イチャついてない!!
……え?
いや、マジで言ってるのかよ。
宇野さんって確か始業式の朝に余計なことすんなよって言ってきた人じゃぁ……
「あの子の家はまぁ、特にお金持ちとかそういう名家ではないんだが……まぁ所謂官僚などを大量に輩出している国家権力が絡んで来る方の名家だよ」
あぁ……だから当主さんも安易には手を出せないんだ。裏でお金で解決したとしてもそれが表に出てしまえば国民からの信用を失ってしまうから。
大企業にとってはそれは俺と賭けるには大きすぎるのだろう。
「まぁ、君に対する嫌がらせを指示しているかはハッキリとはしてないんだけどね。ただ仲良くしといて損は無いし嫌われたら損しかないからってだけだよ。決して嫌がらせしてきているかなんて聞いちゃダメだよ?」
それはもちろん。例え宇野さんだったとしてもそんなこと本人に聞けるほど強くないです。
理事長は俺が頷いているのを見て安心したのか息を吐く。
「とりあえず話はこれだけだよ。もうそろそろ始業の鐘もなるし行ってくれていいよ。こっちでもきちんと調べておくから」
俺はお礼だけ言って頭を下げ理事長室を出る。
「ふう……嫌われないようにって何をすればいいんだろ」
理事長室のすぐ横の壁にもたれかかってもたれかかって考える。
「嫌われないようにって何か言われたんですか?」
下を向いている俺を覗き込むように夏奈さんが話しかけてきた。
「い、いや、何でも……」
ない。そう言おうかと思ったが夏奈さんはずっとこの学校にいたはず。宇野さんもいたんだろう。最低でも俺より知っているだろう。
そう思ったので聞くことにした。
「宇野さんについて教えて貰ってもいい?あの同じクラスの」
夏奈さんが突然むすぅっと不機嫌な顔をする。
「宇野さんに始業式の日に話しかけられてましたけど好きになっちゃったりしたんですか?」
いかにも不機嫌ですというような声で言ってきた。
「そんなんじゃないよ。ただちょっと気になってね」
「ほんとですか……?」
「ほんとだよ。そんな一目惚れなんてしないって」
「一目惚れはしないってことは好きになっちゃうかもしれないってことですか?」
泣きそうな顔で俺を見てくる。なにが聞きたいんだろうか?
「まぁ、いい人なら好きになるかもしれないね。好きになるかなんて分からないしね」
恋愛感情なんていつ芽ばえるかも分からないんだから。
まぁ、あの人をすきになるとは思えないけど。初めての挨拶であんなこと言われちゃったらね。
そう続けて言おうとし、夏奈さんを見ると目から涙がこぼれていた。
「え?夏奈さん?大丈夫?!」
夏奈さんに何かあったんだろうか。
心配になって肩を掴んで聞く。
「雪奈さんの……バカ」
俺の手を振りほどいて夏奈さんが走っていった。
え……?俺なんかしちゃった?!
「今すぐ追いかけて弁明してきな?お前の言いたいことはわかるけど皐月は多分勘違いしてるぞ」
那珂川先生が理事長室から出てきて言ってくる。
「お前らがいつまでもこんなところでイチャついてるから出るに出れなくて理事長に叱られたよ」
「イチャついてなんてないです!」
どこがイチャついてるように見えるんだよ。
「俺のせいで泣いちゃったなら謝らないとだしそうじゃなかったらそれはそれで俺が一緒にいないとだし」
だって俺は夏奈さんの一応護衛としてこの学校きたんだし。
「ほらそういう所だよ……」
何故か那珂川先生にため息をつかれた。
「しっし。はよ行ってこい」
「しっしってなんですか。まぁ、行きますけどね。じゃあ、那珂川先生。また教室で」
そう言っても那珂川先生はまだ手をしっしと振ってくる。
なんか俺ため息つかれるようなことしたっけなぁ?
――――――――――
長らく更新止まってしまい申し訳ないです。
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