第25話 戦争開始
二週間と予想されてから六日後にスタンピードは発生した。
いきなり、本当にいきなりオルクがダンジョン周辺に現れたんだ。
「これが、大規模スタンピード……一体何体いるんだ」
「ご飯を食べている場合じゃないですね、しまってしまいましょう」
ダンジョンから一キロメートルくらいに最前線の塹壕があるのだけど、そこから見ると灰色の林、いや森のようにオルクが立ち並んでいる。
【第一次戦闘態勢!! 各員は即時に任務に当たれ! くりかえす、第一次……】
【総数四万と予想される。冷静に適時に当たれ】
拡声魔法による伝令が鳴り響いている。
僕たちに指示は特にない。やることは塹壕に入った敵を倒す、それだけだからね。
グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
唐突にオルク群が吠えた。
それは地鳴りのごとく
それは雷鳴のごとく
人々の鼓膜の奥に深く突き刺さるものであり
ただの一吠えで戦場を恐怖で満たすものだった。
「うわぁああ逃げろおぉ!」
「殺されるぞ! あの数をどうしろっていうんだ!」
冒険者が逃げる。
さほど戦意のない、ちょっと参加してお金を貰おうというレベルで参加したような人たちなんだろう。
士気が低くては恐怖には勝てないよ。
僕たちはナツメウナドラゴン様による訓練の
すぐに逃げるとかはないけど、軍の動き次第では逃走をしないといけないね。
【魔導榴弾発射開始! 着弾確認しっかりと行え!】
ドドドドーン
ドドドドーン
ドドドドーン
無数のエネルギーの集まりがオルクの方へ向かって飛んでいく。
ドバババババババババババババババン!!!!
そのエネルギー弾が地面とある程度の距離に達したとき、ものすごい勢いで爆発した。
これはあぶない!
「ミクラ、伏せて!」
とっさにミクラを抱いて塹壕の中に隠れる。
その上をものすごい爆風が通過する。
ドバババババババババババババババン!!!!
ドバババババババババババババババン!!!!
ドバババババババババババババババン!!!!
ドバババババババババババババババン!!!!
「まだ続くのか。これ、塹壕を這わずに、塹壕から出て逃げ出してしまった冒険者は死んじゃったかもしれないね」
「なんだか悲しいですね」
「一種の戦争だからね、これは……」
砲撃が止む。煙が晴れる。
四万と言われたオルクは数千くらいまで数を減らしているように見える。
「凄い、これがブキョーか……」
「でも、まだ死んでないということはそれだけ強い個体が残ってます!」
グォオオオオオオオオ!!!!
オルクが突進を始めた!
【魔導機関銃、しっかり引きつけろ!】
今拡声魔法で指示を出している人は恐らく声に士気が高まるようなスキルを持っているんだろうな、声を聞くだけで意思をしっかりと持てる。
オルクの突撃、それをしっかりと阻む道具がこちらには展開されている。
有刺鉄線という物だ。初めて見たけど、トゲトゲの鉄の線で、これを三角形の形状を作るような形で横に横に敷いていく。
三角形の形状が擬似的な壁を構築して、それ以上の侵入を阻む。爆風はすり抜ける。
強引に進もうにも普通の陸上生物なら棘が刺さって進むことが出来ない。
よく考えられた物だなあ。
などと感心しているのは、今まさに有刺鉄線の壁の前でオルクが進むことが出来ずにいるからだ。
そこをものすごい速度で弾を発射する大型の魔導銃、魔導機関銃っていっていたね、それで掃射している。
魔導銃を舐めていた。進化した魔導銃はこんなにもアッサリとモンスターを肉片にするのか。
「何もしないで終わりそう……かな?」
「きつねの感はまだ警告音を鳴らしています」
「そっか、気を引き締めないとね」
無謀な突撃が終わってほぼ殲滅した。僕たちはやることなかったかな。
これで終わりだ! やった!
みんながそう思ったときに
グォオオオオオオオオ!!!!
グォオオオオオオオオ!!!!
「う、嘘だろ」
「これが本体かもしれません、フィルク様」
最初の時とは桁違いな数のオルクの森が誕生したんだ。
【魔導榴弾発射開始!!】
ドドドドーン
ドドドドーン
ドドドドーン
ドバババババババババババババババン!!!!
ドバババババババババババババババン!!!!
ドバババババババババババババババン!!!!
ドバババババババババババババババン!!!!
二度目の大砲撃。
煙が消え去ると、そこには減らし切れなかった数のオルクの集団がいた。
【作戦その二! 砲撃しつつ魔道機関銃発射開始! 肉の死体と鉄を引き裂く腕力で有刺鉄線が突破されるぞ!】
この声で塹壕内に一気に緊張感が走る。有刺鉄線の次の壁は僕たち最前線の塹壕だからだ!
グォオオオオオオオオ!!
オルクの突撃が開始される!
バババババン!
魔導機関銃で肉片になるオルク。
しかし有刺鉄線はじわじわと侵食されていく!
「東側Cブロックの有刺鉄線が突破、塹壕内で乱戦が始まっているそうだ。あそこにはベテラン冒険者はBランクしかいない。応援に行ってくれ!」
初めて僕たちに軍の伝令官から指示が出る。
「わかりました、いってきます!」
――地獄の釜が、開こうとしている――
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