ガンタンの想い【2】
声をかけた瞬間、アイツはちょっと食い気味にツッコんできた。オイオイ笑、警戒心とやらは無いのかい?普通に考えて、急に声をかけられたら、まずは不信感をあらわにするもんだろうに。ましてや、こっちが振っといてなんだが、大ボケに速攻ツッミする奴なんて会ったことが無い!
アイツの見た目は、ひょろりとした長身。若くて、学生にしか見えないが、おそらく童顔だからだろうと私はふんだ。実際は20代後半といったところだろう。私の話に聞き入りつつも、亜人を庇うような立ち位置は崩さない。気に入った。
「この世界はどうなってるんだい?特に亜人に対する差別のようなものがあるようだけど。キャスには聞きづらいから、あんたから聞きたい」
と、翔と名乗ったアイツは、単刀直入に聞いてくる。気軽に対応してくるだけじゃなく、いきなり質問をぶつけてくるやつも珍しい。一緒にいるエルフの娘はキャスという名前なのか。私のタイプではないが、ボーイッシュで可愛い顔をしている。
「それは、旧亜人保護法のせいだ。基本的に、“ 統べりし者”、“目覚めし者”、“愚かなるマジョリティ”の3層は別々の生活を送っている。ただし、全く隔絶しているわけではないから、そちらの世界で言う“法律”というのが一応は定められているんだ。
そこで立案されたのが、“亜人は一般の人々より立場が低い。だから人間は配慮し、時には保護しなければならない”という旧亜人保護法。その法律を逆手にとり、愚かなるマジョリティ”の輩は、亜人を保護する──という理屈のもと、安い賃金でこき使う名目が立つようになったんだ。通常であれば、専門性の高い高度なスキルや知識を持った人材は、高い賃金で扱われる。しかし、“いかに賃金を抑制して、利益を最大化するか”というのが、輩の考え方なんだ」
「なるほど。だからキャスは高度人材なのに、安く買い叩かれていたわけか…」
流石、理解が早い。それに、私の話し方や内容で、翔が私自身の値踏みをしているだろうことも伺えた。それを嫌がる連中もいるだろうが、私には心地よかった。気の合いそうな頭の良い奴との会話は、心が躍動するものだ。
「そうそう。保護法という法律の性格上、亜人が奴隷状態の職場から逃げ出し、自分たちの村に帰り着いた場合は手出しはできない。逃げおおせたということは、保護対象ではないからな。そこで、逃げられないように黒装束の連中を雇ったりしている。逃げ出している途中で捕まえれば、“保護対象中”という言い逃れができるからだ」と、私は付け加えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます