第18話 出発
昭和20年4月22日午前10時岐阜駅集合の通達に間に合うように14年間辛い時も楽しい時も全てを共にした我が家を午前3時に出発。上麻生駅までの山路、懐中電灯の明かりを頼りに注意して向かった。兄弟みんなが見送りに来てくれて静かな門出となった。5時頃に山を下り飛騨川の川沿いから立ち込める朝霧の中に見た桜の残花も僕を応援してくれているかのようだった。
2度と、この地に戻ることはないのか…感無量で胸を締め付けられる思いで夜明けと同時に6時近く駅に到着した。今日は、特に快晴だった。岐阜行きの始発が間も無く入ってくる。改札口を出て上りの2番ホームを通る時、兄が挙手の敬礼、お姉さんの旦那さんが最敬礼で見送ってくれた。姉は岐阜駅まで一緒に来てくれた。その時に、涙は絶対禁止やでなと。苦しかった。兎に角前に進むだけ。目に見えぬ何かとてつも無い大きな物に押されている。後ろを振り向くなと自分に言い聞かせて乗車した。
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