第20話 【遊園地編2】遊園地



休日の日曜日、日は過ぎ去り俺達達はユートピアワールドに訪れていた。


天気は気持ちいい快晴で遊園地日和だ。


「わーい!遊園地だー!」恵は、太もも丈の黄色いチュニックをはためかせてパタパタとはしゃいで走り回る。

「おい!走るな。転んだら危ないぞ。」


「むー。藤也先輩はわたしのお父さんですか?」


「やめてくれ。俺はそんなに歳じゃない。」



「お父さん、わたしメリーゴーランドに乗りたいなー。」


恵は上目遣いで言ってくる。


「お、お前な!」


ずるいぞ!そんな風にねだられたら断れない。と言うかあざ...いや、わざとじゃない!


「冬乃さん。あなたはまだまだお子様ね。でも、落ちたとしても大した怪我もしなさそうだし大丈夫そうね。」


「せ、先輩......」

純白のワンピースに日除けつばの広い麦わら帽子を被り清楚感が抜群だ。

まさにオタクが理想とする女の子像だ。


きっと、そのワンピースの下は、きっと白い…

いや、妄想はこれくらいにしておこう。



次に恵が、ジェットコースターに乗りたいと言い出す。すると秋雫先輩は、顔を青ざめて

「やめておいた方がいいわよ。万が一走行中に安全装置が壊れてコース外に投げ出されたら怪我だけじゃ済まないわよ。こんなところで死にたくないわ」「途中でコースターがコース外に脱線するかもしれないし、危ないわよ!」搭乗を拒否する。



「そんなまさか!?」

どんだけ最悪の事態を想定しているんだこの人は。


「とにかく私は、ここでベンチに座って待っているわ。くれぐれも皆も命には気を付けてね。健闘を祈るわ。」


そんな。まさか死地に向かう兵隊に告げる言葉みたいだな。


「大丈夫ですよ。先輩こそ、退屈でしょうけど待っていてくださいね。」


「その心配はないわ。文庫本を読んで待っているから、私に気にしないで存分に楽しんできてちょうだい。」と秋雫先輩は、肩掛けの洒落た肩掛け鞄からブックカバーを掛けられた文庫取り出して開く。


「は、はぁ...」


いったいこの人は遊園地になにをしに来たのだろう?



「あの、秋雫先輩を一人で置いていくのは、いろいろと心配なのでわたしも一緒に残ります」と恵ちゃんが申し出る。


「え?!いいのか?」


せっかく涼風とコースターで隣同士になって『きゃー怖ーい!』って合法的に甘えられるまたとないチャンスなのに!



「じゃあ、行こうか藤也、涼風!」


「お、おう!わかった。」


だからなんで下條はこんなにノリ気なんだ?遊園地大好きな子供かよ。

下條の半袖Tシャツにハーフパンツ姿から美少年に見える。


その、ウキウキした後ろ姿を見送りながら、だから子供かよ!心の中で突っ込む。



「じゃあ、あんた達は男同士で座ってね。わたしはこの知らないおじさんと一緒に乗りますから」


「えー!そんな!?女の子をそんな知らないおじさんと一緒になんて乗らせられないよ。」


「涼風、気持は嬉しいけど、あんた達と一緒に乗ってわたしの醜態しゅうたいをなんて見せられないのですよ」


「でも、ありがとう。気持だけ受け取っておきます!」


「大丈夫だよ、変なことはしないから。

んふーっんふーっ」



「そう...わかった。おじさん、鼻息荒いけど大丈夫かい?」



「大丈夫、このくらいへっちゃらよ!」


「たくましいな、おい!変なことされないように気を付けろよ!」


とゆうか醜態って、絶叫マシーンが苦手なのか?あんなにノリノリだったのに。


「ハハ、いざとなったらこのおじさんをコースターから落とすから」


「おい。それはやめとけ!あと、笑顔で怖いこと言うな。」


名探偵コ〇ンの『ジェットコースター殺人事件』が起こってしまうぞ!


