第29話 ファイアボルト
数日続いたインプラントの訓練も終わり、自由になった僕たちは、スキル屋へと足を運んでみた。
「っかー、オルクスタンピードで魔石とオーブは出たんだがこの中央冒険者ギルドまでは降りてこねえわ。みんな軍部と癒着で消えちまう。ファイアボルトくらいしか攻撃モノはねえよ」
そうなのだ。ブキョーは科学で発展したがそれには理由がある。
この土地は非常に住みやすいがオーブや魔石の産出が非常に少ない。
他の国のように魔石を湯水のごとく使える環境ではないのだ。
よって、一つの魔石を効率よく扱うために科学が発展した、らしい。
あと社会主義はどうしても賄賂や癒着がでるからね。僕らと国家主席の関係だって癒着だよね。
「じゃあファイアボルトを一つ。しかし、スタンピードをあえて起こすなんて恐ろしい国ですね」
「毎度。そうでもしねえと魔石にオーブが足りねえのよ。まあ、今回のオルクは出過ぎだったみてえだけどな。被害もそこそこ出てしまったようだし」
ファイアボルトを購入してすぐにミクラに取り込ませる。郊外で試し打ちかな。いや、郊外に出るまでが遠すぎるか。
二〇〇万都市の中心部近くにある冒険者ギルド周辺で暮らしているわけだもんな。
ヤミちゃんに泣きつこう。
「そうですね、試し打ちができる施設がありますが……ミクラ様のステータスを見ると吹き飛ばしちゃいそうですね。うーん、近くの特殊部隊の訓練場をお借りしましょう。国家主席に許可もらってきます」
「え、なんか大層なことになりそうだけど」
ほどなくして。
「許可下りました。これが特殊部隊の訓練場までの地図です。この入館カードは首に常につけておいてくださいね。では、いってっらっしゃーい!」
流れに流されて特殊部隊の訓練場へ。名前と入館カードを見せると、案内役が来て試し打ちをさせてくれる場所へと移動させてもらった。
「一見何もない空間ですが、本当に撃ってしまっても」
「かまいません。相当な火力でない限りこの空間を打ち破ることは出来ません」
キリッと緑の軍服を着た案内員さんが答える。
「じゃあ、ミクラ。ゆっくり火力を上げていこうか」
「はい、じゃあ弱めのファイアボルト!」
ヒューン、ドン。
一般的なファイアボルトが出現し、空間にあたって消えた。
「おーごくごく普通のファイアボルトだね。ちゃんとコントロールできるようにもなってるんだね」
「はい! 次はオルクが現れたときに焼き尽くそうってレベルのをだします。ファイア、ボルトォ!」
ブボワァー! バガンゴン!
ものすごい熱量を持った炎の槍? もっと巨大な……まあ槍で良いか、槍が現れて空間に飲み込まれていった。
「ちなみに連射できます」
ブブブブブボボボボボワワワワワァー!
五連射のファイアボルト(槍)がものすごい勢いで飲み込まれる。空間は飲みきったけど、若干ヒビが生えている感じがした
「こ、これは……結界が……」
ちょっと慌てる案内員さん。
「凄いなあ。最大パワーはどういう感じなの?」
「ええとですね、イメージ通りに放てれば直径五メートルの円形の形をしている炎の柱が私の手から発射されますね。またはそれぞれが意識を持ったかのような炎の蛇が私の扇形一〇メートルの物体を焼き尽くします」
「出来るもんなの? それ本当にファイアボルト?」
「イメージ通りに行けばですが。スキルはファイアボルトってなってますね。戦闘も良いんですけど、フィルク様をお守り、ご支援するスキルが欲しいです。全体的な防護であるレジテーションとか。ダークアイで暗視を付与するのも良いですよね」
スキル談義に花を咲かせていると、案内員さんがきて、
「結界に不具合が生じたのでこれ以上強力な魔法を使わないでください」
ということなので試し打ちはここまで。よほどの威力だったんだろうなあ。
でも相当ミクラは凄いというのが分かった。
ミクラのスキルは額面通りに受け取ってはいけないというのも判明した。
応用がすさまじく出来る。
ここブキョーはスキルオーブが少ないけど、ここを離れればまた増えるだろうさ。
そうしたらミクラにかなう相手はいなくなるんじゃないだろうか。
「さて今日から僕とミクラが教育機関で勉学に励む事になるね。キューとビャクに合う頻度が減るのは寂しいけれど、全くないわけじゃないからね」
『さみしいなあ』
『びええええんフィルクうううううう』
「私達は強くなってくるんだから、二人にも強くなってもらわないと、ね?」
『うむ、そだの』
『ひぐっひぐっ、わがっだぁ』
ミクラになだめられた二人はこゃーんこゃーん言いながらも冒険者ギルドの厩舎から僕たちを見送ってくれた。
彼らの期待のためにも、頑張らないとな!
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