第4話 スタンピードは魔族の侵攻
「今日はこんなもんかなと」
村周辺の凶悪……と言っても緑色ゴブリンや赤ゴブリン、強酸性スライムにコボルトとかなんだけど、そういうのを討伐して村へ帰還する。
「ただいま戻りましたー。お婆さんいますか?」
「はいはいここにおるよ。今回の任務の手当金じゃ。追加報酬は解体屋にいっとくれ」
「ありがとうございます、それじゃあ行ってきますね。
僕は解体屋に着くと、「インプラントから」どっさりと今回討伐したモンスターを吐き出した。
「お前さんのインプラント容量はそれなりに大きいなあ。五百キログラムくらいは入るんじゃねえか?」
キログラムとは全世界統一「度量衡(重さや長さ体積を定めた制度)」である「くたばれヤードポンド法」によって使われている重さの単位のことだ。キログラム意外にも長さの単位として「メートル」等が定められている。
これで世界中の長さと重さに基準が出来て、間違って違う単位の物差しで木材切って台無しになる、違う単位で金貨を測って多めに金貨を差し出す、なんてことが無くなったんだよね。
本当くたばれヤードポンド法様々だよ。成立自体は五万九千三百年ほど前らしいけどね。魔道文明が盛んだった頃かな?
とにかく、くたばれヤードポンド法万歳!
「ふう……」
「なにが激怒していたみたいですねフィクル様」
僕が悶々としているうちに隣にいたミクラ。気配を感じなかったぜ。
「ああいや、何でも無い。じゃあおかねにならない部分の解体をさせてもらいながら練習といこうか」
「はいっ!」
この作業、地味かと思うけど意外とそうでも無い。
インプラントにはマジックバックみたいな収納能力がある。だから適当に放り込んでも大人数パーティならまあ問題は無いかもしれない。
でも今インプラントを使えるのは僕だけ。
しかも野営道具やなにやら、積み込むものがたくさんある。
僕は器用貧乏なのでインプラント容量も中途半端に大きく、他人よりは持てるが、持ち物運び屋さん、いわゆるポーターではないので容量が凄い巨大だとはいえない。
マジックバックはダンジョン産出品で、人の多い都市ならインプラント収納能力の関係もあって捨て値で売られているけど、こんな開拓地レベルでは手に入らない。
まあつまり、ギリギリまで切り詰めても、物資が入りきらないのだ。
つまりある程度の食料は旅をしながら手に入れる必要がある。
こう言うとき解体出来るようになっておくと、食用部位だけを取れるようになるし、まちがって内臓に傷が付いてうんち以上の香りで全てダメにしてしまうことなんてことも減る。
一度ミクラが間違って大腸破っちゃったけど、とんでもねえ匂いだったよ。
なので二人とも真剣に練習をしている。今はいないが、羊系のモンスターが出たら小腸に肉を詰めてソーセージにする技術も学んでいる。道具持ち運べないけど、そういうのは関係ない。
半季節、六十日間くらい滞在したおかげで大分お金も貯まった。ミクラはかわいがられて、初歩の対人マナーなどはある程度覚えたみたいだ。よかった。
マナーって教えてもらっても実戦で役に立たないと意味ないもんね。講師がたくさんいたのは本当よかった。
そういえば僕の武器防具の修理が終わった。僕は何も仕掛けがない布の服の上に革の鎧なんだけど、ミクラは違った。
「ふぉふぉふぉ、この村秘蔵の回避アップする洋服に革の鎧を着込ませたぞい」
ギルドのお婆さん、かなりミクラにお熱みたいだね。
でも反対している人もいないし、これはありがたくもらっておこう。
そのミクラの衣装なんだけど、セクシーさが増した革の鎧という感じだろうか。
腰下には所々スリットが入っており、腰の動きが丸見えである。エッッ! な意味じゃ無いぞ。
くるっと回ってパッ! とすると、シャナリシャナリと布が巻き付いて、しっぽがピーン!となる。
かわいい
「かわいいなミクラ。最近は食事も改善されてとても良い感じにふっくらとしてきたし」
僕がそう呟くと。
