第23話(ワンちゃん)

ーースカイは帰宅して、いつものシャワーを浴びる。両手が震えていた。GL依存症によるものだ。

(長生きは出来ないかな? そういや、犬はどうなったんだろう)


スカイは自室に行くと、ゆうこの様子がおかしい。頭部がいつもと違うというか。


「ゆうこ?」

「お帰りなさいませ、スカイ様」

「ちょっと待て! その頭……」


ゆうこの頭が男に換わっていた。サッカーボールをリフティングしながら、スカイに近付いてくる。


「どうでしょう。このデバイス」

「ワンちゃんって犬じゃなくて、新中国のサッカー選手、王青史(わんせいし)じゃないか!」

「お気に召しましたか。ありがとうございます」

「王選手のファンだけどさ。ゆうこは女でしょ。シンギュラリティだ。ロボットのトランスジェンダーだ」

「スカイ様、テレビを点けます」

「何でこのタイミングで?」

「飯田ヤキニークと香川高松FCのJ1第12節です。王選手の12試合連続ゴールが懸かる大事な一戦です。観ましょう」

「お、おう」


王選手は飯田ヤキニークのセンターフォワードだ。飯田ヤキニークは、松本、長野のクラブチームに並んで、今シーズンは調子が良い。それも、王選手が加入してくれたからだ。


スカイは丸められた有機ELテレビを引っ張り出し、壁に掛ける。


ーー飯田ヤキニークと香川高松FCの試合は拮抗していた。0ー0で前半を折り返す。


「ダメだ……。王選手はベンチ外だ。怪我かな」

「今調べたところ、コンディション不良だそうです」

「ゆうこ? いつまで、その頭でいるつもりだ」

「ダメですか?」

「ダメ。ドックへ行って直してこい」

「分かりました。今日はもうGLに繋いではいけませんよ」


スカイはドキッとした。自主トレする気満々だった。


「GLには繋がない。さっさとドックへ行け」

「かしこまりました。お母様はもうすぐご帰宅されます。それではまた明日」


スカイは早速、GLにログインする。そして、ウォーパークへ。


「さて。できるだけレベルの高いテーブルに……」

「スカイ! 何やってるの! あれほどログインしちゃダメだって言ったのに!」


オズが一試合終えて、休憩するところだった。


「ヤベッ、見つかった。オズ部長、これは違うんだ。今、ログアウトするところだよ」

(どう誤魔化そう……)


「やっぱりベンチに下がってもらおうかしら」

「だから、今帰るところだって」

「ログインしたばかりじゃないの! あなたのためを思って言ってるのよ?」

「ワンワン王青史。了解です、オズ部長」


スカイはマジでプレーを諦めた。


スカイはログアウトした。

(3日間もウォーパークが出来ないなんて! 早くジュニアオリンピックに出たい!)


ーー世間は明日からゴールデンウィークだ。

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