第19話 【遊園地編1】お誘い


俺の住む、マンションの部屋のお隣には引きこもりの住人がいる。それは、同じクラスのクラスメイトで、ひょんなことから引きこもりの更生を頼まれることになった。出会いは最悪なもので危うく、変態と罵られて通報されそうになった。彼女は、私生活がずぼらで、おかずのおすそ分けから始まり、毎朝、お弁当を作ったりして、すこしづつ警戒を解いていった。その実態は実は、スゴいイラストレーターで、子供の頃に『大人になったら一緒に本を出そう』と将来の夢を誓い合った女の子だった。


そして、2人の仲を引き裂こうとする事件も起こった、唯依のお母さんがイタリアから来日して、唯依をイタリアに連れて帰ろうとしたんだ。俺は必死で抵抗した。その結果、

半年の間に、唯依を引きこもりから更生させるか、小説家として一定の成果を出して舞依さんに認めて貰わないとイタリアへ唯依を連れて行かれることになってしまった。



こうして、目標を達成する為、唯依との生活を守る為の戦いが始まった。


6月に入り、夏服に衣替えになった季節。放課後の部室で恵と二人きりのところ藤也は恵から


「藤也先輩って涼風先輩と仲良いですよね。ちょっと頼みがあるんですけどいいですか?」


「実は、涼風先輩との仲を取り持って欲しくて、わたしの恋のキューピットになってください」と頼まれる。「付き合いたいとかなんとかなんで、俺なんかに頼むんだ?」とたずねる。「涼風をデートに誘いたいのだけど、そこには厄介な問題があるんです」と恵は語る。「それは、恵は涼風に理想の女性のタイプを聞いたところ、先輩は、『陽キャラなギャルは御免だ。付き合うなら、オタク趣味に理解があって一緒にマンガやアニメを楽しめるオタク彼女がいい』と断言され断られてしまったこと。


この経緯を話し藤也に「先輩のことをダークブレイブマスターの二つ名と見込んで願いします。」と頼まれる。


と人懐っこい彼女は猫撫でな声であざとく言ってくる。


「なんで、お前がその名前を知っている!?」と

恵を壁際に追い込み壁ドンして「いいか!このことは誰にも言うなよ。」と口止めをする。



「キャっ!びっくりしたもう!壁ドンってもっとときめくものかと思っていたのに、これじゃあ脅迫されてるみたいでなんだか怖いですね。先輩、悲鳴を上げますよ」


「ご、ごめん。」


壁ドン。それは、男が女の子を壁際に迫り壁をドンとしてドキドキのシチュエーションに持ち込む少女マンガなどでよく見られるアレだ。ただし、これをして効果を得られるのはイケメンに限られるのだ。なんだか思っていたより、この行為って暴力的だよな。

こんなの好きでもない男にやられたら恐怖でしかないな。


って今は、それどころじゃない!

「はぐらかさないでくれ。どうして俺のあの名を知っているんだ?」

「え?!わたしの教室の机に『ダークブレイブマスター 藤也瀬翔参上!』


って彫られてましたけど」とキョトン顔で言われる。藤也は、1年前の己の愚行を呪ってやりたくなる。



そこで、恵から、「中二病のことを黙っている代わりに涼風との仲を取り持ってください!」とデートのセッティングを頼まれる。


「ところで、なんで涼風なんだ?


やっぱり顔か?」

「てゆーかなんで俺が、恵ちゃんと涼風の恋仲を取り持たないといけないんだ。」

確かにあいつはイケメンだけど、その中身は......



「それは...涼風先輩と初めて出会ったのは、私が中学2年のときの修学旅行でのことで...」


「グループでの班行動の最中に皆と一人はぐれてさ迷っていたところに、偶然、千葉の某夢の国に遊びに来ていた涼風先輩と出会い、わたしを皆のところに届けてくれたんです。」




「そんなことがあったのかー」


「にしても涼風も1人で遊園地に行くなんてボッチの極みだな。」



俺だったら孤独にさいなまれてしまうぞ!


「違いますよ!友達と遊びに来ていたところを抜け出してくれたんです。先輩と一緒にしないでください!」



「そ、そんな!俺だって!」


まさか、一人で遊園地に遊びに行くなんて愚行周りは友達連れやカップルだらけ。

その中に男一人なんて寂しいことなんてしたことないんだからね!ほんとだよ?


「その時に話したんです。涼風先輩はアニメやラノベが好きでよく本を買って読んででいるって」


「わたしは、アニメとかライトノベルとか、その頃はよく分からなかったんですけどね」


「なんだ、お前非オタだったのか。」



「でも、もしこれから先に涼風先輩に会えたときにアニメやラノベの話で盛り上がりたいなと思ってそれから、あの人の好きなものを自分も好きになろうときめたんです。」


「そっか、共通の話題があると話しやすいもんな。」


「アニメやラノベを読んでいるうちに、すっかりハマってしまって、いつの間に

か自分でも書きたいと思うようになっていったんです。」



「だから涼風先輩はわたしに小説の世界に、夢持つきっかけを作ってくれた恩人なんです」



「涼風先輩と出会っていなかったら、今の自分はなかったんです。そう思うと特別な気持になってきていつの間にか好きになっていたんです。」



「わかったよ。恵ちゃんの気持は良くわかった。」


藤也は、そこまで聞き、厨二病の秘密を黙っていて貰う代わりに恵の頼みを引き受けるのだった。


                   ***                



翌日、早速、凉風邪とお近づきになる為にと、今週末の日曜日に、涼風を誘って遊園地に恵と3人で遊びに行く計画を放課後に、部室として利用している空き講義室で計画を立てる。その様子を見ていた下條が、ちょっかいを出してくる。


「なに?お出掛け野計画ですか?ねぇ、どこに行くの?」と下條が会話に割り込む。


実は、涼風を誘って恵と一緒に遊園地に行くことを打ち明ける。


下條は、「ふーん。涼風も行くのですか。あの、わたしも行ってもいい?」と下條は何故かウキウキして訊ねてくる。藤也は「別にいいけど。」と下條って遊園地好きだったんだと、そんなに楽しみにしてくれるなら断れないな。と快く、了承する。



「あら、遊びの計画?いいわね藤也君女の子に囲まれて休みを満喫するなんて」


「それじゃあ、お邪魔な私は自宅で大人しく読書でもしていようかしら。」


「厄介者はお邪魔よね。せいぜい高校生活思い出を青春の1ページとして刻んでくることね。」


「わたしは、高校最後の青春くらい創作活動の為に捨ててやるわ。」



「せ、先輩......」


気まずい、『それじゃあ俺たちは楽しんできます!」なんて言える空気じゃない。


「あ、あのもし良かったら秋雫先輩も一緒に行きませんか?」


「え!?ほんとぉ!いいの?コホン。し、しょうがないわね。貴重な執筆の時間を割いて一緒に付き合ってあげてもいいわよ」と先輩は仕方なくを強調して言ってくる。


「はい是非!みんなで行った方が楽しいですよ。」


それにしてもさっき、うっかり素の感情を出したよな。子供みたいになってあなた、そんなキャラじゃないでしょ。可愛いなおい!先輩にあんな一面があったなんて。


本当は行きたくて誘って欲しかったんですよね。素直じゃないなとクスリと笑い、と微笑ましくなる。


。このことは、秋雫先輩に言うと怒られてしまうだろうから心の内に留めておこう。


そして、秋雫先輩も仲間に加わってきていつの間にか5人で遊園地に遊びに行くことになった。


                  


           




























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