第28話 大丈夫



イラスト勝負の決着を明日に控えた前日の夜。二十三時。勝敗の付け方は、tbitter《ツビッター》のいいねとRB《リツビート》の数で勝敗を決めることになった。


でも、この勝負は、ラノベイラストを数多く担当してきた立花が有利だろう。立花のイラストのいいねは現在800。250リツビート。それに対して、唯依のイラストのいいねは500。

リツビートは100。このままだと唯依存が負けてしまう。ここで自分に出来ることはと思い、唯依のツビートのコメント欄にあるコメントを送る。これでいい結果になればいいと一縷いちるの望みを託して。




そして、翌日、火曜日の放課後。イラスト勝負の結果を開票することとなった。

立花も唯依宅に訪れて一緒に結果を見に来た。


「いよいよ決着の日ですね。覚悟はいいですか?柚木さん、後で吠え面かかないでくださいね」


「フン!勝手なこと言わないでよ当然、自分が勝ったかの言いようね」


唯依はいつものピンクのチェック柄のパジャマでなくて、マウンテンパーカーに黒のショートパンツ姿だった。でどうやらこれが勝負服のようだ。


いつもととは違う恰好に新鮮さを感じてしまい、凝視してしまう。スゴく似合っていると思う。


「もう、藤也くん。ジロジロ見ないで...恥ずかしい」と唯依は顔を赤く染める。


「気をおとり直して。さあ、吠え面をかくのはどっちの方かな?」そう俺は立花に言い放つ。




「じゃあ、ツビッターの集計結果を見るか」




「は、早くしてよ」唯依は生唾を飲み、緊張の面持ちで俺のスマホを見つめる。

スマホに唯依のツビッターを表示してツビートの詳細のすべてのエンゲージメントを表示をタップする。



立花が、900いいね。300リツビート



唯依が、1000いいね。400リツビート


とゆう結果になった。






ITUBEの成功再生回数が一万再生とゆうことでこのPV数は成功と捉えていいのかと正直、驚く。



「藤也くん!これはどうゆうこと?」



「いや、実は、この一週間の間に、自分には何が出来るかと考えた結果、俺には小説を書くことしか出来ることはないなと思って、連載小説の短編化をしていて丁度、昨日の夜に完成したんだ。コメント欄への投稿が間に合ってよかったよ」



「イラスト勝負には負けたけど、柚木さん。あなたは、引き籠もって居る限り、藤也さんの隣の座ではあなたに勝ち目はないですよ。」



「くっ......」

(もー!このままじゃいけないのは分かっているのに...分かってるのに...)



唯依は顔を俯かせて何も言い返せないまま自室へと引っ込んでしまった。


自室へ籠りすすり泣いているのだろうかと俺は心配になるのだった。


***


夜、自宅に戻った藤也は、妹の愛那と優奈と夕食を囲っていると、愛那が俺の顔を心配そうに覗きこんできた。


「兄さんなんだか様子が可笑しい...」



「えっ...そんなことないぞ!」


愛那に言われてハッとした。それは、唯依はこのままでいいのかとゆことで、早く更生に導かないと行けない想いが込み上げてきた。俺も、本当に三ヶ月後に書籍化させて小説家としての成果をださないといけない。自分に出来るのか不安になる。

「フン!兄貴のことだからどうせ大した悩みじゃないでしょ。」と優奈が小生意気に言ってくる。


優奈…コイツ人が深刻に悩んでいるってゆうのに!でも、反論をする気にもなれずに「俺、もうご飯終わるわ…」

そういい食器を片して席を立つ。


「なによ。張り合いがないわね!」優奈は

面白くない。と顔を膨らませる。


自室に篭もるといつもの如く、PCを起動して小説投稿サイト『小説家になろうよ!』を見ていると短編小説コンテストの開催の知らせを目にする。その詳細は、大賞や特別賞獲得した小説は書籍化されるとゆう確約付きだった。


でも、未だ決断を下せないで心につっかえる苦い記憶が残留していて前向きになれない自分がいた。

































***



翌日、学校の昼休み、涼風にWEB小説コンテストに応募するかどうかを悩んでいることを告げた。

涼風は「そうか。でも、チャンスを与えられてるんだからモノに出来ないなんて勿体ないよ。もうエントリーされている小説があるけど」

「そうか」

「見て見てよ!この作者、相当の強者だぞ藤也。」

涼風は、俺にスマホのWEB小説サイト小説家になろうよ!の画面を見せてくる。


夜上やがみらいとか。あれ?このペンネームどこかで聞いたことがあるような...」


「わかった!三年の特待生。A組の八神やがみらいと先輩だ!」



「ねえ、先輩の小説主人公の名前がライトくんだって!」


「おいおい。あの人「ほぼ実名でで俺TUEEE小説なんて書いているのかよ」



「まあ、読んでみろよ。中身は本物みたいだよ」

俺は涼風に促されて小説に目を通してみる。


【爆焔のダークナイト】


王都の結聖騎士団に所属する主人公のライトは第二王女に秘かに想いを寄せていた。


ある日、屋敷に王女の命を狙う刺客が潜入して刺客との戦闘になる。死闘の末に、ライトは、王女を守る為に。禁忌である暗黒面の魔素マナをその身に宿す禁術を使い、暗黒騎士ダークナイトとなり刺客は退けた。


