旅の終着点サガット共和国首都ムベヘラーンへは補給せずに一気に飛ぶらしい。


 あー、耳が壊れてなければ良いんだけど。


そんなことを思いながらムベヘラーンへ到着。今度からは最低でも客船にのろう……。


「ミクラ、耳は大丈夫?」


「しに……そう……です」


 ああそうか、ミクラはおきつね亜人だから耳の感度が高いのか。相当な地獄だったろうな。



「でも……また……のりたい……です」


「今度はもうちょっとうるさくないやつに乗ろうな」


 サガットには入国管理局なんてのがあるので入国審査の列に並ぶ。


「はい、次の方ー。名前と入国理由をどうぞー」


入国審査官に促されてやりとりをする場所に立つ。さあ頑張るぞ!


「ミクラとその保護者フォルクです。探索および冒険に来ました。見てもらえば分かりますが、ミクラのインプラントがえぐり取られてしまったので、この国でどうにか出来ないかと思って」


「なるほど。パスポートは?」


「冒険者ギルドカードがあります。僕は冒険者ランクBB、ミクラの冒険者ランクはCCです」


「今データを読み取ります。えーと、保護者さん厳重注意されてますね。特に何があるわけではありませんが、問題を起こさないように。入ってどうぞ。次の方ー」


 慣れないことで汗をいっぱいかいたがなんとか入国できた!


 この国で良い情報が見つかりますように!

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