愛らしいエルフの少女との出会い。
格闘技のように掴みかかってきた男の手を、手の甲でいなす。向かってくる男の顎に、自然と掌底をカウンターで当てた。食らった男は、再び倒れ、しばし起き上がってこない。アッパーカットを入れたようなものだ。腰からダウンしている。
それを見た他の男達は、一瞬ひるむも、次々に殴りかかってきた。──怒りにまかせて冷静さを欠いてるなと、翔は冷静に状況を把握しつつ、体全体を軽く回転させながら、攻撃をしてくる男たちに掌底と肘打ちを当てていく。
向かってきた体躯の良い4名の男たちは、ダウンした。戦闘に参加していない背の低い男も、戸惑っている。体躯の良い男たちは、圧倒的な戦力差を見せつけられ、戦意を喪失しているかに見えた。
喪失後にやってくるのは、「恐れ」だ。特に暴力に訴える者ほど、直接的な力の行使に弱い。だから“覚えてやがれ”みたいな捨て台詞を発することは、実際はほとんどないものなのである。
むしろ、うわべで薄ら笑いを浮かべ、逃げることを考える。バカだからだ。バカはバカなりに追撃を警戒し、徐々に後ずさりつつ、翔と距離を取る。逃げられる距離までくると、一目散に走り出した。
翔は、自身の運動能力についても、「こういう設定なんだな…」と、一人で納得していた。ケンカ一つしたことが無いにもかからず、勝手に体が動いたからだ。普段の運動能力そのものは低くは無いが、戦闘とは無縁の生活だ。通常なら、体がすぐに反応するなんてことはない。
VR内での記憶や体の動きといった、“設定”に翔がフムフムと納得していた時、背中に回り込んだ少女が安堵の表情を浮かべ、翔に話しかける。少女の後ろでは、ホロ馬車が走っており、この仮想空間の“時代”が、RPGのような世界観であることを教えてくれる。
「ありがとう。助かった!」
少女はちょこんと頭を下げて、礼を言う。その仕草も、愛くるしい!
「私はキャサリング・リング。“キャス”って呼んで。ところであなた、急に道の真ん中に、現れたけど、何の人?FX・株式投資・仮想通貨・オプション取引…なんか、デイトレーダーっぽいけど。」
──牧歌的なRPGの世界観、中世的な時代背景なのに、いきなりエルフのキャスの口から出てきた“デイトレーダー”というキーワード。翔は、その高低差にちょっと頭がクラっときた。しかも、投資にやけに詳しそうだし!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます