第16話 熱砂の攻防
無事に足も手に入れて交易隊に参加できた。
交易隊は荷物を馬などで運ばない。運び屋、ポーターを集めて、ポーターのインプラントに収納して運ぶそうだ。
「ポーターが死んだら荷物が散乱しちゃうし、さらわれたらそれだけ損失になるからね。襲撃が来たら本気で殺しにかかろう」
「はい!」
『わん!』
いぬかーい! と突っ込みながら下道を歩いて行く。
ただし、歩くのは早朝と夕方だ。昼間に歩いたら熱で消耗してしまう。
「ここの人は星を見ながら歩く方角を決めるそうだよ。そうするしかないと言ってもしゃれてるよね」
「雰囲気がありますね! 夜も警戒をし続けるからのんびりお空を見ることが出来ないのが残念ですが」
「そうだな。よし、ぼくは休むけど二人は大丈夫かな?」
「大丈夫です、まだまだ寝なくても余裕です!」
『こゃんこゃん』
熊さん印の毛布に身を包み、
早朝になった。みんな支度をして移動を開始する。
早朝はモンスターも動いてくる時間帯だけど、弓部隊の練度が高くて近づく前に処理してくれる。普通の襲撃なら僕らの出番はなさそうだね。
数日歩き、地下水が湧き出てくるところに到着する。
ここで水を補給するのだが、ここを通るのはわかりきっているので賊も出てきやすいと言うことだ。
実はここには日中に到着している。可能な限り賊とであわないようにあえて一番きつい時間帯にここを過ぎ去ろうという算段だ。
「フィルク様、何か来ます」
『音からして四つ足の動物の群れだね』
「そうか。相手も同じ事を考えていたかな。みんな! ウチのメンバーが敵襲らしき音を察知した! 動けるならすぐに動こう!」
僕がギルドランクBBと言うこともありみんなすぐに動いてくれた。補給を中止し、ポーターを真ん中に円陣を作って移動する。
数十分後に敵部隊と遭遇した。数は二十五くらいってところか。こちらの戦力は十五名。
「やあやあ君達。ポーターをおいていけ」
相手のリーダーがそう言う。
こちらのリーダーは、
「ほーん、そうか。護衛の連中! 敵を引きつけろ! ポーターが街に入れば勝ちだ! ポーターの馬はかなりの速さで走れるから逃げ切れる!」
そういってポーター達と一緒に敵陣へ突入。そのまま後方へ逃れていった。
おいていかれたー!!!!! もし勝利しても道分からないよー!!!!
「ふざけるなチクショウめが!せめてこいつらを殺して戦利品を手にれるぞ!」
というわけで全くもって無駄な戦闘が開始された。
『ミクラちゃん降りてー』
「ん?うん」
ミクラが降りる。すると一瞬で馬っぽいきつねが完全なる狐に変身した。
『私トランスフォームできるのよー。少し食い殺してくる!』
そういってきつねにしてはかなり巨大なキュウは敵陣へ突っ込んでいった。
「ラクラを失うのは惜しいけど、相手も騎乗しているしどうするかな……。そうだ、ミクラ!俺の前に乗ってくれ!」
「はい!」
ミクラはくるっと回って僕の前に着地、ラクラにまたがった。
「俺が操縦するからミクラがどんどんやっつけてくれ!」
「はい!ウインドエッジで全て切り刻んでやります!」
いやー、ラクラって頭いいのね。切り刻みたい方向へ軽く手綱を引くと、後は勝手に突進してくれる。
「てやぁ! ウインドエッジ!」
ミクラが風の刃を放つと、武器や防具の金属ごと敵が切り飛ばされる。それは腕だったり胴体だったりするが、どれも致命傷だろう。
キュウの方は、というと……。
「うわぁぁぁぁなんだこの生物は!」
「落馬させられたカモが炎のブレスで消し炭になっちまった! イッスは食いちぎられた! 勝てる訳ねえ!」
圧倒的じゃないか我が軍は。というかキュウちゃんは。
この事態を見て賊は潰走。持ちこたえていた傭兵部隊にも死者は少なく、道が分かる人も生き残っていて、死者を埋葬してから次の街へ進むことができた。
次の街「ザンカル」は補給の街。特にめぼしいものはなかったけど、大きな変更点があって。
ここから先は山道を進むとのこと。
過酷な熱砂地帯ではなくなるけど、熱砂装備にかなりお金使ったんだけどなぁ……。
あ、先の交易隊の行為に関してはギルドに報告しておいた。
十五万ユロルは手に入った。わぁい。
キュウと出会えたしまあいいかと、山道を進む。
実はここでちょっとした難点が生じてしまったのだ。
今までは水を詰めなくても良くなった分を僕とミクラの食料に当てていたのだけど、キュウちゃんの食料が割り込んできたのでその分を考慮しなければならない。
ラクラは草食だけどキュウちゃんは雑食なんだ。
草も食べるけどそれだけじゃあ……。
「というわけで僕が使う弓の出番か。キュウちゃんは存在がでかすぎて野生動物が逃げちゃうんだよね」
気配を消し、聞き耳を立てる。音の方向に双眼鏡スキルで遠目をし、当たりをつける。
(鹿か……上手くヘッドショットを決めないと)
弓を引き絞り、狙うスキルを使い、放つ。
放たれた矢は吸い込まれるように頭部へ刺さった。
痙攣する鹿。
「よし、キュウちゃんあれでしばらく我慢してくれ」
『わーい!』
山道は辛いけど、道がないわけでもないし、こういうのもありかな。
到着した都市は魔導飛行船が止まる都市で、かなり発展していた。
用事があるわけでもないのですぐに出立する。下道も完備されているし一気に首都まで行けそうだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます