第20話:妹いじり
◇ ◆ ◇
小春は飲み物とお菓子をテーブルに並べる。
「せっかくだし、なんかゲームでもやる?」
「あのね、お姉ちゃん、どれだけ休憩させるつもりなの?」
「え〜、だって〜! 暇だも〜ん!」
床の上に寝転がってバタバタと足を慣らしている。
「まったく……まぁちょっとなら別に良いけどさ……何やるのさ?」
「なんだろ……そうだ、麻雀とかどう?」
「おっさんなの!? 女の子がこんなにいるのに、麻雀なんてやるわけないし!」
「男ですけど、僕も麻雀は分からないですね」
純も首を横に振った。
「え〜……そうなの? じゃあ小町がなんか女の子らしいゲームを提案してよ?」
「え……? 突然言われても…………。……う〜ん……。女の子らしいゲーム……と言えば……」
少し考え込んだ後──
「あ、あやとり……とか!?」
「…………プっ! ギャハハ!! あ、あやとりって……小町ってば、おこちゃますぎ!!」
小春が腹をかかえて床を転がっている。
「う、うっさいなぁ!」
馬鹿にされて、小町を顔を赤くした。
そんな中、純が彼女をフォローするように会話に入った。
「あやとりですか〜、いいですね。僕、結構得意ですよ?」
「「「ええっ!?」」」
一斉に驚いたのは、小町、小春、巡の三人だ。
「やって見ましょうか?」
「う、うん……?」
小春がリビングの小物入れをガサゴソと探して、小さい頃に遊んだあやとりを純に渡すと──
「「「どひぇ〜〜」」」
見事な十段タワーが完成していた。
「いや〜、昔、芽衣とよくこれで遊んでたんですよ。ほら、うち親が留守にすることが多かったので……ほら、芽衣?」
「はいはい」
芽衣が純のあやとりをとって順々に変形させていく──
「……はい、流れ星──はしご──うさぎ──」
「「「おおー!!」」」
「──そして──これが! ──亀甲縛り!!」
「やめーい!」
小町があやとりをひったくって、芽衣の下ネタを止めた。
◇ ◆ ◇
純と芽衣のあやとりを一通り皆で鑑賞すると、小春がお菓子を手にして得意げに切り出す。
「じゃあ次こそ、女子らしいゲームってことでポッキーゲームしよう!」
「はぁ!? 何が女子らしいのよ!」
「え〜、女子らしくない? ねぇ、黒崎さん?」
「え? ……まぁ……そう……かも?」
巡はうつむきながら首をかしげた。
「も〜、強引に仲間を作ろうとしないでよ!」
「ところで、ポッキーゲームってなんですか?」
純は無邪気な顔で疑問を投げかけた。
そんな純をみて小春はにやりと笑う。
「ふふふ……純くん……私と黒崎さんを見ていなさい」
そう言って、菓子を口に挟むと、隣に座っている巡と両端をくわえる形にする。
「これでね──両方から食べていくんだよ」
そう言って二人が菓子をかじり始める。
──ポリポリポリ──ポリポリポリ──
「ん……ん……ん……んんっ」
小春がポキリと最後のかけらを食べながら目尻を下げる。
「んふっ……黒崎さんかわいいー」
「へー、よく分からないけど、面白そうですね?」
「ふふっ、純くんも意外とむっつりだね……!? さぁ、順番にやってって!」
席の並んでいる順番だと、まずは巡と小町だ。
「な、なんか、女の子同士なのに恥ずかしいね……」
「う……うん」
恥ずかしがりつつも二人が無事に食べ終わると、次に小町と純の番だ。
「小町さん……ファイト……です!」
「そこは妹の私が!! ……むぐ!」
小春が芽衣の口を抑えながら、調子に乗って小町と純にやるように促した。
「さぁ! どうぞ!」
(……えぇ〜〜〜! ど、どうしよ!? で、でも良いよね!? ゲームだもんね!?)
小町はドキドキとしながら、ポッキーをくわえる。
「じゅ、純くんも、そっちをくわえて……」
「はい」
「じゃ……いくよ……」
──ポリポリポリ──ポリポリポリ──
二人でゆっくりと食べ進んでいく。
それでもすぐに、吐息がかかりそうな距離まで唇と唇が近づいた。
(……こ、このままだと、キスしちゃうよぉぉぉ〜〜〜!? でも……ちょ……ちょっと……触れるぐらいなら……)
ドキドキと鼓動を打っている胸の中で思いながら、小町は目をつぶって口をすぼめる。
小町の視界が真っ暗になって、唇に純の唇の感触が──
「いただきぃ!」
──カシャ!!──
シャッター音が鳴った。
小町が目を開けると、純の口はもう離れていて、小春のスマホが向けられている。
ちなみに純は、芽衣に羽交い締めにされて引き剥がされていた。
「ふふっ! 小町ったら完全に準備万端の顔してるぅ〜」
「お、お姉ちゃん!?」
「うひひ〜……これ……ネットにアップしちゃおうかしら!? 小悪魔小町ちゃんのキス顔ですよ〜って!」
「妹を売るなぁっ〜〜〜!!!!」
小町は姉に飛びついてスマホを取り上げるとテキパキと操作して画像を消した。
「まったく……」
(……どうせなら、キスしたところを撮ってよね……って違う違う!……)
少し残念がる小町なのであった。
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