正月は憂鬱

 前回のあらすじ

 初詣に彼女欲しいと願いに行くと俺をいじめてきていた斎藤に強姦されかけていた巫女さんがいて、助けた後、走って家に帰った。

 ――――――――――――――

 1月2日、神社からの結構な距離を走って帰り、汗をかいていたのにも関わらずそのまま布団で寝た俺は見事に風邪をひいていた。


 昨日は大丈夫だったのにな……風邪が1日遅れてきやがったのだ。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


 とてつもなくしんどいんだが……あぁ、こんな時も心配してくれる彼女がいたらなぁ……


 逆に昨日のことで俺の事を憎んでるやつならいるんだろうけどさ。はぁ、もう嫌だぁぁぁぁ……


「雪奈〜お母さんお仕事行ってくるからね〜ゆっくり寝ときなさいよ」


 母さんがそう言って出ていく。


 うちの両親は二人とも飲食チェーン店で働いている。


 父親なんかは年越しも仕事先のキッチンで過ごしたちょっとやばい人だ。


「はぁ……」


 スマホを開いてみても誰からも連絡など来ていない。


 まず俺が体調崩したことを伝える相手がいないんだよねっていう……あぁ、悲しいかな……


 部活の先輩たちには優しくしてもらえてはいるから連絡したら来てもらえるだろうが連絡する勇気がないんだよね。だって女子の先輩しか居ないんだもん。


 ハーレムじゃんって?そんないいものじゃないよ。女子ばっかりの部活も。


 そんなことよりも……寂しいなぁ……


 まぁ、いいや。いつもの事だし。


 冷蔵庫にポカリあったかな?


 2階の自室から降りて1階のキッチンへ向かう。


 ガチャッ


 キッチンの扉を開けてすぐそこの冷蔵庫を見る。


 ねぇじゃんかよ。冷えピタも残り少ないしついでに買いに行くかぁ。


 部屋に戻って汗だけ拭き、外へ出る用意をしドラッグストアへ向かう。


 一番近いドラッグストアでも歩いて15分ほどかかるし、途中に坂があるもんで病人にはキツイなこれは。我慢して寝てた方が良かったかな……


 その行き道に見かけた顔の女の子が居た。


「昨日の子じゃん」


 周りには如何にもボディーガードですという風な黒い服を着ている女性たちが周りにいた。


 お嬢様だったのかな。


 その子の昨日の姿が頭に思い浮かんで来たので頭を振り忘れようとする。


 だって、ほぼ裸のあんな綺麗な子を俺が抱えてたんだぞ?


 あんな状況だったから何も思わんかったが、あとから思うと……ダメダメ。


 そんな雑念を振り払いながらその子に近付く。


 俺が近付いていくとその女の子と目が合った気がした。


 するとその女の子はビクッと体を揺らしてそばの女の人の影に隠れる。


 そのことに気付いた女の人達が俺の方を睨んできて


「すみませんがその不埒な目で近付くのやめて貰えないでしょうか」


 と言ってくる。


 え?マジか。雑念振り払えてなかったか?


「あ、す、すみません……その子に大丈夫なのか声をかけようと思ってたんです」


 というよりこんな厳重に固めているというのに昨日のような人の多い初詣なんかに一人で行かせたのだろうか。


「お嬢様は今大丈夫じゃありません。あなたのせいで」


 そんなに言うことないだろ??


 こいつには絶対話通じねぇってことが分かったので他の人に声をかけようと周りを見るとそこには昨日の引き取ってくれた巫女さんがいた。


「あ、昨日の」


 と、その人に声をかけると俺と目を合わせて気付いたのか目を見開いて寄ってくる。


「昨日は本当にありがとうございました」


 そう言って急に道端で土下座をしてくる。


 ほかのボディーガードさんたちは困惑していた。

 俺もいきなり過ぎて意味が分からない。


「え、あ、ちょっ。あ、頭あげてください」


 道端でいきなりなんて注目されるじゃないか。見られるのあんまり好きじゃないのに。


「そうですよ。茅野先輩。こんな男になんで礼なんてしているんですか」


 こいつはクソうぜぇ。俺が元気なら殴っているところだぜ。そんな勇気ないけど。喧嘩なんて勝てる気しないし。


「黙りなさい!!この人が昨日辛うじてお嬢様が喋れた時に言っていた助けてくれたお方ですよ!!」


 その言葉を聞きウザかったボディーガードが顔を真っ青にし、その後ろからお嬢様が覗き込んできていた。


 ってか、軽く声かけようと思ってただけなのにこの人達……長いな……最初に追い返されそうになった時にもう離れればよかったかな……頭が痛てぇ。


 ボディーガードの人達が頭を下げて何か言ってきているような気がするが何も聞こえねぇ。


 視界がグワングワンしてきた。あっ。これはやばい。


 そう思った時にはもう体を支える力も出せなくて倒れそうになる。


 お嬢様だけが頭を下げずこちらを見ていたので俺の不調に気がついたのか倒れる直前に何とか支えて貰えたところで俺は意識が途切れた。


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