第26話 犬猿の仲


翌日、俺は学校に行く前に、いつもの日課である唯依に手作り弁当を渡す為に、お隣の208号室のインターホンを押す。もう恒例の登校前の日常と化していて難の迷いもなく押したその行動にもの申した人物が一人居た。


「どうして朝からお隣さんを訪ねるんですか?」とつい先日俺の住む207号室の隣に新しく越してきた彼女、立花栞里がキョトンとした訳が分からないと言った顔で俺の行動を不思議そうに見ている。




「え?そうだけど。」

え?なにかまずかったかな?そうかこうゆうことって幼なじみ同士がすることなのか?

俺に幼なじみなんて居ないことからそこら辺の感覚が分からなかった。


「なんでまた見ず知らずの人に?何か弱みでも握られているのですか?!」


弱みとゆうか胃袋は掴んでいる気はするが...あとその言い方は間違っているな。

「見ず知らずだなんて失礼だな。れっきとした俺たちのクラスメイトだぞ」



「俺の隣の席にこの春から座るはずだった、2ーBの柚木唯依だ」


こんな会話を立花と交わしているうちに扉が開き、唯依が出てくる。


「おはよう~藤也くん。今日のお弁当はなに~?!」




「弁当?藤也さんお隣さんにお弁当を作っているんっですか?」


「そ、そうだけど、これには訳があってだな」


唯依が自炊が出来ないことを説明すると立花はいささか不満な顔をしてきた。


「家事が出来ないのなら家事代行サービスを頼むなど、他にいくらでも手段があるでしょうなんでわざわざ藤也さんが......」


「いいんだ。俺が好きでやっているんだから」

これは手の掛かる唯依を放っておけない体で説明しておく。立花に唯依への好意がバレたらんあいかと面倒臭そうだから。




「あれ?そこのお隣さんは誰?」



「初めまして藤也さんのお隣に越してきた立花栞里とゆう者です。藤也さんとは仲良くさせて貰ってます」


「ふ、ふーん!そうなんですか、仲がいいんだーそうなの?藤也くん?」

ムッと唯依に睨まられるなんだか、冷気の様なものを感じて背筋がゾクッとしまう。


「初めまして柚木唯依です。藤也くんとは、お弁当を作って貰う仲なんだ。の他にも妹ちゃん達も囲んで夕食を共にする、家族ぐるみの付き合いなの」



「そうなんですか。わたくしなんて家に上げさせて貰って藤也さんの小説まで読ませて貰ってるんですよ。」




「フン!藤也くんがWEB小説を書いていたのなんて知っているしっ!それに小説のイラストを描いているのは、わたしなんだから!」と唯依は自慢げに言い放つ。



「あなたが、藤也さんのイラストを描いていたんですね。でも、アマチュアで正式なものではないですよね?」



「だから柚木さん。藤也さんのイラストの枠を賭けてあなたにイラスト勝負を申し込みます!」


「負けた方が藤也さんのことを諦めるってことで宜しいですか?まあ、私は負けませんけど」


「私は花。柚木さんは木。木は花を引き立てるのが役割ですから柚木さんじゃ藤也くんの隣には立てませんよ、せいぜい足掻いて私を立てて下さい。」



「ぐぬぬ...それでも私が引き立てるのは立花さんじゃなくて藤也くんのほうなんだから。藤也くんは、藤の花。わたしは彼を支える木だから。」



「あなたはわたしを踏み台にしてわたしの場所を奪っていこうとするようだけど、わたしは藤也くんの隣は譲らないんだから!」


「だからあなたには負けない!」


と栞里は唐突に突きつけられた勝負を唯依は買い、二人は犬猿の仲となっていがみ合う。




二人から両腕を引かれて取り合いの板挟みとなる。


「唯依さん貴方は藤也さんにふさわしくありません。ラノベの口絵や挿絵を描いてきた私が担当するべきです」



「そんなことないし、わたしだっていろいろとソシャゲとかのイラストを描いてきたもん!」


ふーん、どうやらズブの素人ではなさそうですね。それなら、ラノベのイラストの経験はおありで?」



「そ、それは...」


「ほら!だから貴方では役不足だと言っているんです!」



「だって、わたしの方が藤也くんとずっと一緒にいたんだもん!子どもの頃だって約束を交わして...」



「幼なじみポジションってゆうことですか?ハン!負けポジションじゃないですか」



「負けない!わたしが藤也くん「にとっての一番だもん!」



「やめてくれ!俺のせいで喧嘩しないでくれ頼むから!」


美少女2人から俺なんかを取り合うとかどんなラノベ展開だよ?!もしかしてモテ期きた?


一六歳にして童貞卒業か!?いや、そんなこと今はどうでもいい!この争いを修羅場を納めないと!



「ねえ、藤也くん。いったいどっちを選ぶの?」


「実績のある私ですよね、藤也さん」

その語尾にハートマークが付きそうな語尾に不意にドキッとしてしまう。


「藤也くんはわたしのだぁぁー!!そんな泥棒猫になんて渡さないんだから!」

と唯依は栞里を指を指して言う。



「あーもう!こうれじゃあ埒が空きませんね、白黒させてしまいましょう」



「ど、どう言うことよ泥棒猫!?」



「私達のイラスト勝負の勝敗を藤也さんからジャッジしていただきましょう!」



「い、いいよ受けて立つところだよ!」

「でも、それでは、藤也さんが柚木さんへの評価がひいき目にになってしまいますね……そうだ!」


「私と柚木さんで描いたイラストをtbitter《ツビッター》に投稿して、いいねとRB《リツビート》の数で勝敗を決めるのはどうですか?」


「『いいね』の数が多い方が勝ちってことだね。いいよ、面白い。負けないんだから!」


「じゃあ決まり期限は一週間後の火曜日の放課後と言うことで」

と栞里がパンと手の平を叩いて締めくくる。


「えっと、それはあまりにも...」


今までラノベイラストの作成経験のある自分の土俵の立花とイラスト作成経験は有るがラノベの挿絵は未だ未経験の唯依とじゃ、あまりにも唯依が不利だ。



「あのな、唯依...」

これはフェアな戦いじゃない言わないと!



「藤也くんは黙ってて!これは女同士の戦いだよ!」



「そうですよ!勝った方が藤也さんの小説の挿絵を担当して負けた方は藤也さんのことを諦めること」



「......」


おいおい。俺の意見なんてガン無視かよ。今、なんと言っても聞き入れて貰える雰囲気じゃないし......


勝手に二人してヒートアップしてあいまうんだからこうして、唯依と栞里がイラスト勝負をすることになった。

こうして、唯依にとって負けられない戦いが幕を開けた。

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