初の護衛

「じゃ、どこか行きますか?お嬢様」


 買ったアイスを如月さんに渡すと護衛の方たちは全員引き下がって行った。


 え?二人きりなの?


 何かあっても知らないよ??


「お嬢様なんて呼ばないでください。夏奈という名前があるんですから」


 そんなことを考えていると呼び名について指摘される。


「そうは言っても雇い主であり護衛する方に対してそんな軽く名前を呼ぶ訳には」

「では、雇い主として最初の命令です。名前で私のことを呼んでください」

「分かりましたよ、夏奈.......様」

「夏奈」

「夏奈.......さん」

「まぁ、今はそれでいいです。はぁ.......もっと柔らかく接してくれていいですのに」


 ため息をついてそう言ってくる。


 そんな美少女を呼び捨てで呼べるほど俺は陽キャじゃないんだよ。許してください。


「私、別にどこに行きたいというのはないんですが雪奈君はどこか行きたいところはありますか?」

「僕も特には。今のアイス屋が一番の目的でしたから」

「では、少しぶらぶらしましょうか。ゆっくりお話でもしながら」


 夏奈さんは宛もなく歩き始める。俺もそれについて行くと


「本当にあの時はありがとうございました」


 突然言ってくる。それが何のことかなんてすぐに分かった。

 あの時のことを思い出したのか、手が、それどころか体全体震えているように見えたから。


 大丈夫だよと声をかけようと思い夏奈さんの横に駆け寄ろうとして近付くと


「ひっ」


 後退ってしまう。思い出してしまっている時に不用心に駆け寄るなんて何してんだよ俺は.......

 そして、夏奈さんは俺を怖がったことに気付いたのか


「い、いえ。すみません。あなたが怖いわけじゃないんですが.......」


 そう言って頭を下げてくる。


 俺はその姿を見てちゃんと思い出す。


 この子はほんの数日前に襲われかけてた子なんだってことを。


 普通なら家すら出てこれてなくてもおかしくないような事だったはずなのに。


 でも、俺は夏奈さんの震えている手を掴んで絶対守るなんて言えなかった。自分にそんな力なんてないから。


 だから俺はあの時と同じように夏奈さんに上着を被せて隣に静かにいることにした。俺にはそれくらいしか出来なかったということが心に刺さる。


 でも、それだけでも夏奈さんは少しでも安心してくれたみたいで。


「ありがとうございます。寒いでしょうしこの上着は返しますよ。また風邪ひいちゃったら明日の学校にも響いちゃいますしね。では、ゆっくり回りましょうか色んなこと聞きたいんですよ」


 そう言って笑顔を見せてくれた。その笑顔は少しマイナスの感情が混ざっていそうだったが今の俺の限界だということだけは分かった。


 だから、出来るだけこの子と今を楽しめば元気になってくれると信じて


「どこから行きますか?夏奈さん」


 と言った。


 そして、3時間ほど学校のことや日常生活のことえを話しているうちに明るい笑顔を見せてくれるようになった。


 少しでもこの子の恐怖を払拭出来たらいいなと思いながらずっとそばにいたがこれなら良かったのかもしれない。


 ―――――――――――


 本日2話目の投稿です!!


 少し短かったですがここで一旦切らせていただきました。


 Twitter→ @akimoto_huuka

 ここで毎日の投稿のことやランキング結果を発表しています。良ければ見に来てください。

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