第22話 現実

大阪駅に近づくにつれ、周辺では空襲による被害が相当出ていた。初めて見る瓦礫の山に言葉を失った。なんやこれ…こんななっとったんかぁ。名古屋市もかなり酷いと出身者が話していた。主要都市で志願者を乗せ西へ西へと走る長い汽車の旅。客車と言えども座席は板張り。夜間になっても暗い明かりがぼんやりとあるくらいで灯火管制下であったため相手の顔が薄らと見える程度だった。

列車は真っ暗で目を閉じてじっとしているだけ。連結の音だけが耳を打つ。相変わらず食欲がないし、何もすることがない。弁当を初めて開いた。朝、家で食事をしただけだったが全然喉を通らない。誰しもが同じ、初めての長い汽車の旅だ。広島に入った頃に警報が発令され、暫くの間列車が止まったが早朝で視察機の侵入だけで大事に至らず無事発車して行った。昨日、午前10時に岐阜県を出発して山口県三田尻駅に着いたのは実に22時間後の午前8時だった。

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