第17話 【特別編3】関節キス


N市の玄関口で県の中心を流れる大河を挟んで向こう岸とを繋ぐ石造りの大橋がある。

それを渡れば、古くからは栄えていた古都町へと入る。


一昔前は、多くの観光客に地元住民で、賑わっていた街並みも、時と共にさびれていき、新しく展開する店は、ことごとく、集客に恵まれずに不況を強いられ、古くからの老舗喫茶店も、軒並み長い歴史に幕を閉じ、閉店を余儀なくされていく。

そこにある県内で有名な神社に唯依と南先輩と一緒に、恵達と合流して参拝する為にやしろを目指して歩く。


「おっ!唯依、甘酒を売っているぞ!」神社の中を、をしばらく、人混みをかき分けて歩いて行く甘酒売り場を発見して、唯依に声をかける。



「あっ、わたしおしるこがいい!」唯依は、生粋の甘党で甘いものに目がなく、甘い声音でねだってくる。



「わかった、一緒に買いに行こう!」と

藤也は、唯依の手を引いていく。


売店のお姉さんから藤也達は、甘酒とおしるこを買う。



「はぁ~。甘ーい!あったまるねー。」


「そうだな。冷えた体が暖るな」


「ええ。甘酒はアルコールが入っていないのに気分を高揚してしまうわね。」

秋雫あきな先輩は、呼吸を上気させて言う。


「先輩が言うとつやっぽい感じがしてなんだかエロいですね。」


「やめてくれない藤也君。キモオタの

ハスハス妄想の餌食にしないで。」


「汚らわしい豚野郎ね。」


やめて、勝手に脳内で陵辱のはずかしめを受けないで!


まさか、やってもないことで通報したりしないよね?!

新年早々、冤罪えんざいで変質者として捕まるなんて嫌だ!


「藤也くんの変態!ドスケベエロ河童。」

そう言い、唯依は、愛想を尽かしてコクリコクリとちびちびと美味しそうにおしるこを飲む。



どちらかとゆうと甘いのは、イケるほうなのだけど、初詣とゆう場の雰囲気で甘酒を選んでしまったが、隣で、こんなに美味しそうにおしるこを飲まれたら、その味を自分も味わいたい気持になってくる。


(一口くれといったら貰えるだろうか)

そう自然と唯依の口元を凝視してしまう。藤也の視線に気付いたのか唯依は「どうしたの?」とたずねてくる。



「いや、あまりに美味しそうだったから一口欲しいなーと思ってさ。ダメか?」



「そんな、女の子が口にした飲み物を欲しがるなんてっ!」



「へ、変態!おしるこの味と一緒に女の子のエキスを堪能するつもりなんでしょ!」



「気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!」



「そ、そんなー俺はそんな、やましい気持なんてこれぽっちも抱いていないのに」



「てゆーか、女の子のエキスとか、そっちの言動の方がよっぽどいやらしいよ!」




「そ、そんな!わたしはエッチじゃないもん!」


「藤也くん流石に女の子のエキスを堪能したいほどHさんだとは思わなかったわ。」

「あっ、因みに、『H』とゆうのは変態の頭文字だからね、藤也君にお似合いね」


「いけない、新年早々からトリビアを披露してしまったわ。」


「へぇー。って、俺は変態じゃないですよ!」

新年早々、変態呼ばわりとは心外だな!


「いくらなんでもあなたのことを擁護ようごできないから今すぐ神社の警備員さんに身柄を渡してもいいかしら?」




「わかったよ。そこまで嫌がるなら要らないよ。」

俺も、『一口ちょうだい』しただけ変質者となって捕まりたくないし。正月から冷たい留置所で正月休みを終えたくないし。ここで我慢するだけで避けられる事態なら、いくらでも我慢するよ。



「もー!そんなダメだなんて言ってないのに。わたしが器の小さな人みたいじゃない。」



「藤也くんが変態さんなのは今に始まったことじゃないし、特別に分けてあげる。」



「そ、そうか。それじゃあ遠慮ないただくよ。」


俺が、変態であることを前提に仕方なく分けてくれるのは複雑な心境だけど。




「う、うん。美味い!!」



餡子の甘ったるい風味が口の中に広がり、口の中が甘々になる。

これが、唯依が口を付けたおしるこの味か。


「どう、藤也君。柚木さんが飲んだおしるこの味は美味しい?」


「ごほっごほっごほっ!ちょっと先輩!?」

どうか、心の中を読まないで欲しい。

唯依に気付かれたら引かれてしまうよ。



「じゃあ、わたしにも藤也くんの甘酒ちょうだい。」



「お、おう。いいぞ!」


「それじゃあ、頂きます。」


コクリと甘酒を口にした唯依は、何故か固まる。


「でも、これって。間接...」と結依は口元を手で覆い、微かな聞き取れないような声で呟く。


唯依の色素が薄い顔の頬が火照ほてったように朱色に染まっていく。


「おい、唯依。お前、まさか酔っているのか?!」


「ち...違う!」



そして、藤也は妙に恥ずかしがっている唯依の真意に思い至る。



「あっ、しまった。これって、間接、ふぉにゃらら」



「ダメ!言わないで!」と唯依は顔をリンゴのように真っ赤にして唯依と藤也はお互いに恥ずかしがるのだった。



               












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