そして、コースターが動き出しレールの急勾配きゅうこうばいを上がっていき、次第に

高度が上がっていきて緊張感が増していく。そこからの急転直下の急降下。コースターは右往左往しながら、俺たちの体を揺らしていく。


まるで、胃の中をシャッフルされているようで気持ち悪い。




「ギィイヤー!怖い!怖い!藤也、手を握ってもいいかなー!」


「え!?勝手にしろー!うわー!」

おいおい。なんだこのシチュエーションは!なんにしろ、もし涼風が恵ちゃんと一緒に乗らならなくて良かったな。こんなヘタレな姿を見せられたら幻滅されてしまうとこだったぞ。


「フヒヒ。いい!高まるーヒャッハーー!」

「あの2人良い感じギャー」

絶叫しながら藤也の手をキツく握る涼風姿に萌える下條は「あの二人吊り橋効果でなにかに目覚めないかなー!うっわー!」と歓喜興奮しながら絶叫する。



「下條ー。大丈夫かー!」

ダメだ下條が、あまりの恐怖で壊れてしまったみたいだ。


    ***

 




ジェットコースターから降りてフラフラになりながら、色んな意味で強烈だったなと

クラクラする頭を抱えて秋雫先輩と恵の元へと戻ると先輩は居なく、恵が金髪のチャラい男に絡まれていた。


「恵ちゃん!?」


しまった。恵ちゃんが美人さんなのを忘れていた!この事態を想定出来なかった自分が憎い!彼女元へと向かおうとする涼風が、藤也を追い越し颯爽さっそうと恵の前へと現れる。


そこで、涼風は、「やあ、お待たせ待った?」


「あぁ?お前はこの子のなんだし。」


「俺は今、この子と話してるんだし」

「ぼ僕は......」

ここで彼氏でないと言ったらこの男は彼女になにをするか分からない。それなら僕が言うことは決まっているじゃないか!



「僕はこの子の彼氏だよ。人の彼女に手を出さないでくれるかな?」

と勇気を振り絞って言う。すると、ナンパ男は、「ちぇ!彼氏持ちだったのかよ。恥かいたし。」


「ねーちゃん、遊園地に来てまで一人でベンチに座ってるから、てっきりナンパ待ちで相手を探してるかと思ったし」

「マジごめんだし、悪かったし。」



「そんなこちらこそ、分かって貰えて良かったし。」


「あっ、変な語尾が移っちゃった。」


「大丈夫、恵ちゃん。怖くなかった?」


「はい、連れて行かれるんじゃないかと怖かったです。ほ、ほんとうにありがとう、ございました。」


「でも、涼風先輩が来てくれましたし。」


「覚えていますか、3年前に私が修学旅行の班からはぐれてしまったわたしを先輩が送り届けてくれたことを。」



「ああ、覚えているよ。班と合流するのは苦労したよね」


「探している途中でファミレスでご飯を食べた時に先輩はわたしに、アニメやラノベのこと自分の趣味を話してくれましたよね」



「話したね。初対面でいきなりオタク趣味を聞かせてしまって引いてしまったかな?」


「いえ、そんなことはないです。」



「先輩がわたしの知らないことを教えてくれて女の子の喜びを知ることができたんです」


「ラノベの話だよね?!」



「はい! 次に会った時に、先輩とラノベの話を語り合いたくて、それからとゆうもの

ラノベにすっかりハマってしまったんです。いつしか、自分でも小説を書いてみたいと思うようになって、いつの間にかプロになっていました。」


「す、スゴい才能だね。」


「いえ、わたしに才能なんて、ただ続けてきた結果「に過ぎません。秋雫先輩みたいに売れっ子作家とゆうわけでもないですし。」



「謙虚なんだね。そゆう姿勢はいいことだと思うよ。」



「とにかく、先輩がわたしに小説の世界に入るきっかけを与えてくれた大切な人なんです」



「あ、あの涼風先輩!実はわたし前からずっと先輩のことが......」



「恵ちゃん、お待たせ。ごめんね。待った?お花摘みが長くなってしまって」突然、現れた秋雫先輩によって恵の一世一代の告白がさえぎられてしまう。


「あれ?どうしたの恵ちゃん。そんな苦虫をかみ潰したような苦い顔をして」



「もしかしてお邪魔だったかしら?涼風君と2人っきりで、これってもしかして...」


秋雫先輩は、ハッと何かに気付き、察したらしく一言。「わ、わたしのことは気にしないで」


「どうぞ、イチャコラやってちょうだい。」



「もー!秋雫先輩なんて知りません!」と恵はそっぽを向くのだった。


                 












                






















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