ひ弱なオタクは護衛職など夢のまた夢
如月さんに連れていかれて応接室に向かう。
部屋から出て応接室に向かうのに2〜3分かかっているんじゃないだろうか。広すぎだろこの家。洋風のいっぱい部屋がある豪邸なんて初めて入ったよ……漫画だけのもんだと思ってた。
「こちらです。少々お待ちください」
そう言って如月さんはトントンとドアをノックし
「輝秋様。桜城家嫡男、雪奈様をお連れしました」
なんか、重要な人みたいに言わないで??嫡男とか家継ぐことなんてないのに。
「入ってくれ」
声だけで分かる。この声絶対めっちゃ怖い人だ!!
どうぞという風に如月さんがドアを開けてくれた。
「失礼します……」
中に入ると、向かい合わせに並べられたソファの向こう側にスーツ姿の人がいた。あの人が当主だろうか。
「この度は本当にありがとう。そしてうちの者が申し訳なかった」
ソファに座ったまま膝に手を付き頭を下げてくる。
「い、いやもうやめてくださいよ。色んな人に頭を下げられすぎてなんか謝らせてるみたいで嫌です」
そう言うと、顔を上げてくれた。白髪の混ざった綺麗な髪でどこかの社長といえばこんな人というような顔をしていた。
「それはすまなかっ…これもだな。感謝だけにしておこう。初詣の時にはうちの夏奈を助けていただきありがとう。巫女の仕事をしてみたいと言ってきたから懇意にしていた神社に頼んである程度人の目につきやすいようにして監視もつけていたはずなのだが、何があったのかあいつらはその目をくぐり抜けていったらしい。君がいなければ今頃どうなっていたことか。助けて貰ったということしか聞いてなくてね。何があったかまだ詳しく分かっていないんだ。当事者の君から教えてくれないか?」
俺は初詣であったことと、どうやって助けることが出来たか、そして、その相手は誰なのかと言うことを詳しく話した。
一通り話すと当主さんは頷いて
「君の言葉に嘘はないようだね。その斎藤とやら達はもう既に特定して対処させてもらっているよ」
「対処……?」
「うむ。動画の投稿先から声などを全て入手し、動画は削除させてもらった上であの子の両親、そして警察などに連絡させてもらったよ」
まじかよ早くね……まだ二日しか経ってないのに投稿先特定してそこから声とか特定したってことかよ……
ん?ってことは。
「俺が何したかもわかってたってことですか?」
「あぁ、だから言ったろう。嘘はついていないようだねと」
俺が嘘ついてたらどうなってたんだ……?
「どうする事もないよ。ただ娘には今後一切近付けなかったがね」
エスパーかよ口に出してねぇはずなんだが。
「ふふっ。生まれが生まれだからな人を読む眼は養われている。その副産物で君みたいな子供の考えることは何となく分かるよ」
「なら率直に言いますね。何故わざわざ私をここで治療したのですか?」
1番気になっていたことだ。普通ならばどんなお金持ちでもいきなり倒れた人がいれば救急車を呼び病院に行くものだ。
「別にそれには意図はないよ。夏奈が君に恩を売っとけばこれからも会いやすくなるから療養ここでしてあげようよ!ってわがままを言ってきてね。まぁそれくらいならと」
恩を売っとくって……さすがは名家の娘って所かな。ってか、俺に恩を売ってあっても何か変わるのか?
「何故か分かっていないようだね。まぁそれは君たちがこれからやることだ。私が言うべきことじゃない。で、私が話したかった本題に入ろう」
来たか本題が。口止めとかされそうだ。そりゃ娘さんの裸を見たのは悪いかもしれないけど怖いこととか痛いことだけはやめてくれよ……。
「ははっ。何か見当違いのことを考えてそうだね。別に君にとって嫌なことやキツい事ではないと思うぞ。初詣の後から夏奈は男が近付くとトラウマが蘇ってくるらしい。それはしょうがないのだがこれからずっとそのまま放置する訳には行かない。そこでだ。君のことを信用しているのか君のことは怖がらないらしい。なので君を雇おうと思う。護衛職として娘と一緒にいてくれないかね」
え?護衛職……?こんなひ弱なオタクにそんなことさせちゃうんですか?
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