死人たちの戦闘。
突撃は高速で、敵中に突っ込む戦術だ。巌は先陣を切り、馬を駆る。負けてはなるものかと花押以下、配下の者たちも突っ込んでいく。まずは、敵の先陣に切り込み、撫で斬りに。もう型も何もなく、ただ突撃するのみだが、先陣が崩れたことで、敵内に混乱が生じた。
「我軍が、圧倒的に優位だったはずでは?」。一般の兵士たちに疑問が生じると、組織力は低下していく。大兵団だったが故に、侮っていた相手の思わぬ攻撃に、敵軍に混乱が広がっていったのだ。それを見た敵軍の将校が乗り出す。いくら口で命じても混乱が収まらない場合は、実力でねじ伏せ、それを兵士たちに見せつけることで鼓舞し、混乱を収める心づもりなのだ。
“なに、所詮老いぼれたちの最後の悪あがきにしか過ぎんわい”と、一応は名も有り、それなりの軍功も上げている将校だったが、敵が悪かった。何より侮っていた。一般の兵士たちよりも後ろに陣取っていた将校は、兵士たちを素通りしながら、突っ込んできた敵軍と相まみえることになる。その、予定だった。しかし、敵軍の動きは将校の想像を遥かに超えていた。まだまだ味方だと思っていた陣は、既に敵に支配されていたのだ。
すべてを捨てた老人たちは、既に死人の境地であった。それであるがゆえに、百戦錬磨の戦いを生き抜いてきた実績や技量がさらに跳ね上がっていたのだ。それもう、人の動きでは無かった。
「鬼神か?……」将校は目の前で広がる光景に、思わず自身の目を疑った。瞬間、首に熱い感触が走る。「何だ…これは…」落馬し、目の前で次々と自軍の兵士たちが死んでいく。圧倒的に兵士の数で勝っていたのではないのか?
将校が倒れたことで、戦場の混乱は“大混乱”へと変貌した。
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