生活に不要な「芸術品」の価値は?
ガンタンからのコールに、翔はすぐに出た。通話方法としては、 視界の左下に相手の動画が出るやり方と、ホログラムのように立体的に相手が出てくる方法の2種類がある。翔はホログラムを選択し、話を始めた。
「絵画に、興味は無いかい?とても美しいんだ。ちょっと見てくれ」
ホログラムでキャスの書いた絵を映して、ガンタンに伝える。音だけではなく、視界も共有できるのは、ホログラムの利点だと言えるだろう。
「なるほど。絵画ねえ。骨董品的な扱いだなあ、こっちでは。特に芸術品としての絵画というのは生活に不可欠なものでもないので、顧みられなかったからなあ。とはいえ、みんなが芸術品に全く興味がないということではないとは思う。芸術というのは、生活には不要かも知れないが、人間の本質的な欲望にフィットするものだろうし」ガンタンは言う。
「だろう?人間を“人間たらしめる”ものなんじゃないか、芸術品の美しさというのは」翔は言葉を返した。
「確かにこれまで需要の無かった領域だな。ニーズが無かったということは、もしかすると市場の想定を超越した人気を得るかも知れないな。ちょっと、友人に当たってみるよ 。この前、“翔という、面白い奴に出会った”という話を、私と同じような考え方を持っている仲間達にシェアしていたんだ。その“面白いやつ”が推奨してくるモノだと言えば、興味を持つ人もいるかも知れない。良かったら、こっちに来れるかい?私も、もう一度話をしたいと思っていたし」
「それは助かる。ただ、私はもうちょっとしたら、本業の時間が始まるので、その準備をしなきゃならないんだ。だから、話はキャスと進めてほしい」
「ああ、そうか。そろそろマーケットが開く時間だからなあ。了解した。あのクレバーなお嬢ちゃんなら、こっちも大歓迎だ」
「そうなんだ。こっちの時間は向こうの時間の3倍の加速がかかっているから、ゆっくりしていたのだけれど、もうそろそろ時間だ」
翔はそう言いながら、中指を回して視界にコマンドを表示する。表示されたパネルには、こっちの時間と、翔のいた日本時間の2つが出てている。日本時間では、朝の8時になっていた。日本の東証が開いているのが、朝の9時~15時まで。そろそろ準備をしなければならない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます