第二章
戦闘開始
「これより我軍は、特攻をかける。我々の屍が、国の未来を切り開くことに繋がるなら、これ以上の名誉はない。私はそう思っているが、無理をする必要は一切ない。去るものに対して、“逃げた”などということは無い。この状況であれば、逃げ出すほうが正しいし、正義である。私の想いとしては、むしろ去ってほしい。国に帰れば、そなたの武力で侵略を防ぐこともできよう。愛すべきものを救うこともできるだろう。しかし、ここでの特攻で生き残る可能性は極めて低い。老いぼれに付き合うことはない」
しかし、誰も立ち去るものは無かった。むしろ、目をランランと輝かせている。大山は自らを“老いぼれ”と称したが、この軍勢、全員が老人だった。“老人部隊”は、幾度の戦で生き残ってきたもの達ばかりで構成されている。老いてはいるものの、全員が武力に長けているのだ。
「どうやら、去る者はいないようですな、大将。我々の最後の舞台が、国を護り、次の世代を救うことにつながるのであれば、みんな命を捧げましょうぞ。最期のお務め、果たさせていただきたい」
長年、軍師として大山を補佐してきた
ただ。
実のところ、老兵士たち全員が花押の考えを見抜いていた。花押も解っていたし、老兵士たちも理解していた。丁々発止の命のやりとりをしてきた漢たちである。言葉よりも通じる物があるのだ。
老人たち100名の、最期の覚悟を大山は知り、穏やかにかつ力強く言った。
「全軍、突撃!」
大山がこう告げると、100名の老兵士たちは、一糸乱れず、敵軍に特攻をかけた。
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