第25話 お隣さん



午後の授業のホームルームも終わり、放課後に担任の咲良先生に呼び出される。



「藤也君、帰りに立花さんを家まで一緒に送っていってあげなさい。」



「えっ!?でも、咲良ちゃん、立花さんとは家の方向が......」




「いいからいいから彼女と一緒に帰ればわかるから。あとちゃん付けしない!先生を付けなさい。」


「はい、先生。」とお叱りを受けてしまった。が実はこの照れた対応が可愛いからわざと言っていたりする。先生には秘密だけどね。



そして、俺と立花さんは共に帰路についた。校舎を出ると暫く、下校途中の生徒とすれ違った。


可憐な立花さんの隣を歩くのが、地味で陰キャラな俺なことから「不釣り合いだ」

「なんで隣がアイツなんだ?」など周りから奇異な目で見られ、疎まれてしまいながら彼女の隣を歩く。



会話とゆう会話も無いまま栞里は大人しく隣を歩く。もしかして周りに人が居ると緊張して話せないのか?などと考えていると商店街を抜けたところで流石に学校の生徒も居なくなってきた。




「栞里さん、大丈夫?住宅街も、もう終わるけど家はどこなの?」



「まだ先です。」



「そ、そう。ならいいんだけど。」



と、結局、スリープマンションまで到着してしまった。そして立花さんもセキュリティを通過して一緒に入ってくる。これは、まさか......




それも、階は同じ二階で降りるし。まさかのまさかか!?



「はい、着きました。」



そこは俺が住んでる207号室の隣の一室で...



「って、俺の隣かよ!!」


「言ってませんでしたね。つい先日、このマンションに越してきたばかりなんですよ」


そう立花栞里は、俺の部屋の隣の206号室のお隣さんだった。



           ***



「驚いたな。お隣さんだったのか!?」



「はい、そうですよ。」



「じゃあ、ここでお別れだな!」



「はい......」


「お、おう...」


このとき、彼女が一瞬、寂しそうな表情を見せたのが気になった。でも、「またね」と笑顔で手を振る彼女を見て、気のせいかと思い自室へと入ろうとする。



が、その時。「あっ!!」と素っ頓狂な声を上げる立花さん。



「ど、どうした!?」



と俺は心配して訊く。すると彼女はオロオロとした取り乱した様子で、こう言う。


「へ、部屋の鍵を無くしてしまったみたいです......」と。


今にも泣き出しそうな幼い子供のような顔で助けを求めてきた。



「えっ!?マジで?どうしよう!仕方ない、とりあえずうちに来るか?」



「はい。お邪魔っさせて貰います。」


と立花さんは多少は落ち着きを取り戻して俺の部屋へと上がるのだった。



「その辺に適当に座ってて。」


リビングに通し、ローテーブルの傍に置いてあるクッションを指して言う。


「はい。失礼します。」

立花さんはちょこんとクッション

の上にぺたんと女の子座りをするとどこか落ち着かない様子で辺りを見回す。


「キレイに片付いてますね。」



「まあ、散らかってると何かと不便だからな。」


まあ、本当はきれい好きな妹の愛那まながいつもキレイに掃除してくれているからこの清潔感を保って居られるのだけど。それは言わないでおいておこう。


「あの、ご家族の方は...」


「ああ、訳あって今は二人の妹達と三人で暮らしているんだ。もうすぐ中学から帰ってくるはずなんだけど。」



「そうでしたか。あの、もしかして、ご両親は...」


立花さんは訊いていいことなのかとくらい表情で尋ねくる。



「ああ、それがね...両親は...田舎の故郷でのんびり暮らしてるよ!」



「俺が都会の高校に通い始めた時に実家から出て来て、俺の後を追うように二人の妹も俺の住んでるマンションに都会の中学に通う為に今、一緒に住んでいるんだ」



「なんだ、そうだったたんですか!わたくしはてっきり訊いてはいけないことをきいてしまったのかと思いましたよ。」



「そんなことないさ」



「あら?こんなところにコピー用紙が...なにか印字されてますね?こ、これは?」



「わー!それは見ないでー!」


俺は、瞬時に彼女の手から用紙を奪い取るとサッと隠す。


「み、。見たか?」



「す、少しだけ...」


「ふー!ちょっとだけなら大丈夫かな。」



「確か、『変態!強引に押し入るとか何をするつもりですか!』とか『防犯ブザーだって持ってるんです』とか。」


「変態って...藤也さんは何を書いてるんですか?もしかして……」


「こっこれは、違うんだ!誤解だよ。」


まだ、妹達にも見せていなかったのに......

まさか初対面の女の子に見つかるなんて!変態どと思われてしまったか!?

終わった!


「もしかして藤也さんて...小説家さんなんですか?」



「わーー!違う。俺は変態じゃなくて...へ?小説家?」



「そうです小説家さんですよね?」



「うーん実は、自分で小説を書いてWEBに投稿しているWEB小説家のほうなんだけど。一応は、作家かな?」


本当は胸を張って商業作家と名乗りたいところだけど弱小作家の俺にはとても高い雲の上の存在だ。



「この女の子がどん引きするような変態主人公の作風。もしかして、貴方様は、お隣ヒキニートの作者の藤原ふじわら達央たつおさんではありませんか?」



「へ...?知っているのか?俺の小説のこと。」


あんなロクにPVが付かない弱小説なんかを......




「実はわたくし都会の環境に慣れずにずっと自宅に引き籠もっていたんです。」


「引きこもりだったのか......」

そりゃ、クラスメイトの質問に対して

自宅警備とか言ってたし。本当にそうだったなんて。



「でも、ただ引き籠もっていたわけではないんですよ。ラノベ挿絵などのイラストを描いてイラストレーターとして仕事をしながら引き籠もっていたんです。」


「そ、そうだったのか。」


それって、今の唯依と同じじゃないか!



「でも、両親が高二にもなって引き籠もっている私の将来を心配して都会の環境から生活環境を田舎のに移して転校とゆう形で学校に復帰しないかとこの田園風景豊かなこの地に移住してきたわけです。」


「それで、こんな中途半端な時期に転校してきたのか!


これで、全ての謎が繋がった。でも、なんで今それを?


「もしかして、俺の小説にメッセージを送ってきたのって?」



「そう、わたくしです。」



「なるほど、そうだったのか」


「あの小説が私を外の世界にまた出て行こうとゆう気持にさせてくれたきっかけを与えてくれた小説だったんです。


「だから、藤也さん。いや、藤原先生。私にお隣ヒキニートのイラストを担当させて下さい!」



そういきなり告げられた。


「そ、それは...俺には......」


そんな自分の小説が誰かにこんな「に影響を与えていたなんて。作家としてこんな嬉しいことはない!


だけど、俺には将来を誓い合った唯依がいる。


「ごめん、立花さんの気持は嬉しいけどそれに応えることは出来ないよ。もう担当イラストレーターは決まってるんだ。」



「そう、ですか......」



「あっ、私帰ります。よく見たら鍵ありましたし、ごめんなさい!」


「あっ、立花さん?」



「あっ。でも、まだ諦めたわけじゃないですからね!」


そう言い残し立花さんは俺の家から逃げるように出て行った。


てゆーか鍵、あったんかい!


















     

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