第13話 君の名を

火曜日。学校での昼休みのこと。涼風と昼食を食べながら、南先輩とラノベ勝負をすることになったことを打ち明ける。


「あの南先輩とラノベ勝負だって!?普通科の僕ですら分かるくらい、南先輩は凄い才能の持ち主だって分かるよ。」


「藤也。お前は南先輩に勝てるのかい?」


「負けるかもしれないと言いたいのか?勝てないかもじゃない。勝つんだ!」

そうしないと柚木を取られてしまう。

ここで勝たなければ俺達の夢が叶わない!


「あの南先輩に対抗するなら藤也は今のままだと駄目だよね。」


「今のままじゃ勝ち目が無いって事か......」


「じゃあ、どうしろって言うんだ?」



「そうだね、まずは藤也には自分だけの武器が必要だと思うよ。」




「自分だけの武器かー、それなー。」


「そのことなら塚本宇先生にも同じことを言われたな。」


自分だけの武器か。柚木のことを強み

にするのは分かってるんだけど、具体的にはどうしたらいいのかが分からないんだよな。


それでも、前に進むしかないか。 と前へ進むのみだった。

***

放課後のこと、俺は柚木宅へと足を運んでいた。



学校での昼休みに柚木『学校が終わったら部屋まで来て。話したいことがあるから』とMINE《マイン》でメッセージを貰っていた事で学校が終わってから直行した。



丁度、俺も柚木に伝えたいことがあったから一緒に伝えようと思い来ていた。


スリープマンションの208号室へと向かう。


インターホンを押し、「柚木ー。今来たぞー」と声を掛けると「今行くー」と柚木の焦る声が帰ってくる。



なにを焦ってるんだ?急がなくていいぞ。転んだら危ないからなと思っているとギィと扉が開く。


四月も下旬で少し暖かくなってきたことで。柚木は、暖色系の季節の暖かさを感じっせる春服の装いをしていてとても可愛らしい。つい、いつまでも見ていたくなる。


「なにジーと見てるの?気持ち悪い。」


「わ、悪い、見惚れてた。」


「なっなに言ってるの!ヘンタイ!」柚木は、顔を真っ赤にして罵倒する。


「どこが?!」


「もう!藤也くんの言うこと成すこと全てが!」



「まさか俺=変態になってる!?」


とか言ってほんとうは照れ隠しのくせに!




「今日、呼んだのはね、前に藤也くんがリモートでデートしてくれるって言っていたことで

やりたいことが決まったから」 少し間を置き息を整え「その、やりたいことが決まったから呼んだの!」と瑠璃色の瞳を輝かせてやけに嬉しそうに言ってくる。


「おぉ!決まったのか。それは、なんだ?!教えてくれ。」


と俺は興味津々に訊く。




「それはねー。南のイヨンに出店しているビアードママのシュークリームが食べたい!」


「同じくイヨンに入っているカフェ・ブルーマウンテンのフルーツタルトをテイクアウトしてきて!」


と、柚木から要望を伝えられる。一端うのみにしてからよく考える。



・・・・・・


「ってただのパシリじゃないか!」と突っ込む。



「えへへー。バレた?」柚木は悪戯っぽくはにかむ。



まぁ、そんなところも可愛いから許すけど。

イヨン南新潟店。それは、県内最大級クラスの大型ショッピングモール。


県内各地から様々なカフェやスイーツ店が出店しており、最新のファションからグルメが一斉に揃う、夢のユートピア!


柚木の要望は分かった。今度は、俺の提案を聞いてくれ。」



「うん、いいよその提案って?」



「うん、それはだな・・・ラブコメ小説を書くのにシナリオハンティングで恋人らしいことがしたいんだ。」



「とゆうかさせてくれないか?」



「藤也くんはまたそんなことを言って!恋人らしいこととか言って絶対、エッチなことをしようと思ってるし」


「しないよ!エッチなことなんて!」


多分・・・



「そもそも、恋人らしいことって何をすればいいの?」



「さあ?手を繋いだりとかじゃないか?」


「やっぱりダメ!どさくさに紛れて変なところ触ってきそう!」


「失礼な!」




「ちょと待って。小説の中では私達は恋人同士なの?」


柚木はお驚き、動揺して訊ねる。

「まあ、友達以上、恋人未満だけどな。恋愛小説なんだからそのうち恋人同士になるな。」



柚木は少し考えてから、「いくら恋人関係でもエッチなことはダメ!」と強く言う。



「しないから大丈夫だよ。」


本当はしたいけど、嫌がるのを無理矢理なんてしたくない。




「そうだ。もう一つやりたいことがあったんだった!」 そう、思い出したように柚木は言い、恥ずかしそうに

モジモジする。その様子に俺はなんだろうと疑問に思う。



柚木は、意を決したように戸惑っていた気持を言葉にする。


「あのね、藤也くん。実は......」




「なんだ?言ってみ。」


「うん、言うね。」


「わたしのことを唯依ゆいって名前で呼んで欲しいの」


柚木は火照ったように顔を朱色に染め、耳までまで真っ赤にして言う。



「名前でか......分かった。」


少し照れくさくて恥ずかしいけど。



「なぁ、唯依…じゃあ、俺のことも瀬翔って名前で呼んでくれるのか?」

女の子を名前で呼ぶなんて子ども頃以来で小っ恥ずかしい。

そして女の子から名前で呼んでっ貰えるのかと淡い期待を抱いて言ってみる。



「それはダメ!男の人を名前で呼ぶのは恥ずかしいから。」と柚木は断る。


「そう、か......」


えー!自分だけズルくない?俺だって恥ずかしいのに......淡い期待は、見事に砕かれ、と不満に思う藤也だった。







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