あの日の言葉の裏

「私の母が反対派をまとめてる事は事実よ。実際あなたに対して嫌がらせをしようとしたり、した人達のことを揉み消そうとしてるしね」


 ちょちょちょちょっと待て……


 い、いや、えーと


「それが本当だとして宇野さんはそれを俺に伝えて何をしようとしてるの?」


 そう聞き返すと苦虫を噛んだような顔でこちらを見てくる。


「私にはどうにも出来ないのよ。母に口答えなんて出来ないし、あなたが居なくなっても私に損はなかった……はずだったから」


 はず……だった?


「なんであんたが不思議そうな顔してるのよ。皐月さんと懇意にしてるでしょう。そのせいよ。というか朝意味分からないこと言われてこっちも戸惑ってるのよ」


 朝?って、あれか!俺が教室入る前に皐月さん大きな声出してたけど宇野さんに話してたのか。


「だから一応謝っておかなくちゃって思って。母も皐月家が絡むとなれば面倒くさがるだろうし。あなた、皐月さんと何があったらあんな……まぁいいわ」


 いや、あんなってなに?!首を振って話切り替えようとしないで気になるんだけど!


「初日に言ったように男が来る場所じゃないけど何もしなければ平穏とまでは行かなくとも無事に過ごせたと思うけど皐月さんが関わってくるなら何もしないなんて出来なそうね」


「えっと、あの日って俺のことを心配して何もしないように釘さしてくれたの?」


 ま、まさかな。そんな回りくどいこと……


「し、心配とかじゃないわよ!私だって本当は関わりたくないのに面倒な事しないでって釘刺そうとしただけだもん!」


 フンっと顔を背ける。耳が真っ赤だぁ。なんだコイツ可愛いか?


「あ、あぁ、ありがとう、で」


「お礼を言われるような事はしてないわよ!心配したからじゃないんだから」


 その設定なのね……


「で、俺をここに呼んだのはそれを言うため?」


「う、うん。それくらいかな。あとは一応母にも話してみるけど現状は変わらないと思う。私が何か出来るほど力がある訳じゃないし。だから私の周りの子達がなにかしちゃうかもしれない。けど許して欲しいの。男の子が嫌いなだけで悪い子じゃないから……」


 わざわざそれを言うためにこんな遠い空き教室まで来て鍵閉めて話してくれたのか。


「優しいんだね」


 思ったことがポロッと口から出る。


 それが聞こえたのか宇野さんはボッと顔を赤くさせて顔を手で覆う。


「あ、いや、えーと……」


 な、なんて言えばいいんだろ。


「わざわざありがとう。俺は別に些細な嫌がらせ程度はいいんだけど……皐月さんがね。怒ってて。俺なりには誤魔化せるかもだけど皐月さん達が手を出したら僕には何も出来ないから出来たら止めて欲しいな」


 実際そうだ。あの程度の嫌がらせなんて前の学校でやられてたことに比べたら些細なことだ。


 でも、始業式の日だって皐月さんは怒ってくれた。ずっと続くようなら何をしてしまうか分からないかもしれない。それを俺に止める力なんてないし。


「そっか……」


 どうしようかと悩んでいる。止めれるなら止めた方がいいとは思うんだけどなぁ。どっちにとってもいいことは無いだろうし。


 いや、共学反対派の人たちは俺がいない方がいいのか。そっか……


「あなたなりにしてくれるならそれでいいよ。わざわざごめんね。なにか我慢出来ないことがあったら私に言って?一応母がまとめてるってこともあって反対派の生徒たちが周りにいることが多いし止めれるかもしれないから」


 そう言って教室の鍵を開け去っていった。


 一応理事長さんに伝えた方がいいのかなこれ……

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