からかっていたはずの陰キャ男子にたじたじにされてしまう小悪魔美少女アイドルのラブコメ 〜なんで私がテレてんの!?〜

竹井アキ

第0話:少し先のラブコメ

ある高校の教室──中央で男子生徒と女子生徒がただならぬ雰囲気で言い合っている。

その様子をクラスメイトは、距離を置き、固唾を飲んで見守っていた。


「わたしがあなたのことを先に好きになったんだから!」


「違います。僕があなたのことを先に好きになったんです!」


男女はお互いを指さしている。


つまり……よくよく考えれば──お互いのことを好きだと言っている。


「わ、私は折れないんだから!」


「僕も折れません!」


「「あなたのことが……」」


「「好きです、付き合ってください!」」


同じセリフを同時に言って──やはり、お互いに告白しあっている。

しかし、なぜか納得していないようだ。


「そうじゃない、違うの〜!」


女子の方が不満の声をあらわにした。


「あ、あのさ……」


その様子を見かねて、クラスメイトたちが口を出す。


「ま、まぁさ、気持ちは分かったけど……お互い好き合ってるなら、とりあえず問題ないじゃん」

「そ、そうだよ、そんな事でケンカするなんてバカみたいだよ」

「ほら、二人とも仲直りしなよ」


周囲から促されて、男女は少し落ち着いた雰囲気をとり戻す。


「は、はい……」

「う……うん」


少しの間のあと、少年が口を開いた。


「小町さん、これからも一緒にいてください。それが僕の一番の望みです」


そう言いながら、相手の少女を見つめる。

彼女はゆっくりと彼に近づいて、その胸に顔をうずめた。


「う……うん。私も……一緒にいたい」


クラスメイト達も次々に口を開く。


「おめでとう」

「おめでとう」

「めでたいな」

「おめでとさん」


謎の感動が教室を包み、拍手で二人を祝福していた。

二人が幸せを噛みしめている中──クラスの誰かが調子に乗って叫ぶ。


「そうだ、キスしちゃえよ!」


それに呼応して他のクラスメイトが反応する。


「お、いいね!」

「せーのっ!」

「「「キース! キース! キース!」」」


大合唱のコールが始まってしまった。


「小町さん……」


「純くん……」


男子が彼女の顔を引き寄せる。

彼女も雰囲気に流されつつ顔を近づけ────ギリギリのところで抵抗して押し戻した。


「……だ、だめだよ……人前で……。恥ずかしい……」


「……いえ」


少年は少し考えて言う。


「好きな人とキスをする事は恥ずかしいことじゃありません!」


真顔で言い切る。


少女の顔が蒸気していく。


(……うん……そういうまっすぐなところが好き……だけど……だけど……)


教室から飛び出して廊下を駆けだした。


「めっっっっっっちゃ、恥ずかしいんだよぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」


──これは、不器用な少女と不器用な少年のラブ&コメディである──


【あとがき】

同時連載中の、


おっさん高校生、青春ラブコメをやり直す

〜 幼馴染が結婚の知らせを送ってきたので「あの頃に戻れたら、ぐいぐい行くのに」と叫んだ結果 ⇒ 戻ってきました平成に 〜

https://kakuyomu.jp/works/1177354054933918570


もお楽しみ頂けると幸いです。

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