第9話 出兵
1月の寒い日だった。吉村八郎君が先陣を切って出発して行った。彼と言葉を交わす事はなかったが心の中で、頑張れよ!と叫んだ。
彼は何を考えて旅立ったんだろう…
各務福ニ君に採用通知が来た。3月に横須賀海軍電信学校に入校するらしい。吉村君、各務君に通知が来ても彼等との会話は一言も無かった。同級生の皆んながそうだった。かける言葉も交わす言葉もない。当の本人達も特に変わった様子も見せず黙って通学していた。そりゃそうだよな…生きて帰ってこられるかすらわからないのになんて声かけたら良いんだよ。各務君に通知が来たとなると、自分のところに通知が来てもおかしくないな。この頃くらいには、そんな予感しかしなかった。
久田見村の冬は雪も多く北風が吹き荒れる厳しい所だ。正月も終わり、いよいよ就職試験が始まる頃。すぐ上の兄が豊川海軍工廠に就職しているから同じ所にでも行くかな〜とも考えていた。しかし、こんな世の中なので面白くない日が続いていた。
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