妙な貴族【2】

 貴族は話を続け、名乗る前にまあまあ大きめのをとって話してきた。。

「…私の名は、ダブルモンク・テンプル、まあガンタンとでも呼んでくれ」

 貴族は的な、真面目くさった顔をしている。。ダブルモンク《和尚が2人》で、お正月。で、元旦ってか?なかなか思い切ったボケをかましてくる貴族だ。なんだ?年初出しの原稿だからって、そんなことが許されると思ってるのか?


「貴族って、みんなこんな風なのかい?」と目でキャスに聞くと、大きめに首を振っている。どうやら、貴族の中でも、風変わりなタイプではあるようだ。

 まあ、などなど、ツッコミどころは満載ではあったが、翔はこういうタイプはむしろ好ましい。少なくとものとり方は悪くなかったし。


「とりあえず立ち話もなんだし、コーヒーでも飲みながら話をしないかい?君とエルフの分くらい奢るからさ」


 いやに馴れなれしい貴族ではあるが、なんだか翔は既にこのガンタンに興味を持っていた。喫茶店に入ると、ロボットが注文を取りにきた。


 ガンタンが「コーヒー3つ」と、注文する。翔が値段を聞くと、「150クレジット」とガンタンは答えた。やっぱり、だいたい10分に1の物価という認識で合ってるようだった。


 ロボットは運んできた3つのコーヒーを、器用に3人の机の前に並べる。いい匂いだ。「じゃあ、遠慮なくいただくね」と翔とキャスはお礼をいいつつ、コーヒーを啜る。なんだこれ?めちゃくちゃうまいじゃないか!


「ところで君は向こうで、以前何の仕事をしていたのかね?私は企業の不祥事を追求するジャーナリストだ。そう、社会正義を貫くためにね」

 そう、豪語する。なんだ、ただの前職の同業者じゃないか!と翔は感じた。そりゃ、しょっぱなから向こうはヤンチャ目な距離の詰め方をするし、こっちも妙に気が合いそうだと感じるはずだ。


 そして、ガンタンは言葉尻に“ただの正義ぶってるヤツじゃない”というニュアンスを匂わせていた。翔にしかわからない程度の、微かな香りを。


「ようは、空売り専門の媒体ってことだろ?」翔は単刀直入に言う。

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