第2話 パーティ結成とスキル。


 名も無い農村に寄ることが出来たので、冒険者ギルドに立ち寄る。

 こんな場所にでも冒険者ギルドは施設を作りネットワークがある。

 どの国も冒険者ギルドのネットワークに頼る部分はあって、開拓する際には真っ先に冒険者ギルドを立てているくらいだ。

 全世界ネットワーク通信網や個人で使える電報、開拓民募集依頼に周辺の安全確保のための冒険者派遣……ギルドだけが出来ることは山ほどある。


 さて、受付のお婆さんに話しかけ、一八号さんのギルド加入とパーティーの設立をしたいことを話す。

 僕達に各種登録用紙が渡された。


 登録用紙には名を記載しないといけない。


「登録するには名前が必要なんだけど、何か希望する名前はあるかな? これからずっと使っていく名前になるんだけど」

「ご主人様のご希望通りで」

「ご主人様……僕が?」

「違うのですか? 私を連れ回すとはそう言うものなのではないのですか」

「全然違うんだよな。パーティーになるなら対等な立場になる、僕と君は一緒の立場だよ。君はもう奴隷じゃ無い」

「……怖い思いをしなくてすむと言うことですか?」

「まーそうなることで取り合えずはいいや。名前を決めよう。わかりやすくて書きやすい名前が良いかな。アルス、アリア、マール、プリム、シルビア、レイ……うーん、どういうのが良い?」

「よくわかりません……」


 まあそうだよなあ……。

 元奴隷という身分を逆手に、神々しい名前でも良いかもしれないか。

 おきつね少女……、きつね……、穀物神……あるいは九尾のきつねや空狐くうこ、ウカノ、もしくはミクラ……。


「ミクラでどうかな。穀物神の中でも一番の神様由来の名前で、きつねの眷属を持っている神様なんだけど」

「ミクラ……、なんか素敵に感じます」


 あ、少し目が輝いた気がする。うん、これが良い。


「じゃあミクラで! これからよろしくね、ミクラ!」

「はい! ご主人様!」


 やった、元気いっぱいに反応してくれたぞ!

 ご主人様呼びだけど、うん、まあそこは追い追い直していこう。


 受付のお婆さんに登録書類を提出し、晴れてミクラは冒険者ランクGの冒険者となり、僕達二人は「何でも屋『器用貧乏』」というパーティ名で活動することになった。

 パーティランクはDになったよ。僕が個人ランクB+と少し腕が立つからね。


「それじゃあ、はい。ミクラちゃんだっけかい。最初に出る支給品と支援金だよ。幸いお召し物もあるんだ、最低限だけど貧困民の身なりからは脱出できる」

「ありがとうございます」

「それと初期支給品の中には武器一式と生活魔法から初期魔法までが入ってるからね。武器はあわない奴は返してもらって、魔法も覚えられなかったものは返しておくれよ」

「は……い?」

「それは僕が説明するよ」


 初期支給品の武器は、


ナイフよりは大きな短剣

 殴るなら最強な鈍器

 一般的な装備である剣

それよりも長くて扱いにくい片手半剣

 一番長い武器の両手剣……じゃなくて、それに近い両手棍棒

近接戦闘も出来る短い槍


 ってのがとりあえず貸してもらえる。


その場で取捨選択してもいいし、

「ほら、ヒトなら誰でも必ず装備されている左腕の小さなAR拡張現実インプラントにしまってゆっくり吟味することも出来るんだよ。返すと言ってもどこの町や村のギルドで返しても良いんだ」

「左腕の……小さなインプラント、ですか?」


 ミクラの左腕をみたとき、僕は絶句してしまった。

インプラントが存在していない。その代わりインプラントがえぐり取られている跡があったのだ。

「何だってこんなことを……」

 絶望の声でそう呟く。


「あぁ……、このこはおきつね亜人ちゃんじゃろ、亜人のインプラントは性能が良いからえぐり取られて上級民様や上位冒険者に移植されたりするのじゃ。あなたもかわいそうにねぇ……」


 おばちゃんが可哀想にといった風にそう話す。

 可哀想かもしれないが、僕にとっては唯一のパーティメンバー。このままにはしておけない。


「たしかギルドは治せる施設を持っていましたよね」

「治せるというか、命が消えてインプラントが動かなくなる前にそれこそえぐり取って移植する感じだけどねえ。医療費は相当かかるよ。Aランク冒険者パーティでもやっとだろうさね」


 誰もが押し黙ってしまった。


「そうだ、魔法はどう?」


 場を明るくするために努めて明るい声で言った。


「あ、はい。今から取り込んでやってみます」


 お婆さんにてほどきをうけながら、魔法を取り込んでいく。

 基本は額につけたスキルオーブに「取りこめ!」と念じればすっと体内に取り込まれ、魔法やスキルの使用方法や応用方法などが自然と頭に入ってくる。

そう、スキルオーブは魔法だけでは無くて物理攻撃スキルを取り込ませてくれる品物なのである。


 相性問題で取り込めない、取り込んでも使えないスキルオーブもあったりする。

 光と闇は相反するから取り込めないものの代名詞だ。

 炎と氷を一緒に放出するのは不可能と言われるくらいだし、両手剣が二刀流をしたら腕の関節がボキボキになってしまうだろう。


 意外と制限があるんだよな、なんて思いつつ取り込むのを待っていると。


「おいおい、旦那さん! この子は全て取り込んじゃったぞい! 生活魔法は無論、火、水、風、地、この四大属性全て、しかも雷まで取り込んでもうた。この子は強くなる! 今のレベルでも魔法を十二分に行使、ああ、インプラントが、……そうじゃったの」


 魔法とかスキルってのは、インプラントに貯めておく魔力によって行使される。インプラントが魔力を溜め、インプラントが放出する。普通はね。体内に溜めておくこともわずかながら出来る。


 インプラントなしで放てる魔法は……生活魔法と各種アローそしてデバフ位かな。かなり近距離の、ね。


「僕が守るから気にしないで。それでは最後にステータスとスキルの確認を」


「あいあい、そのステータル測定球に触りんさい。ステータスを図るとギルドカードに自動記入されるから、ギルドカードにステータス欄はあまり見せないようにの。ステータス以外にも個人情報満載じゃ」


 果たしてどういう結果が出るのかなあ。

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