第18話 【特別編4】皆で参拝



ピロンとMINE《マイン》のメッセージ受信を告げる着信音が鳴る。





「おっ!下條からだ。恵と一緒に神社にに着いたってさ。」


「そうなんだ。どこで待ち合わせするの?」


「参拝客のあの列の中では、合流は難しいからその前に手を清めるから手水舎ちょうずやの前でいいんじゃないか?」


「うん、それがいいね。」


唯依も同意してくれたことで下條に集合場所の指定のメッセージを送る。


「よし、行くか。ほらよ」と唯依に手を差し出す。「地面は雪で滑るから掴まって。」


「あっ、ありがとう。」


唯依は、顔を赤らめ、おずおずと藤也の手を掴み歩き出す。



「むー。私には手を差し伸べてくれないの?柚木さんだけズルいわ。」


「そんな、俺の両手が塞がって歩きにくいですよ。」


「嘘ね。本当は私の手も取って『両手に花だぜ!ぐへへ。』と気持の悪い笑みをうかべるんだわ。」



「いや、誰ですか、そのキモイキャラは!!」


「ええ。残念ながら、あなたよ。」


「俺のイメージっていったい...」


そんなに気持ち悪くないし!両手に花は確かに嬉しいけど。





「そうすると周りから聞こえてくるの『アイツ新年から良い思いしやがって。リア充爆発しろ!』ってね。」


「いや、やっぱりいいです。新年早々、むごい言われ方されて邪険に見られたくないですし。」



「さ、冗談はこのくらいにして手を清めましょう。」先輩は三つ編みの黒髪を揺らして、ひしゃくを右手に持って水をんで左手にかけて手を清める反対の手も同様に左手にひしゃくを持ち替えて右手も清める。


藤也と唯依も南先輩に習って手を清める。



唯依は見た目は儚く可憐で和服を着ていることでその美貌がより際だって手を清める所作も思わず見入ってってしまう。



『おい、あの子可愛くないか?』『声かけたら一緒に参拝できるかな』


『俺は、お下げの子がいい。』 などと周りから唯依存と南先輩目当ての男達からの声が飛び交う。


「うぅ...やめて!こっちに来ないで!」



「大丈夫か?唯依?!」

唯依は悲痛な苦しい表情で不快感を露わにする。きっと、異性からの好奇な視線に耐えかねているんだろう。






「ちぇっ、なんだよ男がいたのかよ!」とそう吐き捨てて男達は、落胆して去って行く。



「藤也君にしてはナイスプレイね。」


「ああ言う、ゲスな男達の視線と言ったら鬱陶しいたらないわ。まさに、ゲスの極みね。」



「それともあなたも、そうかしら?」南先輩は悪戯っぽく笑う。



「ち、違います!」 俺は慌てて否定する。



「ああ!いたー藤也せんぱーい!」と人懐っこい甘え声のする方向を見ると恵ちゃんが、人混みの合間から思いっきり手を振っていた。



成黄色の着物に黒い帯を巻いていて色合いがとてもいい。


「やあ、恵ちゃん。その着物似合っているね。」


ミディアムヘアーのサイドを編み込んであって金色のかんざしが飾られていて着物姿と良く合っている。


「えーそんなー!り難うございます。そんなことありますけど。」



「新年、明けましておめでとうございます。新年から女の子を口説き落とすとは流石は藤也。」



「下條もその袴姿が様になってるよ。格好いいな。」


下條がが袴を着ると凜とした顔立ちが相まって男装をしているようで見栄えがる。



「もーそう言うことは柚木さんに言ってあげてよ。」と下條は顔を朱色に染めながら照れて言う。




「あら、他の女の子の着物は褒めるのに、私のことは褒めてくれないのね。」



「そんなことないですよ。先輩のパープルレッドの着物と赤い帯と相まってもスゴく似合っていて綺麗ですよ。」




「そう、ありがとう。でも、無理に思ってもないことを言わせてしまったわね。」



「本当は、『豚に真珠だな』と心の中で笑っているんでしょう?」


「え!?そんなことはないですって!」

藤也は、慌てて否定して誤解がないように思ってもないことを正そうとする。


「藤也先輩の最低クズ野郎。女の敵。」と隣で最低限聞こえる範囲の声で恵ちゃんがボソッと呟く。



「恵ちゃん、純粋なのは良いことだけど、簡単に信じ過ぎだ!」


と、彼女の誤解を解くまで大変だった。



参拝の順番が回ってきて、二礼二拍手一礼で神様に感謝を告げ、カランカランと大鈴を成らして祈願をする。


(これからも唯依と幸せな生活が(続きますように。)


参拝しながら唯依との出会いを思い返す。引きこもりの更生を塚本先生から頼まれてその出会いは最悪なものだった。


でも、彼女が心を開いてくれて良かった。まだ、学校生活を克服するという課題は残っているけど、皆で乗り越えていきたい。


そして、これからもずっと、唯依との幸せな生活が続きますように。そう願う。



隣で唯依が固く目を閉じて参拝している姿を横目に見る

(なにをお願いしているんだろう?)


「唯依は、何を願ったんだ?」とく。唯依は、照れくさそうなはにかんだ笑顔を見せ、「うーん。秘密かなー。」と柔和な感じで応える。



「藤也君、女の子のお願いをたずねるなんていやらしい男ね。」


こうべを垂れて己の邪心を神に懺悔ざんげなさい!」


うぅ...酷い。秋雫あきな先輩はなにを願ったのか気になるけど、訊くのは失礼に当たるんだよな


と口を噤む。




「因みに私の願いは、世界征服ね。私のラノベで下僕ファンを増やして世界を私色に染めてやるこだわ。」



「いや、普通に読者を増やして、メディアミックスしてアニメ化でいいじゃないですか!」




「ええい!弱小作家は黙ってなさい!せいぜい、打ち切りにならないように祈っておくことね。」



とそんな、南先輩に憎まれ口を言われながら初詣は過ぎていった。


神社での参拝が終わり、皆して、帰路につく。

集団で歩く、その後ろで、結依と2人、

隣同士で歩く。




「藤也くん。今年もよろしくね。」


「おう!こちらこそよろしくな!今年こそは人気作家の仲間入りを果たすぞ!」



「頑張ってね。応援してる。」



藤也くんには、恥ずかしくて言えなかったけどわたしの願い。そう、それは......



《藤也くんの夢が叶いますように。》と心の中で願ったのだった。















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