第12話 愚痴

お前は、俺よりも1ヶ月も後か〜ええなあ〜。俺は卒業式までおれんでさ。なんだか心寂しさを感じるも、だからと言って慰めの言葉が思いつくはずもなく…私は、吉村君は、もう行ってまったしな〜。とそれ以外は話さなかった。あと、この様な会話は他の人には聞かれない様に気を遣って話した。

やり切れない気持ちでいっぱいだったけど、これが自分達に出来る精一杯の愚痴だった。

この時以外、彼と語ることは一度もなかった。

突然、豊川海軍工廠の兄から3月1日から海軍志願兵として浜名湖浜名海兵団に入団すると連絡が入った。

これは又思い掛けない出来事だった。兄貴も行くのか〜。それも俺より先に…。先を越された気分だった。

この兄とは3歳違いで、小学生にして父母を亡くした僕たちは互いに助け合って農作業やら家事に明け暮れた。今こうして兄弟揃って同じ道を行くとなって、自分の場合はまた2ヶ月ほどの猶予があったが長男の帰還祝いと兄弟揃って部落の方々の厚意で門出のお祝いを受ける事になって珍しい祝杯だった。

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