第27話:お祭りと告白 ──芽衣と黒崎さん
◇ ◆ ◇
一方その頃──
小春、芽衣、黒崎巡の三人はかき氷を片手に、屋台でやっているゲーム──金魚すくい、くじ引き、カタヌキ等を物色していた。
芽衣がじれったそうに文句をたれる。
「ねぇ、はやく戻ろうよ〜」
「いやいや〜、まだまだでしょ。ははは、芽衣ちゃんも早くお兄ちゃん離れしないとね〜!」
「芽衣ちゃんは……本当に……お兄さんが好きなんですねぇ」
「そ、そんなことない!」
芽衣はぷいと横を向いた。
「ははは、黒崎さんじゃなくても分かるぐらいバレバレだよ!」
小春が芽衣の背中をばんばんと叩く。
「ちょっ……痛い、痛い」
芽衣は身をよじった。
「芽衣ちゃん……お兄ちゃんを取られちゃうのが……嫌ですか?」
巡が芽衣に優しい声で尋ねた。
「そんなこと……ぅぅ……」
──そうだ。
兄を取られたくない。
兄が強くて優しくて真っ直ぐだって自分だけが知っていたから。
兄のことを分かってくれる女性が現れたのは嬉しい。
だけど奪われるのは嫌だ。
そういった複雑な気持ちが胸の中で絡み合っていた。
芽衣はそれを思い切って口に出した。
「……そうだよ……。私……お兄ちゃんを取られたく……」
言いながらうつむいていた。
「あっ! 射的があるよ! 遊んでいこう!!」
小春は聞いちゃいなかった。
屋台の射的に向けて駆けていく。
「……くっ……あの女」
ぎりぃと奥歯を噛みしめる芽衣。
「ふふふ……ほら……私たちも行きましょう」
巡に促されて芽衣も射的に向かった。
◇ ◆ ◇
「おっ、ゲーム機があるよ!」
景品には品薄で有名なゲーム機があった。
「お姉ちゃん、やってくかい?」
いいカモが来たなと店のオヤジがニヤリと笑いながら、銃を差し出す。
「絶対無理だよ、止めなよ」
芽衣は冷静に小春を制止しようとする。
「やってみなきゃ分かんないって!」
小春は代金の小銭と引き換えに銃を受け取って構えた。
──パァン!!──パァン!!──パァン!!
数発の球をゲーム機に向けて発射。
「ちっ……びくともしないじゃんか」
「ほら〜」
芽衣が、案の定といった感じで呆れた。
(ふふ……射的の銃なんかで重いゲーム機が倒れるわけがないんだなぁ。その上、見えない位置にガムテープが貼ってあるからな)
店のオヤジはほくそえんでいた。
「くそ〜!!」
ビールの缶を握りしめながら悔しがっている小春に向かって巡が、
「……私にも……やらせて下さい」
と、銃を手にする。
「へへへ……毎度あり」
オヤジはにやりと笑いながら、小銭と引き換えに球を渡した。
「黒崎さん、頑張って!」
「も〜、絶対無理だよ〜」
小春と芽衣の声援と呆れ声が聞こえる。
巡は銃を構えて……ふぅ〜……と息を大きく吐き出した。
しばしの静寂の後──
──バァン!!──右上角
──バァン!!──左上角
──バァン!!──中央
標的のゲーム機に大きな音を立ててヒット!!
──ゲーム機はぐるんと勢いよく後ろに倒れた。
「……なぁに〜〜〜〜!!!!」
「おおおおーーーー!!!!」
「…………す、凄い…………」
それぞれが驚嘆の声をあげるなか、
「……ふふ……」
巡は静かに笑っていた。
「……ちぃっ……、持って行け!」
オヤジが悔しそうな顔をしながら、巡にゲーム機を渡した。
「どうも、ありがとうございます」
「……くっ……教えてくれ……お嬢ちゃん何者なんだ?」
「何者でもないですよ……」
「そんな……」
「私はただ……銃の声を聞いただけです……」
「そ……そんな事が……!?」
「ふふ……冗談ですよ……それでは」
不敵に笑ってから去って行く巡。
……その後、オヤジは「何か変な音するのかな?」と、全部の銃を調べまわったという。
◇ ◆ ◇
一方、純と小春は──
「え〜……お姉ちゃんたち、なんかゲームやってるって」
「しょうがないですね。もう全部食べちゃいましょう」
「そうだね」
小春からのメッセージをスマホで確認して、たこ焼きを全部たいらげてしまっていた。
それでも小春たちが戻ってこないので、ベンチを離れて彼女たちを探しに向かおうと、ちょうど立ち上がったところで、
「あれって……小悪魔小町じゃないか? ほらあのドラマの……」
「え〜? なんか雰囲気違くね?」
「絶対そうだって! 俺、めっちゃあの子のファンなんだよ! あの子が有名じゃなかった頃の写真集だってもってるし! 見間違えるはずないって!」
と言った声が、小町たちの周りから聞こえてきた。
からかっていたはずの陰キャ男子にたじたじにされてしまう小悪魔美少女アイドルのラブコメ 〜なんで私がテレてんの!?〜 竹井アキ @Takei_Aki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。からかっていたはずの陰キャ男子にたじたじにされてしまう小悪魔美少女アイドルのラブコメ 〜なんで私がテレてんの!?〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます