第22話:この不良どもが!!
◇ ◆ ◇
期末試験が終わってすぐの休日──
純のクラスメイトである木内、山根、草野という生徒たちは、それほど人の往来のない場所にあるコンビニの前でたむろっていた。
彼らは一言で言うと──イキっていた。
純の学校はそれなりの進学校であるため、不良と言ってもたかが知れている。
せいぜい隠れて酒を飲んだりたばこを吸うぐらいが関の山であって、殴り合いのケンカなんて滅多にしたことがない。
そんな彼らなりに精一杯背伸びをして、コンビニに出入りする人間に──それも弱そうな子どもや女性を選んで──ガンを飛ばしながらだべっていた。
すると、ちょうど彼らの標的にちょうど良い感じの、いかにもひょろっとした中学生の男子がコンビニから袋をいくつも抱えて出てきた。
彼らはターゲットを見つけたとばかりに、ガンを飛ばしながら「あぁん?」と虚勢を張る。
中学生の男子は、ビクッと子犬のように体を震わせて、彼らの前を体を小さくして通り過ぎていった。
「おいおい、見たかよ〜?」
三人の中でリーダー格である木内が他の二人にそう問いかけると、
「ははっ! びびってやんの〜〜」
「ダサくて草だわ〜」
山根と草野がそれぞれ同調して笑い合った。
そうして気分が良くなった彼らは、コンビニでファミ○キを買い増しして
「「「うめえ! うめえ!」」」
と楽しくがっついていたのだが──
「おい、てめえら」
ホンモノがやってきた。
髪を金髪に染め上げて、耳と鼻に何本ものピアスをしている。
顔立ちは整っていて、身長も高く、不良をしていなかったらモデルのような男だが、睨みをきかせるとその眼力の強さで人を寄せ付けない雰囲気がある。
そんな男が自分から木内達の方に近づいてくる。
男は、同じようなタイプの不良を数人つれていた。
「俺のダチが世話になったらしいな……ちょっとこっちこい」
彼は「ダチ」と表現したが、実際のところ、木内達がガンをとばしたのは、彼らのパシリのようになっている中学生だった。
そして彼らには、そのパシリを大事に思う心などはなかった。
要するに、木内達が憂さ晴らしをするのにターゲットを探していたのと同じだ。
彼らもどこかで憂さ晴らしをしたい欲求をもっていて、そこに偶然パシリから木内達の話をきいたので、「ちょうど良い」と思ったに過ぎない。
「「「は……はい」」」
有無を言わせぬ男の雰囲気に、木内達は何も言えずついていくことしか出来なかった。
彼らが連れて行かれたのは先ほどのコンビニから、さらに五分ほど歩いたところにある無人の神社だった。
訪ねる人などほとんどおらず、周りを木々に覆われているために、リンチには適した場所だった。
「おい、土下座して謝れよ」
「で、でも俺たちなんもしてな──ぐはっ──」
木内の腹に、モデル男のボディブローが突き刺さり、強制的に体が二つ折りになって地面に手をつく。
「オメーらもだよ!」
「「うぐっ……」」
山根と草野も同じように男の仲間に殴られた。
地面に手をつきながら、苦しみもだえる。
「ううっ……」
そんな木内たちの頭の中にあったのは、なんとかしてこの場を納めたい、もう殴られたくないということだけであった。
──とにかく謝ってしまおう。それで彼らの気が済むならば。
「「「……す、すいませんでした」」」
言いながら、土下座の姿勢を作る。
同じ事を考えていた三人は、不思議とぴったり息があっていた。
そんな彼らに向かってモデル男は、さらに追い込みをかけていく。
「ふぅん……悪いと思ってるならさ……金だしなよ金」
「か、金ですか? え……と……どれぐらい……」
「あぁん? いくらなら出せるんだ?」
「えと……五千円ぐらいなら……」
「あん!?」
「い、一万円はありまぁす!」
木内が声を張り上げてアピールする。
とにかく必死だった。
「……全然、足りねぇだろうがよぉ! 俺のダチが傷ついたんだ。ヤツがPDCAだか、LGBTだかになったらどうすんだよ!?」
男の話を聞きながら、木内達三人は目配せをする。
(?? なぁ……PDCAってPlan ⇒ Do ⇒ Check ⇒ Actionだよな??)
(……LGBTは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーだぞ??)
(……ってPTSDって言いたいんじゃねえか!? 全然違くて草──)
男がバカだったことで、一瞬だけ心に余裕が生まれる、が──
「おまえら……何、ヒソヒソ話してるんだ?」
「「「な、なんでもありません!」」」
怒鳴られて、三人は再度土下座の姿勢を作った。
「……とにかくだ……一人十万用意しろ、いいな?」
「じゅっ、十万!? それは無理です!」
十万という金額は単に無理難題をふっかけただけだ。
モデル男たちとしては、なんでも文句を付けられれば良いだけであって──
「無理じゃねえだろ!!」
「ぐはあっ」
口答えをした木内達にサッカーボールのように蹴りを入れる。
「おらあっ!」
何度も蹴られることで、木内たちの顔から血が流れ出し、腫れ上がっていった。
そんなところに──
「あの〜、何してるんですか?」
純が現れた。
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