「本当ですかごしゅ……フィクル様! とてもうれしいです! 私もこんなにたくさん経験することが出来てとても楽しいです! フィクル様に救ってもらって良かった!」
といっって抱きしめてくる。
まだまだ子供のような体をしっかりと抱き返すと、そこには穏やかな雰囲気が流れるのであった
******
「間違いないんですか」
「間違いねえ。狩人が連なる連中を見たと言うことだ」
「対策は出来ないんですか?」
「もったいねえがここを放棄する。大森林に近い開拓地はどうしてもこういうのがある」
「もったいない気がしますが、しょうが無いのかな」
村人全員に通達して避難の準備に取りかかる。
できるだけ馬車の足を速くするために本当に重要なもの以外は捨てざるを得ない。
数にもよるが、通った後は草一本生えないと言われている。
今回の規模はさほど大きくないらしい。しかしその分侵攻スピードが速いとのことだ。オーガの群れよりゴブリンの群れの方が早いって事だね。
******
「これで最後の馬車が出たぞ。本当に乗らなくて良いのかい。死ににいくような物だぞ」
「死なない、でも相手の邪魔をする方法はありますので」
みんなの馬車が遠ざかっていく。そこにはもちろんミクラも乗っている。
ここは放棄すると言ったので、鍛冶屋とギルドの材料で罠を張り巡らせていく。もう使わないんだもん、いいよね。
敵が遠ざかっていく感じがする
人間の生命エネルギーを感じ取ってるかもしれないな。側面から、大型は無視して小物を少しだけ削ろう。
僕には敵を追跡特定する技術はそれなりにある。
スキルに頼らなくてもそう言うことは練習すれば出来るんだ。
大きな群れの横側、ゴブリンなんかに突進してヘイトを買う。忘れていたが僕はパーティの先頭に立ちヘイトを買う戦士だった。
スタンピードの敵は操作でもされているのか、さほど有機的な行動をしてこない。まあそれでも開拓村に突っ込んできたら大惨事なんだけども。
盾がないので両手に短剣という貧弱なスタイルだけど、無機質な攻撃のために右手の短剣でパリィや、
それなりの敵数を切り飛ばし、ヘイトが完全にこちらに向いたので村へ後退。罠と障害でギリギリまで蹴散らす!
ドスンドスン
地鳴りが響く。今回のスタンピードのリーダーと取り巻きだろう。
村を破壊しつつまっすぐこちらに向かってくる。
村の中には煮えたぎった油など十分な罠を作成した。
足くらい鈍ってくれれば良いんだが。
目の前に現れたのは四つ足恐竜のプテテドゴンという恐竜だった。
普通なら草食動物なんだけどな。この個体はそこまで大きくもないな。
ほかのモンスターはいない。罠で全部死んでくれたかなー?
「これじゃ短剣だと皮膚を貫通しないな……。上手く罠にはめたら逃げよう」
最低限足は止めないといけない。
罠に誘導するように鍛冶屋が残していったボウガンを放ち続ける。
そしてプテテドゴンの前足が罠の起爆装置を踏んだ。
ドガァアアン!
完璧な位置取りとはいかなかったがかなり強い地雷が炸裂した。
煙で前が見えない。
煙が晴れる。お願いだから死んでいてくれ……!
「グギャアアア」
くそ、咆哮をしている。前足はいかれたようだがまだ死んでいない。
「私、魔法を放ってきます!」
とてててて、と走って行くミクラ。
「え、ミクラ!? 馬車に乗ったはずだろ! まだ相手は生きているんだ! 危ない!」
「ふぉおおお! ライトニングショット!」
ミクラの全身の毛がぶわっと逆立ち、自身の周りに魔法円が構築される。
そして次の瞬間、ミクラから
プテテドゴンに直撃。
バッターンと倒れるプテテドゴン。
雷撃があたった場所は炭化している。
ミクラを救出しつつ、プテテドゴンの様子をみる。
プテテドゴンは死んでいた。即死だった。
「ミクラー! 大丈夫か!」
ミクラはぐったりしていたが雷によるダメージはなさそうだった。
「無茶するなよ……」
いろんな気持ちがごちゃ混ぜになって、ただただミクラを抱きしめるだけだった。
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