第15話 モン物
首都までは魔導飛行船が出ており、そこから錬金都市までバスも出ている。
普通ならこちらを選択するのだけれども……。
「乗るとして巨大貨物船の三等客室か……」
料金表を見て悩む僕。
「乗りたいですねー。今度はうるさくないと良いんですけど」
「いや、二十四機のプロペラエンジンと三十六機の魔導上昇機で動くからうるさいってレベルじゃないぞこれは。耳の良い亜人は危険なレベルらしい」
「ノ、ノリ、ノリタイナー……」
「おとなしくした道でいこうね」
冒険者ギルドの情報によると、下道とはいえ使う人は多くて、交易路みたいなものが形成されているんだってさ。
今度大規模な交易集団が下道を使うからその護衛が募集されていた。
条件は個人ギルドランクはC以上、またはパーティギルドランクがC以上だそうで。
どっちもクリアしているから大丈夫だね。
成功報酬は一五万ユロルもする!
……この国は物価が高いのかもしれないな。
早速応募して準備。馬と餌は各自準備して欲しいと言うことで牧場へ赴いた。
「とほほほ……」
「レンタル料が十万ユロルもするのでは借りるのも借りられないですよね……」
しょんぼりとしている僕たちの目にある看板が目にとまった
『もんすたーきめらけんきゅうじょ こわくないよ あぶなくないよ』
なんだこの看板は……。
「ようこそいらっしゃいませお客様」
真後ろから声が聞こえるのではっと後ろを振り返ると、そこにはボロいけど紳士服を着たおじさんがにこやかな笑顔で立っていた!! 気配を全く感じなかったぞ!?
「いや、まだ客というわけでは」
「ではモンスターキメラ動物、略してモン物をご紹介しましょう。安くて心強いモン物がそろっておりますよ」
その無の圧力によって牧場に入ることになってしまった。
牧場の中は外の熱とは無関係で牧草も生えそろっており、快適な空間だった。
「ここでは一般的な動物とモンスターを掛け合わせた実験を行っているのです」
なるほど、六本足の馬や陸上なのに高速で走る亀、三つ叉の首長竜のような得体の知れない動物? 等が目に入る訳か……。
「お客様にご提供するモン物は一般向けの用途に寄せてありますのでご安心を」
……あれ、買う人がいるんだ。
「ご主人様、ちょっと怖いです」
ミクラが僕の背中に飛び乗りぎゅっと抱き付いてくる。刺激強いもんね、おんぶをしながら後をついていく。
「熱砂地帯を渡るだけならこのラックダダダダーンですね。ラクダとダンダダを掛け合わせております。下道くらいなら無補給でも余裕で走破できますよ」
「なるほどそれは凄い。しかしここはレンタルはしておりませんよね?」
「兄弟が各地で研究および経営をしているのでそこまで運んでいただければ大丈夫です。前金は同じですが、返却時に半額が戻ります」
あるほど。しかしラックダダダダーンはダメだな。ダンダダが蜘蛛なんで、それに寄せちゃってあって見た目が蜘蛛っぽい。複眼とかじゃないんだけど……。
ミクラが大泣きしていやがるので他の動物を紹介してもらった。
「ではこのラクラですね。モンスターではありませんが、掛け合わせ動物であり子供を産めないラバと、ラクダを掛け合わせた動物です。小さいですがこぶもあまりありませんし少ない水や餌で下道程度なら乗り切れます」
「なるほど、これなら怖くないな。ミクラー、これなら大丈夫かー? あれ、ミクラー?」
気がついたらミクラがいない。牧場の方にいったのかなと思ったら、小さめなポニー程度の体格をしている綺麗な赤色の狐と遊んでた。
「あらら、すいません」
「いえ、とんでもない。キュウがあれほど懐いて遊んでいるのは私達兄弟では見かけたことがありませんよ。あれは非常に強力な狐の妖怪と馬を掛け合わせたモン物です」
「えええええ!? ミクラー! 遊ぶのはおしまいだー!」
何があったら賠償がとんでもないことになる……!
「あ、はい。またねー、ってここにはもう戻らない可能性があるのか。寂しいけどお別れだね……」
『さみしいよう、さみしいよう』
「なんだ今頭に入ってきた言葉は!? 念話か!?」
人が使う標準語を操る動物なんて、相当な上級パーティが持ってるくらいじゃないか……?
「キュウがあんなに寂しがるとは。お客様、よろしければキュウ、あのきつね馬ですね、あいつを連れて行ってはくれませんか? ここの適性が完璧にあるとはいえませんが、どこへでも連れて行ける適性はあります。頭も良く、頼もしいモン物となっていただけるはずです」
「うれしいご提案ですが、その、料金が……」
「ラクラ一頭の値段でかまいません。二万ユロルですが、
「……わかりました。支払いはクレジットで。いつお金が入るか不透明なので十二回払いでお願いします」
「キュウを、よろしくお願いします」
ぼろ服の紳士は深く深くお辞儀をしたのであった。
「というわけでミクラのパーティメンバーのフィルクだ。ミクラ共々よろしく頼む」
そういってキュウに手を差し伸べる。
キュウは軽く匂いを嗅いだ後手を甘噛みし始める。
よかった、受け入れてくれたみたいだ。
と思ったら思い切り飛びかかられた! いくら小さいとはいえポニーくらいの体格はあるきつね、思い切り押し倒される。嫌われたか……?
「ぺろぺろぺろぺろ」
何かと思えば押し倒して俺の顔をなめ回していたのだった。
「ずるいー! 私もフィルク様の顔を舐めなめしたーい!」
なんでも、キュウは女性らしい。
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