第23話:純くんの戦闘力は○○です

「「あぁん!?」」


不良達が純に睨みを効かせる。


木内達は、


(……誰か助けに来てくれたと思ったら如水じゃねーか……)


(……何しに出てきたんだよー。あんな陰キャじゃ、絶対ボコられるだけだって……)


(……まじで、草も生えねぇ……)


と、絶望に打ちひしがれていた。


そんな周囲の状況には全く動じず、純は言葉を繰り返す。


「こんなところで何をしてるんですか? と聞いたんです」


モデル男がやれやれといった表情をしながら返答する。


「……こいつらと遊んでるんだよ。お前も殴られなくなかったら帰んな!」


しっしっと手の甲を振って追い返す素振りをしている。



純は──


「そうですか……じゃあ、殴られたくないので帰ります!」


そう言って、シュタッと引き返そうとして──


「「「帰るな!!」」


木内達に止められた。


「やだなぁ、さすがに冗談ですよ」


(((お前の冗談、分かりにくいんだよ!!!!)))


木内たちは心の中で突っ込み、モデル男はイラついた様子で純を威圧する。


「……おいてめぇ……帰らないなら、てめぇも遊んでいくか?」


「う〜ん……僕、皆が楽しくない遊びは、遊びとは言えないと思うんですよね……。この人達、痛がってますし」


「ごちゃごちゃうっせえ! 俺たちが楽しければそれでいいんだよ!」


「う〜ん……それなら家に帰って皆でゲームでもしていればいいのでは? あ、アウトドア派ですか? でしたらスポーツでも良いですし……あっ、そうだ! 暑くなってきたからプールという手も」


「くっ……こいつ話が通じねえ……」


「もういい! めんどくせえから、やっちまおうぜ!」


──シュッ──


不良の一人がパンチを放つ。


(((ひぃっ!!))


木内達は純が殴られる瞬間を見ていられずに顔を背けた。


──ゴッ──


肉と肉がぶつかり合う音がした後に、一瞬静寂が訪れた。


(((……ええっ!!??))


男のパンチを純が、片手ガードの態勢で受け止めていた。


「な、なんだこいつ?」


男はパンチを受け止められたことに驚いて声をあげた。

木内達も同じである。


(……ええっ!?)


(……まさか如水って強いのか?)


(……ま、まじで!? ……い、いや……!?)


「て、てめぇ!」


他の取り巻きも仲間に加勢して、純にパンチや蹴りを入れる。


──ドゴッ──ボゴッ──ガッ──


(……だ、だめだ数が多すぎる……)


(……だけど……如水のヤツ倒れねえぞ……)


(……あいつ……なんだかんだで、ガードしたり急所を外してる!?……いや、急所ってどこか、俺よく分からないんだけどな!!)


「オラァ……どうしたぁ!! 反撃して来いよ!」


リーダーのモデル男も加勢して攻撃している。


「ぐっ……も、もう少しで来ますから……」


純は苦しげな表情で、つぶやいていた。


「ああっ……何が来るってんだぁ!?」


(……厨二病か!? 如水のヤツ厨二病なのか?……)


(……い、いや、冷静に考えて……警察じゃないか?……)


(……な、なるほど……警察に電話をしてくれてたのか!……)


──ドゴッ──ボゴッ──ガッ──


木内達が一抹の希望を持って時を待っていると……


「おーい、純、待たせたな……って何やってんだ、お前ら?」


現れたのはアロハシャツの中年男性だった。

手にはスーツケースを転がしていた。


「なんだぁ〜、おっさん?」


「ん……? ……そいつの父親だけど……」


「……はっはぁ〜、この雑魚、怖くなってパパを呼んだってわけか? こいつ情けねぇなぁ!!」


「う〜ん……久しぶりに帰ってきたから、たまたまここで待ち合わせしてただけなんだが……。

まぁどうでも良いけどさ、君たちは完全に暴行の現行犯……当然、誰でも逮捕権がある」


アロハシャツ男はポリポリと指で頬をかいていた。


「……何をごちゃごちゃ言ってるんだよ!」


不良の一人がいきり立って殴りかかる──


「──がはっ──」


が、一瞬で地面に押しつけられた。

アロハシャツ男が、体落としからそのまま不良の手を後ろ手に引き上げて動きを止める。


「な、なにしやがる!?」


他の不良が殴りかかるが──


「──ぐへっ──」


鳩おちに肘鉄をくらうとそのまま崩れ落ちた。


「はぁ……デスクワークばっかりでなまった体でこれは疲れる……純、お前も手伝ってくれよ」


「え? いいの? 父さん、いつも専守防衛だって言ってるのに」


「あのな……お前もそろそろ、臨機応変ってものを学べ」


二人の尋常ならざる雰囲気にモデル男が声をあげて、


「なんか、や、やべえぞ!! ズラかれ!」


慌てて走り出した。


その前に純が立ち塞がって──


「ええと……失礼します!」


一本背負いをぶちかました。


◇ ◆ ◇

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