だけど禁忌を冒し暗黒面ダークサイド堕ちたライトのことを騎士団団長は『お前は聖騎士じゃない!』と騎士団を追放されてしまう。


流浪の騎士となって自分はたとえ禁忌に触れたとしても正しい行いをしたはずなのにこの仕打ちはあんまりだ!と怒り成り上がりを決意する。


それでも王都に害を成す勢力やモンスターなどを駆逐していく。


その頃、騎士団はというと今まではライトが居たからこそ倒せていたモンスターに苦戦するなどして戦績が低迷していた。


そんあことが続いたある日、魔族達の闇の軍勢が攻めてきて最悪の事態に陥る。


騎士団は、唯一魔族と対等に渡り合える暗黒面の力を持つライトの力を求めて団員達は、騎士団から追放したことを深く後悔する。


騎士団の危機にライトが現れ、魔族を一閃薙ぎ払う姿を見て団員達は、ライトのことを見直すのだけど、団長だけはライトの功績を素直に認めないのだった。



「おお、これは悔しいけど面白いな!小説家になろうよ!の今流行の現地主人公で追放ネタも使われていていい!」





「藤也だって、凄い実力を持っているじゃないかまださびびれてないだろ?」


「まあ、今はオリジナル小説を書いているけど、またあんなことになるんじゃないかと思うとこのままコンテストに出していいものかと思ってさ」



そう、あれは苦い記憶で思い出しただけで吐き気がする。




「うっ......」


「てっ、おい!大丈夫かい?!」


「悪い、ちょっと昔のこと思い出してしまって気分が悪い。午後から早退させて貰うわ」



「そ、そうかい。気を確かにね」


そう言い、俺は午後から学校を早退してスリープマンションへと帰るのだった。







俺は、高一の頃に商業作家として小説家デビューしていた。


デビュー作は今とは作風が違っていて、異世界ファンタジー小説を書いていた。


小4頃好きだった作家宮部みさきさんの異世界ファンタジー小説【ブレイブソード・ストーリー】の作風に感動して自分もこんな作品が書きたいと思い、二次創作小説として当時書いていた小説のリメイクとして書いた書いた。その作品【ブレイブソウル・ファンタジー】が丸川文庫の新人賞を受賞して商業作家デビューを果たした。



だけど、その小説はネットで大批判を受けた。『宮部みさきの劣化レプリカ』『ファンにしたってクオリティが酷い』など

ディスられて深く傷つき、小説の続巻も発売されることはなかった。


一巻で打ち切りとなってしまったことで自信を失いそれで、また小説を書いてディスられるのが怖くて小説を書くことが怖くて出来なくなった。


そんな時、WEB小説の二次創作サイトで、楽しそうに小説を書いている人達を見て、自分も二次創作で書いてみたくなりこれならまた自分でも書けるかもしれないと思い、同サイトで二次創作小説で再び小説を書き始めた。


そして、小説を書く面白さを再び思い出すのだった。


誰かの『大丈夫』と言う声が欲しい。そうしたら俺は再び自信を持ってコンテストに臨める。


そう思い、自然と足は唯依の元へと、20

8号室へと向かっていた。



インターホンを押そうとする手が緊張で震える。今まではなんのためらいもなく押せていたのに今は、それが出来ない。


俺は、意を決してインターホンを押す。もう迷わない。唯依に救いを求める恥ずかしさも全部打ち明けよう。



『あっ藤也くん!どうしたのこんな早くに。今行くね』そうインタホン越しの唯依の声だけでもう決壊寸前だった。



そして、扉は開き、唯依が出迎える。いつも通りのピンクのチェックのパジャマから水色のチェック柄へと変わっていた。


俺は意を決して言う。自分が過去に商業作家としてデビューしていたこと。


その小説が大批判を喰らって小説が書けなくなっていたこと。二次創作と出会い再び、小説を書き始めたことをすべてを打ち明けた。


その後、俺はこう締めくくる。「こんな俺でも、今書いてるラブコメ小説でWEB小説コンテストにエントリーしようと思うんだけど、大丈夫かな……」と。



唯依は目を輝かせ「スゴイ!藤也くんなら出来るよ。大丈夫!藤也くんが書く小説、わたし好き!」と言ってくれてそれだけで俺はすべてが救われた気がした。

自信が湧いてきて俺なら出来る!とそう思えてくるのだった。








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