18時間の、キャストガンタンの動向。

 9時~15時の6時間、翔は本業であるデイトレードで、コツコツと利益を確保している間に、ガンタンとキャスの世界では3倍、つまり18時間の時間が流れていた。


 ──「こんな絵、本当に売れるのかしら?」

 ……ガンタンに合うまでの道すがら、キャスはずっとそれを考えていた。ま、確かに一生懸命描いた絵ではあるし、一応の思い入れはある。でも、かといって売れるかどうかは別問題だし。


 この前、翔にも話していたけれど、そもそも私たちの種族は絵が上手だ。幻想的な絵から、写実的なほぼ実写、いや現実よりもむしろ高精細という絵画まで幅広く描ける絵師たちがいる。しかも本業でやっている訳ではなく、別の仕事をしながら。だから、もしも専業でやったとしたら、もっとたくさんの絵が大量生産することだって可能だ。あ、絵に対して“生産”は表現が違うか…。創作かな。ま、なんにしても、貴族層に私たちの何かを“売る”なんて発想、ぶっとんでる!


 ──「さてさて。買い手からの連絡は来るかねえ」

 ……ガンタンは待ちながら、それを思っていた。仲間内には、“面白い人物を見つけた”と、既にシェアをしている。仲間たちは、常に目新しいものを探している連中ばかり。だから、エルフの絵に興味を示すものもいるのでは無いだろうか。


 効率化が進んだこの街の住民たちの労働時間は極めて少ない。1時間程度の者も多い。だから、娯楽に飢えている。


 読書や映画を楽しむ者も多いが、AIが最適化したストーリーを書き、演出もAIが人々の感性に順応したものを製作するため、「時間を無駄に感じる」ような作品はほとんどない。しかし、人々の思惑を超えるような作品も、ほぼ皆無の状態になっている。


 体を動かすスポーツに勤しむ者も多い。ただ、こちらも将棋の定石のように「こうすれば、こうする」という決まった戦略通りに進めるため、昔のスポーツのような“意外性”を感じることはほぼ無い。実力通りの結果に帰納する。


 ギャンブルも一応はあるか、こちらも確率論、蓋然性合理主義が支配してるため、純粋に楽しむと言うよりは、理論的で理知的な面白さを追求するゲームになっている。そもそも、お金が溢れているような状態なのだから、博打における“ヒリヒリ感”のようなものは、とっくの昔に終わっている事象なのだ。

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