え.......まじで????

 中へ入ってみるとそこは外から見た通り途轍もなく高級そうな旅館だった。


「え?お父さん。本当にここ払えるの?」


 母さんが心配になったのか父さんに聞いている。


「あぁ、母さんに皐月さんに予約してもらったとしか言ってなかったか?」

「うん。予約してもらってるからそこ行こっかとしか.......」


 俺も母さんから皐月家の人に予約してもらったとしか聞いてなかったがそうでは無いらしい。


「予約もしてもらったがこの招待券を貰ったんだよ」


 父さんが財布から何かを取り出す。


「ほら。これ」


 そう言って母さんと俺に見せてくる。


「1家族様ご招待券?」

「ああ、アウトレットの駐車場に着いた直後にな。如月さんが居て話しかけて来たんだよ。温泉に行ったりしませんか?この招待券が余ってるんですが.......ってな」


 最初からもう決まってたんだな.......


「ま、だからゆっくり楽しもうや。ご飯代とかは自分で出さなあかんから食べすぎたりはするなよ。特に母さん」

「なんで私なのよ!!」

「さっきジェラート2つも食べた人はだれ?」


 母さんがそっぽを向く。


「ま、雪奈はそこら辺気にしなくても良いからね。好きなだけ食べ?」


 やったね。


 母さんにさっきの仕返しとしてドヤ顔を向けておく。


「え?あんたそれドヤ顔のつもり?」


 え、なんか予想していた反応と違う。


 とは思ったが、


「いいなぁぁぁぁ。お母さんの分も雪奈の分として頼んでくれない?」


 めっちゃ羨ましがってきた。


 ってか、その提案はせめて父さんのいない所で……


「はいはい。母さん。ダメだよ」


 有無を言わさぬような笑顔で父さんが言う。


「はい.......」


 母さんがしょぼくれた。


 歳を考えろって……


 ひっ。なんか睨まれたんだけど?!絶対そんな残念じゃないだろ!!


「おっと。雪奈にはお迎えみたいだな」


 母さんの視線に脅えていると父さんが急に言い出す。


 お迎えって……あぁ、そういうことか。


 父さんの向いてる方向、旅館の中の方を見るとそこには夏奈さんが居た。


 でも、夏奈さんも、その周りの護衛役の人もタオルなどを抱えていた。


 今から風呂に行くんじゃないだろうか。


 すると、如月さんが近付いてくる。


「雪奈様。今から私共の部屋へご案内致します。桜城家の方々はこの弥涼暮月いすずくれつきを存分にお楽しみください。では、また夕食の時間に。雪奈様は着いてきてください」


 え?……え?


 俺だけ部屋に連れていかれて何されるの。怖いよ。父さん助けて。


 そう言おうとして父さんの方を見るとサムズアップしてきていた。


 帰ってきたら一発殴らせろ。

 はぁ……大人しく着いていくかぁ。


「雪奈君。この度はご迷惑かけてすみませんでした。実は元から雪奈君達が神戸に行くと聞いて着いてきたのです」


 いや、それは元から知ってるけど……


「怒らないでくれますか……?」


 上目遣いに聞いてくる。


 ちょっ。そんなのされたら誰だって許すよ。元から怒ってなんてなかったけど。


「う、うん。別に怒ってないから許すも何も無いよ。夏奈さん。ただ、これからはたまたま会った風になんて装わなくてもいいからね 」


 俺がそう言うと、パァァと花が咲いたように笑顔になる。


「じゃあ、次に予定してたこと言いますね!!水着着て一緒にお風呂入りましょう!!」


 ……まじかよ。



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