第16話 初めての床屋
出発の前に生まれて初めて床屋に行った。いつもは家で丸坊主にしていたがバリカンの調子次第では、かなり痛い目に遭っていたので、どうかと思っていたが流石お店だけあって全然違った。こりゃお金を払う価値があるわ…と心から思った。
お店の方も見慣れぬ客に不思議そうにしていた。でも、生きて帰って来れなかったらこれが最初で最後の床屋になるかもと覚悟を決めた。
店を出るとすぐ前がお寺さんで、ちょっとお参りする気になって足を運んだ。
長い闘病生活の母が布団の中でよく手を合わせて祈ってたなぁ〜と母の姿が目に浮かんだ。まだ、生きていた頃にお参りの仕方を話してくれた事があった。お願い事は言わんでもええでな、ただ手を合わせて南無阿弥陀仏を7回唱えたら仏様が良くしてくださるで。とその言葉を残して母はこの世を去った。その言葉は母から僕への贈り物となった。
だから、今回のお参りでもお願い事はしなかった。
普通、出征する時は村社神明神社に武運長久を祈願して出発するが、私はお寺参りで済ませてしまった。神も仏も同じだから良いかなと勝手に解釈した。
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