クエスト受注(負けクエ)

 学校へ着くと那珂川先生が俺の事を手招きしてくる。


「ちょっと着いてきてくれ」


 そう言って俺を連れていったのは職員室の横にある厳かな雰囲気を醸し出している扉の前だった。


 すると先生はその扉をノックし


「理事長。桜城君をお連れしました」


「入ってくれ」


 中から声が聞こえてくると那珂川先生が扉を開け中へ入っていく。


「桜城も中に来て」


 那珂川先生にそう言われたので俺も後について行くと中には壮年の白髪の男性が居た。


 女子校なのに男の理事長?


 そんなことを考えていたのがバレたのか


「私のような男性がいるとは思っていなかったのかな?まぁ、私は名ばかりの理事長だがこの学校にも3名男性の先生がいるから特に珍しいことではないと思うよ」


 そんなもんなのか。


「まぁ、私も含め基本表に出て何かをする訳じゃないし知らなくてもしょうがないかな」


 そうだよな。昨日の始業式だって理事長が挨拶してなかったから俺も驚いてるわけだし。


「桜城君も昨日までのことで知ってるかもしれないが共学反対派がいるんだけど僕たち男性の教師なども学校内にいるのが不快らしくてね。別に困ることでもないし表には出ずにいたんだ。事を荒らげたくなかったからね」


 荒らげたくなかったってなんで過去形なんだって思ったけど……絶対俺のせいだよな。


「別に君のせいじゃない……とは言いたかったんだけどね。誤魔化すのは無理そうだ。君がこの学校に転校してくることが決まってから反対派の動きが急に強くなった。反対派の親御さんたちにも既に伝わっているらしく既に抗議の電話でてんてこまいだよ」


 マジかよ……

 で、俺に文句言うために呼び出したってことか?


 今入ってくるべきじゃなかった。転校してくれってか?


「と、ここでだ。反対派の一掃をすることにした」


 え?一掃?


「それは予想してなかったって顔だね。まさか辞めさせられるとでも?輝秋に直接私が頼まれて転校者にねじ込んだのは私なのにその苦労を水の泡にすることはしないよ」


 当主さんが言ってた経営会社の社長ってこの人の事か?


 経営している会社の人だから名誉理事長的な.......だから表に出ないのかな。


 でも、名誉的なものなのであれば一掃できるほどの権力があるとは思えないんだが……


「そんな頼りないような人を見る目はやめなさい」


 笑いながらそう言ってくる。そんな目を向けちゃってたか。すみません……


「まぁ、実際にここでの権力なんてほとんど無いに等しいかもしれない。だがね……ここの経営に文句を言える位の財力はあるんだよ?」


 金の力ってことか……


 でも、その経営の金で理事長の椅子に座っているんだしそう言われた方が信用できるよな。


「だから基本は心配しなくてもいい。でも、本当は何も介入したくはなかったんだが……」


 ん?なんだろ。


「恐らく裏に着いているだろう人の娘にはあんまり嫌われないでくれ。というか、仲良くしてくれたらそこからも崩せるし出来ないかな?」


 この俺に女子に話しかけていて仲良くしろと申すか。


 どんな難易度高いクエストを押し付けてくるんだ。


「名前はなんというんですか?」


「あぁ、言ってなかったね。その子の名前は、宇野紅葉という君のクラスの子だよ」


 ……俺の記憶が確かなのであればもう既に無理クエなのでは??


 ―――――――――


 思い出せない人は新たな波乱の予感の最後の方を見に行ってください。


 



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