第2話『おすそ分け』

2話「おすそ分け」


昨日のファーストコンタクトから引き続き、柚木に登校を促しに行く藤也。


昨日のことがあるから、柚木を刺激をしないように心掛け、意を決して隣りの居室、208号部屋の柚木宅のインターホンをピンポーンと鳴らす。


「はぁ~い。今いきまぁ~す」

と気の抜けた返事の後で、少し遅れて扉が開かれる。柚木は、柔和な笑顔で出迎えた後に、相手がオレだと認識すると、ムスッと表情を変え、「また、来たの!?」邪険にする。


「やあ、おはよう柚木。」

「気持ちの良い清々しい朝だな!こんな朝はお天道様の下を歩きたくないか?」


本当はこんな歯の浮くような爽やかな朝の挨拶をする。ほんとうは、そんなキャラではないのだけど、

彼女のご機嫌取りに言ってみたりする。

「だから、一緒に学校に行かないか?」


「なんですか?何度、来ようとも学校へは行かないよ!」

そう、警戒心を露わにして、冷ややか声音で登校を断固、拒絶する。


「さあ、もう用は済んだでしょ、帰って、帰ってよ!」そう語尾を強く言い放ち、

追い返そうと必死の抵抗をしてくる。


「そうはいかない!オレは先生から頼まれていて君を学校に登校させないといけないんだ!」

そうしないとオレの内申点が上がらないんだよ!



「だけど、わたしは行く気はないんだよね。」


そう言い、ドアを閉めようとする柚木。「そこをなんとか!」と閉まり掛けていた扉を手で押さえて閉まるのを止める。



「あっ!またそうやって無理矢理迫ろうとする!」


「部屋に押し入って、何をするつもりなの?!」


「はっ!やっぱり、わたしの身体が目当てなんでしょっ!」


そんな時、彼女ピンクのチェック柄のパジャマの第2ボタンまで外れていて豊満な胸の谷間がチラリと見えていることに気付く。


一生懸命視線を逸らそうとするも、どうしても見えてしまう。華奢きゃしゃ 体型なのに出るところは出ていてその肌色にドキッとしてしまう。

(以外と胸あるんだなー)


「ちょっと、さっきからどこを見てるの?」


柚木は視線が注がれている箇所を見るとボタンが外れて胸がチラ見せになってることに気付き慌ててを両手で隠す。


「バカ!変態!」


「ちっ、違う、これは不可抗力だ!」

「また、あなたは!」

柚木はポケットから水色の防犯ブザーを取り出して思いっきり紐を引こうとする。



そして-



「うわー!やめてくれー!」


オレは防犯ブザーの騒々しい音が鳴り響くとばかり思っていたが鳴らない?その代わりに鳴り響いたのは『くぅぅぅぅぅぅ』と可愛らしい音だった。


あれ?今の防犯ブザー??にしては可愛らしい音だったような。


「な、なぁ今のって......」

腹の音だよな。

「うるさい!今のは、そう!おならよ。」

柚木は、苦し紛れに恥ずかしそうに言う。

「えっ?!」


それは、無理あるでしょ。

とゆうかだとしたら、可愛すぎだろ!その前に、女の子が自分から放屁発言するもんじゃない。

いや、そうじゃないよな。


「もしかして、腹空いてるのか?」


ちゃんと飯食べてるのか心配になってくる。



「ち、違う!ご飯だってちゃんとガロリーメイトとか食べてるし!」


「栄養満点よ!」


「ばかやろう!健康補助食品が主食なわけあるか!」



「え?いけないのぉ?」



「健康補助とゆうくらいだからてっきり」

とキョトン顔で言う。


まったく、とんだ天然だなこの子は!

「あれはあくまで、主食では補いきれない栄養素を補助的に摂る為の食品なんだからな!」



「主食は主食で食べなさい。」


「でも、わたし、料理出来ないし。てゆーか、お母さんか!!」




「あと、主食ならちゃんと食べてるよ!」


「へー、どんな?言ってみ!」

どうせ、ろくなものじゃのに決まってる。


「カップラーメンとか宅配ピザとかマッグのハンバーガーとかぁ」


「とにかく調理しなくてもいいヤツを、あと、ガロリーメイト!」



ヤバイなこの人。よく、今まで身体を壊さないでこれたものだ。

メタボ体型まっしぐらな食生活じゃないか!

、ガロリーメイトだけでは補い切れない食生活だった。


「ちょっと待ってろ!」



そう言い残して自分の部屋へと戻る、

冷蔵庫からあるものを取り出して柚木のところへと戻る。


「ほらよ、これでも食べてろ。」

タッパーに入った昨日の残り物を手渡す。

「なにこれ?」


柚木はタッパーを受け取ると、訝しげに訊ねる。


「昨日、作った煮物だ。ろくなもん食べてないんだろ。」


「それでも食べておけ!」



「う、うん。これはどうゆうつもり?」


「はっ!まさか、餌付けして肥えさせた後にわたしのバディを美味しく頂こうとゆう魂胆ね。」


「そういえば男の人って、少しプニッっとしている女の子好きって聞くし、やっぱり変態だ!」


そう柚木は、自分の身体腕でガードして眉をハの字に歪めて変態を見る目で貶む。


ヤバイ。本気で引いてるじゃないか!これじゃあ、本当に通報され兼ねない!


「違うっての!隣人が餓死でもしたら面倒を頼まれているオレの責任でもあるから。」



「とゆうのは、口実でわたしを手懐けようって魂胆か!」


「ああ、もう!だからー!」


もう、何を言ってもオレの善意は、くみ取って貰えないらしい。悲しいかな、現実は。


「もういいよ!わたしは、一刻も早くこの物体を処理したいから、もう戻る!」


「いや、そこは素直に、早く食べたいって言えよ!」


「何をわけの分からないことを!では、これで。」ガチャン勢い良くドアが閉められる。


はいはい。早く食べたかったんだね。どんだけ腹減っているんだアイツは。



      ***           


柚木は、マンションの自室に戻り、キッチンの電子レンジで600ワットでのレンチンする。


目的の物のタッパーを空けるとホカホカと湯気が立ち上り良い香りが鼻腔をくすぐる。


「わぁ、美味しそう!」煮込まれ味がしみ込んで濃いめの色合いをした野菜が入っている。ゴボウや椎茸、こんにゃく、鶏モモ肉あと、人参。どれも味が沁みていて美味しそう。


「では、一口。」

ゴボウからいった。コリコリ食感で歯ごたえが楽しい。次に椎茸!んー醤油とみりんの味が効いていて味が良くしみ込んでいて美味しい。人参は......嫌いだから抜ける。


かと思いきや、勇気を出してパク!


あれ?人参の独特の臭さが無くて甘くて美味しい。



「んー、まあまあだね。」



それから鶏モモ肉やこんにゃくと食べ進め、あっとゆう間に完食してしまった。


思ったよりも量が少なくて、もっと食べたいと思ったのは秘密だ。 












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