第14話 勝負の行方

「うわぁ!先輩のスゴイ!もう、俺の中でドキドキが止まらないです。」




「藤也君こそ、なかなかどうして。いいものを持っているわね。」



「せ、先輩......」




パラリ、パラリ...俺と南先輩は向かい合い、二人の間に原稿用紙をめくり合う音だけがする。



翌日、南先輩とのラノベ勝負当日のこと。放課後の空き講義室で、先輩が書いてきた小説と俺の書いた小説を交換して読み合う二人のやりとりが繰り広げられていた。


「流石は先輩。プロが書い小説ただけあってスゴい面白かったです。」


「そう、ほんとうは、『ケッ素人に毛が生えた程度だな。』だなんて思っていたりして」

「でも、お世辞でも嬉しいわ。」



「いえ、お世辞だなんて!主人公とヒロインが運命的な出会いを果たして、

様々な試練を乗り越えて本物の恋人になっていく姿は、男の俺から見ても胸がトキメクものがありキュンキュンしてしまいますよ!」


まぁ、たまにエロを挟むのは南先輩の作風か。


俺が書いた小説なんかより、飛び抜けて魅力があってずっと面白かった。


とても勝てる気がしない......



先輩はとゆうと、俺が書いた小説を読み、いつもはクールでポーカーフェイスな顔を険しく歪めて

ぐぬぬ...といった感じ今にも唸りを上げそうな感じになっていた。



「あ、あの先輩?」


俺がそう声を掛けると先輩は、ハッと我に返り、そうして

「こんな、妄想垂れ流しの作者のご都合主義の駄作を読ませるなんて!」


「あー!気持ち悪い。」


「そんなに、駄目ですか?俺の小説。」


「そうね、とても読むに耐えられないわ。」

「一つ、言えることは、やっぱり私じゃないっこと。」



と諦観したような感じで言う。



「えっ?!なにがですか?」



「それは、決まっているじゃない。柚木さんからイラストを書いて貰うべきなのは私じゃないってことよ。」




「どうゆうことですが?!先輩の小説はこんなに面白いのに......」



「正直に言うとね、藤也君の小説の企画を初めて見せて貰った時から藤也君の柚木さんに対する想いはよく伝わってきたわ。


「柚木さんにイラストを書いて貰うべきは、あなただってね。」



「それじゃあ、今までの挑発的な態度は?!」



「あれは、藤也くんの本気を確かめたかったの」


「見事、合格よ。」



「さあ、早く柚木さんのところへ行ってあげて!」



と南先輩から言われ、実質的に南先輩を負かし、俺は柚木の元へと向かうのだった。




     ***



学校の講義室で。南先輩と別れた俺は、早く、柚木に勝敗の結果を伝えたくて、はやる気持でスリープマンションの208号室へと来ていた。柚木に南先輩とのラノベ勝負の結果を聞かせる為にインターホンを押す。


「聞いてくれ!柚木。俺が勝ったぞ!」


すると、ギィィと扉が開き、柚木が出てくる。柚木は、白いTシャツに水色の薄い生地のパーカーを羽織り黒のショートパンツ姿のラフな格好で出迎える。



「スゴい!あの南先輩に勝ったなんて!」と瑠璃色の瞳を輝かせて言ってくる。



「さあ、中へ入って勝利を祝わないと!」


そう言い部屋の中へと通してくれる。



柚木の部屋へと通された俺は、柚木に「さあ、南先輩を負かしたその小説を読ませて。」



と言われ、俺は例のラブコメ小説を柚木に手渡す。



でも、やっぱり目の前で好きな人に自分の小説を読まれるとゆうことが恥ずかしくて


「そうだ、柚木、腹減ってるだろ。何か作ってきてやるよ!」と言いその場を離れようとする。が、「ダメ。藤也くんもここに居て。」と服の裾を掴まれて行かせてくれない。


「わ、わかった。俺もここに居るよ。さあ、読んでくれ!」


と俺は覚悟を決める。



そして、柚木は原稿を読み始める。実体験を元にした俺の小説のあらすじは、このようなものだ。


                   【あらすじ】


主人公、藤岡聖也は、小4の頃に初めてWEB小説を投稿する。


始めは、固定読者もコメントをくれるユーザーも居なかったけど、ある日、初のユーザーのyukiさんからのコメントを貰った。


それが励みとなり、WEB小説の投稿が楽しくなり、途中で止まること無く続けてこれた。



短いながらも無事完結まで書き終えることが出来た。


そしていつも俺の小説にコメントをくれるyukiさんから完結記念にイラストを描いてきて貰った。


そして二人で約束を交わす。いつか大人になったらリアルで再会しよう。



その時には、俺はスゴい小説家になってるから俺が小説で君がイラストで二人で本を出そうと。


時は過ぎ、高校生となった俺は今でも、あの日の約束を胸に小説を書き続けている。


残念ながらあの頃、思い描いたスゴい小説家とやらには成れていないが。




ある日、特待生の芸術クラスに超絶美少女の才女がいるとゆうことで親友と一目見に行く。



そこに居たのは、目を奪われるかのような亜麻色の髪の乙女で天使のような美しさと儚さを兼ね備えた美貌の持ち主の

悠木ゆうき結希ゆきだった。


実は彼女とはマンションの部屋が隣通しのお隣さんだった。彼女の実態は、絵の才能はずば抜けているのに私生活の自炊の料理などが破滅的に不得手で、食生活が偏りがちの生活を送っていた。



 それを見かねた藤岡がおかずのおすそ分けのお節介から始まり、お弁当を作って彼女にあげたりして面倒を見ていく。


 始めは、藤岡になんの関心も無いのだけど、

献身的に世話を焼いてくれる藤岡に、徐々に心を許していく。


お互いに、子供の頃に約束を交わした相手だとは気付かずに。


 そんな友達以上恋人未満の関係で甘々な関係を築いていく話。





「どうだった、柚木?」


「面白いと思う。わたしは好き。」



「そうか、それは良かった。」


目も当てられないとか言われたらどうしようかと思った。



「でも、このまま投稿するのはダメ。」



「えっ!?ダメなのか?」



「ダメ。恥ずかしい...人には見せられない。」



「恥ずかしい、か......」



「わかった。書き直してみるよ。」



「でも、WEB小説に投稿したとして書籍化出来るの?」



「それは、ちゃんと考えてある。」


そこは、ぬかりがない。



「この小説を連載させてWEB小説コンテストに応募するよ!」



「「そこで、大賞を取って書籍化だ!」




「そんなに上手くいく?!」



「いや、分からない。でも、やってやるさ!」


なんとしてもこの小説を書籍化させてやる。そして、舞依さんに認められるんだ!




「そうだよね。藤也くん。頑張って!」

「おう!改めて、言わせて貰うがいいか?」


「えっ?!何が?」

柚木は、素っ頓狂な声を上げる。

「俺の小説のヒロインになってくれ!」

「お前の胸をキュンキュンさせる小説を

書いてやるんだ。」

「それ、前にも聞いた!それに恥ずかしいからやめて!」

「柚木、そんなに照れなくても……」


「もー!じゃあ、控え目にお願いします」



「あと、わたしのことは、唯依って呼んで!」



「わ、わかった。でも、恥ずかしいての!」



それにしても、この流れで言うか......



























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