え、まさかの……

 何とか煩悩を押さえつけながら体を洗いきる。


 先に洗い終えていたのだろう。奥から


 チャポン

 とか

 ふぅ〜


 とか聞こえてきて映像が頭に……


 そりゃ時間かかっちゃうよ。


「夏奈さーん。洗い終わったのでそっち行ってもいいですか〜?」

「はーい。というか早く来てくださいよ〜」


 俺は温泉の方へ回り込むと


「雪奈く〜ん。こっちですよ〜」


 スクール水着を着た夏奈さんが呼び掛けてきた。


 ぐふっ。


「せ、雪奈君?!は、鼻血出てますよ!!大丈夫ですか?!」


 予想とは違ったけどこれもまたこれでよし……ガクッ


 いや、倒れないけど。色々とやばいよ。語彙力も吹き飛んで行っちゃったよ。


「ちょっと、血流してくるからちょっとだけ待ってね」


 俺は体を洗っていた位置まで戻り、顔を洗ったりする。そして、覚悟を決め夏奈さんの方へ向かう。


「雪奈君大丈夫なんですか?あと、顔洗うだけならこちら側のシャワー使ってもらっても良かったですのに」

「大丈夫だよありがとう。次はこっち借りるかもね」


 今のは……冷水浴びてたんだよね。


「では、温泉を楽しんでください。どこから入りますか?」

「あの白く濁ったところ行きたいナー」

「にごり湯ですね!!行きましょう!」


 できるだけ刺激の少ないところでお願いします……


「そう言えば如月さん達は?」


 洗ってる時まで一緒に居なかった?


「あぁ、2人はあそこにいますよ」


 指さす方向には五右衛門風呂に入っている人たちがいた。


「あれ?如月さんいなくない?」

「えーと、多分サウナですね。サウナ大好きな人なので」


 あの人、サウナ好きなんだ……


 というか、やっぱりこんな家族風呂的な所にサウナあるのもおかしいよな。いや、おかしくないのか?あるもんだったっけ。ん?


 そんなことを考えているうちににごり湯に着く。


「入りましょっか」


 そう言って二人で中に入る。


「ほふぅ……」


 そんな声出さないでくれ!!


 というか、今更だけど髪とか濡れてすごくやばい。


 誰か助けて。なんで水着着てるとはいえこんな可愛い子がほんのすぐ隣で一緒に風呂はいってんだ俺??


 夏奈さんは肩までにごり湯に浸かっているせいでまるで水着を着ているようには見えない。


 それも相まってか率直に言うとくそエロい。


 ひっ。なんか今殺気感じたんだけど?!


 さっきを感じた方向を見てみると五右衛門風呂の2人が俺の方を睨んできていた。


 何?護衛職は雇い主への悪感情を察知する能力でもあるの?!


 これ以上は殺されそうだから考えるのやめなきゃ。


 祇園精舎の鐘の声

 諸行無常の響きあり―――


 適当に古典の授業で覚えさせられたものを思い出していく。


 そんなことを露知らず、夏奈さんはふぅとか言っている。


 やめて、その火照った顔で気持ちいいですねとか聞いてこないで!!


 夏奈さんから話しかけられたことにはきちんと反応するようにしてはいたがそれ以外の時に夏奈さんを見ると殺されちゃうと思ったので極力見ないようにする


 そんなふうに俺は何とかこの拷問風呂を乗り越えるのだった。


―――――――――


このシーンの夏奈さんのイラストを頂きました。

近況ノートに載せてありますので良かったらどうぞd('∀'*)




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