第15話:私は友達が少ない

え!?

えええ!!??


何でバレてるの!?


──というか、これってどういうことなんだろう?

黒崎さんも純くんのことが好きで、恋のライバル宣言みたいなことをしようとしてる……そういうこと?


まずいよ。それはまずいよ。

でも、私の方が純くんのことを好きなんだから……!

絶対、負けないからね!


なんてことを頭のなかで考えていたところ、


「いや……え……と、そういうこと……ではなく……」


と黒崎さんが言葉を繋いできた。


「……そ、そういうこと?」


「え……と、つまり、私が如水くんのことを……好きということでは……なく」


それを聞いてほっと安心した。

でも……なんだか自分の気持ちを読まれたみたいだった。


「……すいません……私、人の考えていることを……勝手に理解してしまう癖があって……」


癖?

ええと、超能力者みたいなものじゃなくて?


「あ、いえ……超能力とか……読心術みたいなものとは……違います……多分」


そうなんだ……。


って、黒崎さん、私の心の声と会話してるよ!

なにこれ、すごい!


「そ、そうなんだ。す、すごいね……」


「その……小泉さんの気持ちは……特に分かりやすいので……」


えっ!?

そうなの!?

私ってそんな単純なの!?


「ひっ! す、すいません! なんか……失礼なことを言ってしまって……」


そう言って黒崎さんは、怯えてしゅんと身を小さくした。


「ううん! 大丈夫、大丈夫! た、多分、本当に単純だから……」


「ごめんなさい……気持ち悪いですよね……だから友達もつくれなくて……」


うーん……気持ち悪いというか……


「不思議な力って感じかなー。それに……ちょっと羨ましい」


「羨ましい?」


「え、えっと……私の気持ちはもうバレてるみたいだから……隠したりしないけどさ……、ほら……純くんって、何考えてるか分からないときがあるから……。人の気持ちが分かったらいいな〜って思ったり」


「……私でも……あの人の考えていることを当てるのは難しいと思います……」


「はは……ま、まぁ、何も考えてなさそうなときもあるけどね!」


私がそう言うと、彼女は


「ふふっ、そうですね」


と笑った。

初めて見た彼女の笑顔だった。

とても可愛らしい、素敵な笑顔だった。


……ってやっぱり、純くんのことが好きなんじゃ……!?


「い、いえいえ! ……ただ、人としては好き……というか羨ましいというだけで……いつも、ポジティブというか……」


「あ、分かる? そうなの、そうなの! …………ってコホン」


やっと純くんの良さを分かってくれる同級生が見つかって、ちょっと興奮してしまったようだ。

咳をついて気持ちを落ち着かせた。


「ふふっ、小泉さん……大好きなんですね……彼の事が」


「……え……う、うん……」


そうストレートに私の気持ちを指摘されると照れてしまう……。


それでも、気がつくと私は黒崎さんに相談を始めていた。

そういう魅力が彼女にはあった。


「……でもね、なかなか気付いてくれないというか……。い、いや私も、ちょっとは好かれてる自信もあるんだけど……恋人かと言われると……難しくて……。純くんは、ああいう人だから凄く鈍いというか……恋愛感情みたいなものを理解していないというか……」


「……苦労……しそうですね」


「う……そうだね。苦労しそう……」


そこで私は、はぁ〜あ〜と、大きく溜息ためいきをついた。


「最近は……学校で純くんと話す時間も減っててさ〜……」


なんてことを話しながら、なんか良い方法はないかな……と思ってぐるぐると考えを巡らした。


「あ……」


ちょっと思いついたことがある……。

だけど、これを口に出すのは気が引けた。


「……どうしました?」


さすがに今回は心が読めなかったらしい黒崎さんが聞いてくる。


どうしようか?

こんなことをお願いしたら、私は最悪の女なんじゃないか……。


「……そんなに……深刻に考えなくていいですよ。私……誰だって嫌な部分があるって……よく知ってますから……」


黒崎さんは私の感情的な部分を読み取って、そう言ったんだと思う。


「……言ってみて……下さい」


「うん……あの……黒崎さん……私と純くんとさ、お昼一緒に食べてくれないかな……情けないんだけどさ……あんまり学校で二人きりでいると、変な目で見られて……あの……私も、一応芸能人で……」


「……なるほど……」


「えっと……腹黒い女だって思ってる?」


「……そうですね……思います……」


「そ、そうだよね……」


そうだ。

クラスで孤立している女の子を自分のために利用するなんて、腹黒いとしか言いようがない。


黒崎さんにも純くんにも嫌われて当然だ。


「……でも……女の子が、好きな人のために腹黒くなるのは普通ですから……」


黒崎さんは慰めるように言う。


「そんな──」


私がしゃべろうとするのを、黒崎さんは人差し指で止めた。


「……それに……これで私も一緒に過ごす友人ができて良かったな……って思ってますから……」


そして、黒崎さんは言葉を続ける。

その顔は優しく笑っていた。


「──だから私も──腹黒い女です」


私の人生で最初の親友は、陰気で腹黒くて……だけどとても強くて優しい女の子だった。


【あとがき】

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