第6話『オフ会』
『お隣ヒキニート』
ー土曜日。午前10時ー
オタクコミニュティオフ会会場。万代の街中のビルに隣接する純喫茶店内。
木目調のシックな内装にジャズミュージックの流れる店内はスタパなどの大手チェーン店とは違いお客の数はまばら。
そんな店内に3人の美少女と男はオレ一人。なんとも気まずい雰囲気でいる。
4人掛けのテーブル席へと着いた俺たちは早速オフ会を始める。
オタクコミュニティ【あにめまんがファンクラブ】
在籍する3人のオタク。オレも入れて4人か。
「初めまして、サークル管理人の
艶やかな黒髪のロングヘアーに真紅の瞳で清楚の中に凛々しさを感じさせる印象。
「このサークルは、SNSのコミュニティで、自分の趣味を共有するサークルなのよ」
「同じような人達を募って立ち上げた創作のコミニュティです。」
白いシャツに紫色のロングスカ
ートに身を包んだ彼女がサークルオフ会の開始の挨拶をする。
南先輩がサークルの管理人だったのか。今日は、髪を下ろしてるんですね。これはけしからん。何がけしからんって?
シンプルな装いなはずなのに
誇張された胸でスタイル抜群が相まってちっともシンプルじゃない。むしろ、グレイトだぜ!
各々、自己紹介していく。
「改めまして、AG文庫で小説を書いている。3ーAの
「同じく新人ラノベ作家で雷撃文庫でTL小説を書いている、1ーCの
彼女のライトブラウンのミディアムヘアーは、多くの男性が好感を抱くであろう。
焦げ茶の瞳も相まって可愛い。
その装いは、黄色いボトムス黒のショートパンツで可愛い系の装いをしている。女の子らしくてとても可愛いらしい。
「どうも、同人漫画を描いている2-Bの
赤と黒を基調としたボーイッシュな装いがフットークの軽さを感じさせる。
赤毛のボブショートヘアーに灼眼の瞳が良く似合う美少女。
じゃなくて、あれ?!下條だよな?!なんでコイツがここにいるんだ。!?と心を取り乱してしまう。
「それで、あなたが、結月ゆいさん?」
「男の子だったのね。」
と南先輩から聞かれてオレは、「違います。オレは藤也瀬翔。結月ゆいさんの代行で来ました。」
「本物の結月さんはここにいます。」と柚木から借りてきたタブレットで、MINE《マイン》のテレビ電話機能で柚木と繋げる。
「柚木、今サークルの皆と顔合わせしているところだ。」
「初めまして、わたしが結月ゆいです。」
「訳あってリモートでの参加です。」
ディスプレイ越しに柚木が挨拶する。
柚木は何時ものパジャマ姿ではなく
ピンクと白が基調のワンピースを着て
タブレット端末の画面越しに登場する。
こうゆう時はよそ行きの服なんだな。まあ、当たり前と言えば当たり前か。
「じゃあ、ここからは各自の作品紹介をしていきましょう。」南先輩は、先陣を切って話し始める。
「わたしは男の子を楽しませる小説を書いているわ。」
「ジャンルは、言わなくても分かるわよね。」
南先輩は、妖艶な艶やかな声音で言ってくる。
はい、だいたい想像尽きました。
「わたしは、胸をキュンキュンさせるラブコメ小説を書いています。わたしのことはめぐみんと呼び捨てにしてくだしゃい」」
冬乃さんが挨拶する。か、可愛い。なんて女の子らしい子なんだ。あざとく言ってくる。
「あっ噛んじゃった。テヘベっ!」
「あいたた。舌噛んだー!」
あざ...いや、わざとじゃない!
「わたしは、同人漫画を描いています。すいません、ジャンルは伏せて頂きます。」
「が、そうですね、一言で言うなら。女子の妄想を掻き立てる漫画を描いてています。ドゥフ」
下條が意味深な挨拶をする。この場でも言えないジャンルってなんだよ!逆に気になるわ。
「とゆうか、南先輩の小説って
性的な表現で男の子を誘惑しているところが不純です!」
「あら、冬乃さん。あなたの小説って胸がキュンキュンとか、頭の中がお花畑なんじゃない。」
と嘲笑混じりに負けじと言い返してくる。
「なっ、なんですってー!」
「この、腐れビッチ!」
「ちょっと!先輩達、辞めてください!」
この2人は作風からして正反対で
二人とも、まるで水と油の存在みたいだ。
「恵ちゃんも言葉が過ぎるよ。」
「藤也くんあなたはどちらの味方なのかしらね。」
「あーもー!」
「あ、あんた達ね…」
と呆れ返る下條だった。
「それじゃあ。皆、紹介が終わりましたね。ではわたしから気にになっていたことを一つ。」注文していた紅茶を一口飲みそう南先輩は質問をしてくる。
「ところで、結月さんて、あのイラストレーター結月ゆいさん?」
と南先輩は訊いてくる。
「えー!あの人気イラストレーターの結月ゆいさんですかー!」と雪乃さんも、ロールケーキがフォークからポロッと落とし、驚きを隠せないでいる。
「確か、ソシャゲのキャライラストからラノベの表紙イラストなど幅広いジャンルで活動する」
「あなたがあの結月ゆいさんでしたか!」
下條は、アイスコーヒーのグラスを倒しそうになりやや興奮気味に言ってくる。
柚木は「藤也くんなんとか誤魔化して」タブレット越しに音声が聞こえてくる。
どうやら自分が結月ゆいとバレるのが嫌なようだ。どうして柚木が嫌がるかは分からないが
ここは誤魔化しておいたほうがいいかな。
「え-。ただの同姓同名の別人なんじゃ」
「まぁそれならそうといいとして、柚木さん、あなたとは初めましてじゃないわよね。」
「そうなのか?柚木。」
「あれは、一年前、わたしが2年だった頃の1年生との合同総合学習のこと。」
「A組同士の総合学習で柚木さんはその時はA組だったわよね?」
「今でもそうかしら?」
「あの頃のあなたの才能はそれは、凄いものだったけど、でどうしてそうな
っちゃったのかしら?」
「っ ......、うぅ」柚木が悲痛の声を漏らす。
「柚木先輩がA組・・・」恵が生唾を飲み緊張が走る。
まさか、柚木が特待生だったなんて。
「南先輩!今はそんなことどうでもいいでしょ!」
柚木がどうして引き籠もりになったとか気にならないと言ったら嘘になる。
けど、嫌がっている柚木の前で話題にするのはやめて貰いたい。
「そうね、今はどうでもいい話だったわ。ごめんなさい。」
「初めましてじゃないと言えばわたしと藤也くんも初対面じゃないものね。」
「覚えてる?一年前わたしが新人作家でデビュー仕立てだった頃のこと。」
「藤也君はデビュー作の『不純な妄想が邪魔して碧ちゃんは恋ができない!』のサイン会に来てくれたわよね。」
「はい。」
たしかあれは冬のことだった。
「その時にわたしに言ってくれたこと覚えてる?」
「たしか、あれは先輩が、自分の作品の方向性で悩んでいた時期のことでしたっけ?」
「そうね。あの頃のわたしは未熟だったわ。」
「でも、そんなわたしに藤也くんが言ってくれたのよね。」
「はは、なんでしたっけ?」
忘れたわけじゃないけど、この場で言うのは恥ずかしい。だからお茶を濁す。
だってあの言葉はヤバイから。
「たしか、こんな感じのことを言ってなかったかしら。」
「『ラッキースケベこそ、先輩の強みだ!自信を持って下さい。』って」
「わー!!やめて下さいよ!皆が居る前で」
「へー、そんなこと言ったんですか先輩。」
やめてくれ恵ちゃん。その視線は痛い。
オレは恵ちゃんからジト目でで見られ、萎縮する。
「ふーん。そんなこと言ったんだ。」
「好きなんだ、ラッキースケベ」
「この、変態。」
柚木の冷淡な言葉のほうが余計怖いよ。でも、その声音で罵られたその瞬間。
粘着質のように鼓膜を揺らして、ゾクッとしたんだ。
******
それからのオフ会は皆からいじり倒されて気付いたらオレの扱いは変態を貶むものへと変わっていった。
それでも、女の子に囲まれた集まりは楽しかった。皆はそれぞれ目的を持ってラノベや漫画を描いている。オレにとってのラノベを書く目的ってなんだろう?
書籍化はラノベを書く上での大前提だと思うし。小説における付加価値ってなんだろう?
それと同時に頭にチラつくのは柚木の過去の経緯が気になる。でどうして、今
のような引き籠もりになってしまったんだろう。と考えてしまう。
オレは、柚木とどうなりたいんだろう。考えても埒があかない。 焦る気持ちを胸に抱きオフ会が解散となって彼女の元へと向かうのだった。
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